第一章 07-02
現実世界にいたときの戦いは全て「試合」という形だった。剣道や空手など武術としての技術は深めたが、「喧嘩」ではなくある意味真面目な生活を送ってきた。武術は神聖なものであり、一般人に対しての喧嘩に使うものではないという心意気があったからだ。
それが全て裏目に出ている。魔物との戦いはもちろんルールや制限時間もなく、フィールドも定まらず、ましてや1対多での戦いだ。こちらへ来る前に理解はしていたつもりだったが、まだまだ身体的に慣れない。真面目一辺倒ではなく、もっと砕けた学生生活を送っていたほうがよかったのかなとさえ思う。まぁ相手が異形な魔物なので情けをかける必要がないことが幸いしているのだが。
腰のベルトに手を伸ばして小さな懐中時計を手にとり蓋を開けた。伸縮性の鎖がついており転送されたとき唯一一緒に転送されたものだ。こちらの世界にも時計はあるが、このように持ち運びできて精巧なものはなさそうである。
妹たちは着いただろうか。父が同行しているから迷うことはないだろう。それにしても、まさか3人でこちらの世界に来てしまうとは...
「一番避けたかったのにな。」
食べたくないが何か食べておいた方がいいのだろうな、身体の傷ももう少し治しておいた方がいいかもなと思いながら目を閉じると、彼はそのまま眠りに落ちてしまった。




