第一章 05-10
そんな調子で練習を続けて夜明け寸前に寝たので、ウズメは足だけでなく身体中が悲鳴を上げていたようで、やがて薬草の袋を枕に眠り込んでしまった。
コヤネとマヤが食料などを抱えて戻ってくると、木陰ではウズメが大きな袋を抱きかかえたまま熟睡していた。
「ウズメ疲れたのかなぁ?」
起こそうかなと思って、ふとコヤネは気づいた。こちらの世界に来てからのバタバタで見落としていたのだが、そういえば山小屋からここまで、ウズメは自力で歩いていた。
「ねぇマヤ、ウズメちゃん歩いてたよね。」
「え?あれれ、夜はユウ兄におんぶされてたよね。車椅子ないよね。あれ?」
ウズメを起こすのをやめて、2人は屋台の様子を眺めた。こちらの世界も自分たちの世界と大差ないように思える。人々は陽気でやさしく、食べ物は豊富でとてもおいしい。自然もいっぱいだし気候もよい。
「でも、魔物がいるんだよなぁ。」
それさえなければ、ここに住んだら楽しいだろうななどとコヤネは思った。
その横でパンをかじりながらマヤが
「あ、パン食べる?おいしいよ。飲み物もあったよ。ビン入りでちょっと重いけど。」
ブドウ色のジュースの入ったビンのコルクを開けて飲もうとするマヤに、
「ちょっと待って、これワインでしょ。」
「え?でものど渇いちゃったよ。」
「あーちょっとにしなさいよね。」
「ん?なんともないよ。ジュースだよ。」
顔色ひとつ変えずに、ジュースのように飲むマヤを見て、「私も一口」とコヤネが口にすると、まぎれもなくワインだった。急に心臓がドキドキして顔が赤くなるのがわかる。
「うぁ、キツイ!」
「そっかなぁ。」
普通にごくごく飲むマヤを見て、姉妹でも体質違うのねとコヤネはつぶやいた。
「ねぇ、ウズメちゃん起こしてパレード行こうよ。お父さん、パレードどこ?」
気づくと先ほどまでいっぱいいた人々や屋台の売り子さえもいない。
ウズメを起こして荷物を分け、上着を羽織り、パレードが行われる城前のピロティーへ3人は向かった。




