第一章 04-06
コヤネは肩の高さに構えた剣を目の前の1体の腹部に突き刺すと、べっとりとした魔物の血が飛び散った。即抜いた剣を構え、次の魔物に対峙する。姉の背中に隠れたマヤだが、背後から迫るもう1体と目が合ってしまい、逃げるに逃げられない。いつも勝気なのだがこういう切羽詰ったときはからっきしダメで、臆病になってしまう。
「落ち着け、落ち着け。」
震えながら自分に言い聞かせ、どうやって戦おうかなどと思考していたとき、
「ギェー」
という鳴き声とともに、その魔物がマヤに向かってきた。
「あーもう、なるようになれー!」
マヤは開き直ったのか顔をキッとあげ、魔物に向かって走りだし、少し手前で大きく跳躍した。一瞬マヤを見失ったのかその場に立ち止まった魔物の頭上に、全体重をかけてかかと落としを見舞う。地上に降り立った後、また地面を蹴って飛び上がり、ふらふらしている魔物の頭を水平に蹴り飛ばすと、魔物はそのまま横に吹っ飛び木の幹にぶつかって動かなくなった。
「(あれ?なんか私ってすごい。)」
単に地面を軽く踏み切っただけなのに、自分の身体のゆうに5倍の高さまで飛び上がれたのだ。
「ありがとう、マヤ。」
2体目を倒したコヤネが肩で息をしている。気のせいかマヤ自身も脚力や腕力が強くなったような気がする。もしかしたら二人で戦えば魔物を倒せるのかもしれない。安心したのもつかの間、木々の陰から何対もの黄緑の光が輝きこちらへゆるゆると近づいてくる。
「マヤ、大丈夫?」
「うん、だいぶんコツがわかってきたよ。」
背中を合わせて周囲の魔物と対峙しながら2人は肩で息をしている。お互いの動悸が伝わってくるようだ。どうやら何匹もの魔物に完全に囲まれてしまったようだ。
「(そういえばお父さん10匹って言ってたっけ、あれ?30匹だっけ?そんなの無理。)」




