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第一章 07-06
父との交信が終わると、小さなヤモリが彼の足元をささーっと通り過ぎていった。
確かに定期的に銀貨の入った小さな皮袋が、玄関のドアの隙間から何度か投げ入れられていたが、村人との交流は避けて街にも出かけないため、ほとんど使っていない。森の中は高望みさえしなければ食料も水も豊富だ。
この戦いが終わるまで、彼女たちにはこの小屋で生活してもらうのがいい。とりあえず生活費は支給されるはずなのでなんなく暮らしていれるだろう。
魔物との戦いさえなければ、この国は気候もよく食べ物には苦労しない。それになんといっても人々がみんな心やさしく穏やかで親切だ。
銀貨の皮袋を集めると6つあった。1袋だけ上着のポケットに入れ、残りはテーブルの上に並べた。
ユウは残りのりんごを食べきり、旅の準備をはじめた。できるだけ身軽な方がいい。
「手紙は...いらないな。」
あいつらのことだ、下手にメッセージを残すと追いかけてくるに違いない。少し心が痛んだが、何も残さず行こう。
彼は迷彩色のマントを羽織って外に出た。小屋の横の木の枝を掴むと、しなやかな動きで枝の上に乗り、そして小屋の屋根に飛び乗った。西の空がオレンジに染まっている。
「さあ、はじまりだ。」
彼はつぶやくと小屋の屋根から飛び降りて東へ向かった。




