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第一章 02-06
足の悪い次女がいるので、送迎は父が行っており、ついでに朝は二人も一緒に乗っていくのが日常だ。車の中では誰も一言も話さなかったが降り際に三女が振り返り、キッとした目でにらんで大きな声で言った。
「帰ってきたら、ぜーったいお兄ちゃんと電話させてよね。約束だよ。」
「う...うん。」
「うんじゃないでしょ、はいっ」
「はいっ」
中高一貫校なので、3人は同じ場所に通っている。
高一の「コヤネ」、中三の「ウズメ」、中一の「マヤ」。
いまどき超珍しいほどの古風な名前は、彼女たちの母が好みでつけた。なんでも日本古来の神さまにあやかったとかで、日本大好きの父親にとっては満足このうえない。
目に入れても痛くない我が娘たちだが、最近は完全に押されてしまっており、年頃の女性陣が一丸となると、もう全く太刀打ちできない。
帰路をのろのろと運転しながら、まいったなーと父親はつぶやいた。
どうごまかそうか。




