同じじゃろ
「事業を横取りしたことの意趣返しかしら……ふふふ、面白いことをしてくれるわね」
面白いと笑っているものの目が怖いコヒィーリア。
「え~と、あ!、初めは小さい祝いの予定だったべが、予想以上に人が集まったからパーティーになったと聞いただよ」
ヨコヅナが言っているのはパーティー後に爺やから聞いた、用意されていた言い訳だ。
「姫さんは忙しいから、小さい祝いに招待するのを遠慮したんじゃないだか」
ヨコヅナは信じたが、そんな言い訳が通じるコヒィーリアではない。
「言い訳も用意しているということね。私のところに話すら来ていないのは不自然よ。…何かしら隠匿の意図がありそうね」
ちゃんこ鍋屋の所有者であるコヒィーリアを招待していないだけでなく、情報を隠匿していたことまで感づく。
「あのパーティーはパートナー探しの意図が強かったようなので、コヒィーリア王女を招くのは逆に失礼と考えたのでは」
「パートナー探し……というかメガロも参加していたの?」
「ええ、私はヨコヅナからの招待で。そういう意図があると聞いたのは、パーティーに参加していた知り合いからですが……そういえばレブロットの奴はどこ行った」
実は今日のスモウの鍛錬には、パーティーでヨコヅナと掴み合いになったレブロットも参加していた。
パーティーの時にメガロにレブロットもスモウの鍛錬に参加させていいかと提案されたヨコヅナはそれを快く承諾し、ラビスに言われていたため、レブロットにモメた時のことを謝罪して仲良くなったのだ。
「あそこで死んでますが」
ラビスが横たわるレブロットを指差す。
「ぶひぃ~っはぁ~、ぶひぃ~っはぁ~」
「いや、ちゃんと生きてるだよ」
豚のような荒い呼吸は聞こえているので、死んではいない。
レブロットはスモウの基礎鍛錬の大分早い段階で動けなくなっていた。
「全く情けない奴だ」
「おや、初日は同じだったと思いますが」
「私はあそこまでではない!」
他の者達の話がズレたことをよそに、コヒィーリアは一人推測を進める。
(パートナー探し……つまりヨコに女性を紹介する事が目的…。その理由は……恋人が出来ればハイネの屋敷に住み続けることは出来ない。なるほど、そういうことね)
ヘルシング家がハイネの屋敷からヨコヅナに出ていってほしいと思っていることは、王女の紹介だと情報操作したり、ちゃんこ鍋屋に住み込ませようとしていたことから、コヒィーリアも分かっている。
「ヨコ、ちょっと聞きたいのだけど」
「なんですだ?」
「パーティーでヒョードルに女性を紹介されたりしたかしら?」
「……紹介されたのは飲食関係の仕事をしている人達だべ。…その娘さんを紹介されたのは確かだべが」
ヨコヅナは「ちゃんこ鍋屋に関係がある職種の人達だから、今後のことを考えて仲良くしておくと良いだろう」とヒョードルから紹介されたのを面目どおり受け取っており、本当に仲良くなって欲しいのは娘の方だとは思っていない。
「そう……名前は覚えてるかしら?」
「あ~…、全部は覚えてないですだ」
「私が分かりますよ。紹介された相手だけでなく、参加者全員の名前を」
コヒィーリアとヨコヅナの会話に割って入ったラビス。
ラビスは参加者名簿を見せてもらた際、全て暗記していた。
「ラビス……あなたは全て理解していたのでしょ」
「私もてっきりコヒィーリア王女は忙しくて来れないのかと」
「…で、本音は?」
「ヘルシング家の思惑を、自分の手で潰すのも面白いかと思いまして」
もしラビスがヘルシング家の思惑を含めて、パーティーの事をコヒィーリアに報告していれば、ヒョードル達が考える計画は潰れていただろう。
「あなたの楽しみを奪うようで悪いけど、少しムカついたから私の手で潰すことにするわ」
「どうぞ、王女様譲りますよ。私はパーティーに参加して、それなりに楽しめましたので」
「……それなら、できる限り詳細な情報を報告書として提出してもらえるかしら」
「詳細な情報ですか……」
「……心配しなくても、ラビスが咎められる状況にはしないわ」
情報を流すことで、ラビスがヘルシング家に恨まれることを恐れているのかと思ったコヒィーリアだが、
「いえ、ヘルシング家にどう思われようが構わないのですが。ハイネ様から聞いた情報もありますので……まぁ、目的は同じですから、ヨコヅナ様が良いのであれば、話しても問題ありませんかね」
「ん?オラだべか……オラ何かしただか?」
自分が怒られるようなことしたのだろうかと、一瞬身構えてしまうヨコヅナ。
「ヨコヅナ様は建国祭以前にも、女性を紹介されたことがあったとお聞きしましたが」
ヨコヅナは「建国祭以前?……」と呟きながら首を傾げ、
「ああ~、お見合いの話だべか」
「お見合いまでさせられてたの!?」
「いや、してないだよ。会わずに全部断っただ」
「あら、そうなの……でもどうして?好みの相手がいなかったのかしら」
「写真見てないから、どんな人がいたのか知らないですだ」
「……どういうこと?」
ヨコヅナはお見合いを断ったときのことを簡単に説明する。
「政略結婚が嫌、ね……ふふ、あははは!面白いわね、田舎の純朴な少年みたい」
「その表現で正しいですよコヒィーリア王女」
ヨコヅナ様は体こそ大きいがまだ未成年、田舎から出てきたばかりの純朴な少年なのだ。
「ふふふ、そうだったわね……でもパーティでは顔合わせしたのでしょ、もう一度会いたいと思える相手はいたかしら?」
「んん~……。正直緊張してて、紹介された女性の顔もよく覚えてないですだ」
出来るだけ平静を装ってはいたが、豪勢な貴族のパーティーへ初めての参加だったため、ヨコヅナは緊張しており、会った女性の顔も殆ど覚えていなかった。
「なら、なにも問題ないわね」
「そうだべか。……そろそろ鍛錬を再会して良いだべかな」
何が問題無いのか分からないが、コヒィーリアがそう言うのであれば、この話は終わりにして鍛錬の続きをしたいヨコヅナ。
「ええ、邪魔をして悪かったわね」
スモウの鍛錬を見に来たのに、余計な長話になってしまったことを謝るコヒィーリア。
「構いませんですだ。後は任せるだよラビス」
「畏まりました」
ヨコヅナは休憩していた者達に次の鍛錬、手合わせを行うことを伝えていく。




