第一章 03-01
部活でくたくたになったマヤが遅い時間に帰宅すると、食卓には既に夕飯の準備が整っていた。しかし誰の姿も見えない。
「あれ?コヤネちゃん、ウーちゃん帰ってるの?どこどこ?」
かばんを放り出して制服のジャケットを脱ぎ捨てて2階への階段を上がろとすると、階段の上からコヤネがそっと顔を出して人差し指を口にあてている。その横からウズメも顔を出し、声を出さずに
「し・ず・か・に」
と言う。
マヤは足音を殺してゆっくりと階段を上がり、二人の姉と合流した。
2階の一番奥には父の書斎がある。
自宅で翻訳の仕事をしている父は、なにかと書斎にこもることが多い。
締め切り前で煮詰まってくると、何時間も出てこなかったり、急にぶつぶつ独り言を言ったり、歌いだしたり、そういうことは日常茶飯事ではある。
今も書斎の中で何かぶつぶつ独り言を言う父の声が聞こえてくる。
「どうしたの?」
マヤは小さい声で二人に聞くと、
「聞いて」
と、コヤネがささやいてドアのほうを指差した。
「・・よく頑張った、傷は大丈夫か。」
「ちょうどよい数を残してくれたから、今夜の後処理は上手くいきそうだ。」
「・・そうか。ゆっくり休んでくれと言いたいのだが、まだ40体以上残っている。
今夜はもう動かないと思うが。」
「そうだ、明日朝までには処理して欲しい。
ただ、どうやら群れが二手に分かれているようなので上手く立ち回らないといけないな。」
電話をしているようだ。
くだけた話し方から、仕事関係者ではないようだ。兄と話しているのかもしれない。
「それにしても、ユウも強くなったな。なかなか剣さばきに慣れてきたようだ。」
「(ユウ兄だ!)」
3人は同時に気づいた。




