第一章 03-02
コヤネが小さく「行くよ」と二人に言う。
マヤは大きくうなずいて、力いっぱいに書斎のドアを蹴り開けた。
ドアの金具部分がはじけとび、ドアが大きな音をたてて全開した。
「お父さん!ユウ兄どこ? いるんでしょ、電話変わって。」
「なにこそこそやってんのよ。」
机ではなく、部屋の片隅に座り込んでいる父はぎょっとして振り返った。
フローリングの床の上には正方形の白い布が敷かれ、その中央には人の頭くらいの大きな水晶玉が銀の台座に置かれている。よく見ると白い布には細かい魔方陣のような模様がびっしりと描かれており、父の羽織ったグレーのマントのようなものにも同じような模様がところ狭しと描かれている。
ジャコウの香りの香が焚かれた薄暗い部屋の四隅には大きめのキャンドルが灯り、その光がゆらゆらと水晶玉に映っている。
「ちょっと、お父さん、何してるの?」
ドタバタと3人が部屋の中になだれ込む。
マヤがじっと水晶玉を見つめ、急に指を指して大声を出した。
「あああああ、あーこの中、この中。」
「ユウ兄ちゃんだー!」
父は水晶玉を凝視しながら立ち上がった。
「あ、いやぁ、
あぁ...見つかってしまったな。ユウ、すまん。」
唖然とする娘たちに面と向き合った父親は、姿勢を正して静かな声で話した。
「詳しくは後で話す。今は兄に伝えなければいけないことがある。3分でいい、少し静かにしてお前たちはその場で座っていて欲しい。
悪いがそのドアも閉めてくれないか。」
3人はやむなくその場に座り込み、部屋のドアを閉めた。ろうそくの灯がふわっと揺れた。
父は3人に背を向け、また水晶玉に向かって座り込んだ。




