第一章 04-07
二人から少し離れた大きな木の根元がちょうど洞穴のようになっていたので、ウズメはそこへ身を隠している。手近にあった枝をそろそろと寄せてきたので、うまく隠れることができた。
このまま終わればと思っていたのだが、いつの間にか戦っている二人は多くの魔物に取り囲まれているようだ。全部は見渡せないが、10匹以上はいるだろう。
剣で戦うコヤネと肉弾戦のマヤ、どちらもせいぜい1,2体ずつしか相手ができない。ふと見上げると木のかなり上から飛び降りようとしている魔物がいたが、もちろん二人は全く気づかない。よく見ると森の木々にはところどころ蔦がからまっている。あの蔦を伸ばして魔物に巻きつけることができたら...。
「二人を助けて!」
両手を組んで目をつぶったウズメは祈った。念じたといった方が近いかもしれない。瞬時に手から一筋の光が放たれて蔦に伝わり、木をとりまく蔦が青白く光り出して木から離れ、まるで蛇のようにするすると魔物の手足に絡みついた。飛び掛ろうとした体制で蔦にからまった魔物は宙に浮いてジタバタしている。
「え?ほんと?すごい!」
こうすれば私だって力になれる!ウズメは嬉しくなった。あの蔦を操った感覚は確かに手に残っている。周囲をもう少しみようと身を隠していた枝を少しずらしたところで、最悪なことに離れた正面の木の上の魔物と目が合った。見つかってしまったのだ。
ウズメは姉に助けを求めようとしたが、その姉も四面楚歌でとうていこちらまで対応できる状態ではない。ふと上を見上げると、この木にも蔦が絡まっていた。まずはここからの脱出だ。木から降りじりじりとウズメに向かって近づいてくる魔物と目を合わせたまま、ウズメは左手に蔦をつかみ手首に2周ほど巻きつけ右手で足元の手ごろな大きさの石をつかんだ。魔物が大きな口を開け、両足で立ち上がった。
「今だ。」
ウズメは手にした石を思いっきり魔物に投げつけると同時に左手の蔦をひっぱると、蔦はウズメを木の根元から上へ引っ張り上げて、蔦の先端をつかんだウズメの身体をふわりと蔦にぶら下げた。石は驚くほど速く的確に魔物の左目にヒットし、蔦はまるで意思が疎通しているかのようにウズメの身体を振り子のように宙に浮かせてコヤネとマヤの近くの場所にストンと降ろした。
「私ってこんなに投げるの上手かったっけ?コヤネちゃーん来たよ。」
ウズメの声にコヤネはがっかりした。自分のことで精一杯なのに、何で出てきちゃうのよ。




