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いずれは最強コンビ  作者: HAL
第五章 新たな武器を手に入れた
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第九話

 しばらく猿人たちと鬼ごっこを続けた。

 やめられるものならソッコーでやめたいけど、本能のままに猿人どもが襲いかかってくるのでどうにもならない。

 半獣化しているから【サンクチュアリ】がある。猿人たちの攻撃もある程度防げるはずだ。

 けど、もし――途中で半獣化が解除された場合……考えたくもない。

 オーラ残量に余裕があるわけでもない。下手すりゃジリ貧になる。さすがにフェリシアだってそうなってしまったら手助けしてくれるだろうが、試してみる気はない。

 俺は育ての親と二人きりで過ごしてたから、鬼ごっこをした経験がない。

 たまに近隣の街へ行った時にそこの子どもたちがやってるのを遠目に見てただけだ。正直羨ましかったけど、輪に入る勇気はなかった。

 これが俺の鬼ごっこ初体験だ。こんな形で経験することになるなんて、夢にも思わなかったよ。

 普通の鬼ごっことの違いは、命がけであること。鬼が複数――百以上――いること。鬼を倒せることくらいか?

 初めてなのに難易度が高すぎる気がするけど、そんなことを考える余裕がなくなってきた。

「はぁはぁはぁ……」

 さすがに息が荒くなってくる。かなり疲れてきた。

 フェリシアと言えば、優雅に空でお散歩中だ。紅焔を四発撃ち、最後の一発をとっていやがる。

「クソ……あの、女……めんどくさいからって、全部、俺に、やらせる、つもりか……」

 ちょっと泣きが入ってきた。

 先回りしてきた一体の猿人の横を駆け抜ける際、胴を薙いで絶命させる。

「あのバカ女……暴力女……年増女……」

「言っとくけど、全部聞こえてるわよ」

 大した声量でもないのに、なぜか上空からフェリシアの声が届く。わりといっぱいいっぱいだから気にしてられない。

 猿人どもは己の身体のみ武器としているので、遠距離攻撃の方法がない。なので、天のフェリシアは安全なわけだ。

 今ほど鳥人族が羨ましいと思ったことはなかった。

 それから数十分が経過した。そう思う。時間の感覚なんてとうになくなっていたので、多分それくらいの時間だと思う。

 大地に立っているのは俺だけだ。猿人はすべて物言わぬ屍と化している。

「お、終わった……」

 最後の一体を斬り伏せて肩で息をしている俺。半獣化は切れている。念入りに生きてる猿人がいないか気配を探り、問題ないだろうと結論付けると仰向けに倒れた。

 オーラ残量は「120/590」。予断を許さない状況だった。何とか半獣化はあと一回できるけど、それやったらもう何もできないも同然だからかなり神経を使った。

 フェリシアは相変わらず宙に浮いている。結局のところ五回紅焔を使ったために一度半獣化が切れたけど、即座に半獣化したので結局は少し高度がさがっただけだった。

 そこからさらに四回紅焔を使ってくれたおかげでかなりの数を減らせた。減らせたけど、追っかけられてる事実は変わらない。

 基本的に走りっぱなしだったので、もう限界だ。マジ疲れた。しばらくは指一本動かせない。

 そこにフェリシアが優雅に降りてきた。

 もう文句どころか非難の眼差しを送る気力さえもない。

 フェリシアが前かがみになって俺を覗き込んでくる。豊かな胸が強調される眼福ポーズだったけど、反応するのも億劫だ。

「レヴィ、オーラがなくなってきたでしょう」

「それはもう」

 当たり前のことを聞かれて不満げな口調になってしまう。

 しかし、フェリシアは気にする様子もない。

「じゃ、快復してあげましょうか?」

 フェリシアが言わんとしていることに気づくと、目を見開いて彼女の顔を凝視してしまった。疲れも忘れて。

 キスしてオーラを快復させようと言っているのだ。レベル3の【リバイバル】だったっけ?

 フェリシアはあさっての方を向いている。こっちと目を合わそうとしない。

 不覚にも、ちょっとドキドキしてきた。単純な自分が恨めしい……

 イエスとは即答せずに、頭の中の冷静な部分から聞くべきことを尋ねる。

「あー、もう帰るよな?一旦は」

「ええ。そのつもりよ」

 フェリシアもダメージこそ受けてないものの、オーラは消耗している。さすがに連戦は考えてないようだ。

「なら、いいや。もし奇襲とか受けたら、フェリに掃討してもらいたいから。余力は残しといてほしい」

 もったいないとは思うものの、命には代えられない。

 最悪、俺が囮役となって、フェリシアには攻撃に専念してほしいし。

「……分かったわ」

 フェリシアの顔が残念そうに見えるのは、俺の気のせいかね?

 それから五分ほど休憩してようやく上半身を起こした。疲れは残ってるけど、もう動けないほどではないな。

「どうしたのさ?さっきはいきなり」

 フェリシアが気まずげに、

「あんたは星覇者の中で徐々に人気が出てきたのよ。ヒュドラを一撃で仕留めたことが広まってるらしくてね」

 なんか嬉しいな。そんなことを言われると、誇らしい気分になってくる。

 しかし、だからってなんでサービスすることにつながってくるんだ?

 まさか――

「俺が奪われるって危惧した?」

「ええ、そうよ」

 素直に答えられてビックリした。地獄の追いかけっこやらせといて泣き落としとか反則じゃねーっすか?

「だから、今回はさすがにやらせ過ぎたかなって。嫌気が差したかなって……」

 鬼ごっこには嫌気が差したのは事実だけど――

「あー、大丈夫。経験のために他の星覇者と組んでみたいってのはあるけど、フェリとはずっと組みたいと思ってる」

 フェリシアが安堵のため息を漏らす。

「そう。それはよかっ――」

『失礼する』

 突如、ブレスレットから管理者の声が響く。

 悪い知らせかと緊迫感が増す。

 フェリシアがさりげなく剣の柄を握る。俺も跳ね起きた。周囲に素早く視線を走らせるが、異変は感じられない。

 何だ?

 再度、管理者の声が響く。

『戦況を報告しよう。フェリシア隊の撃破数が466体だ。なお、他の隊は戦闘に至っていない』

 それきり、管理者は沈黙する。どうやら、ただの戦況報告だったようだ。しかし、撃破数を地道に数えたとは、管理者には恐れ入るな。

『以上だ。各位には一層の戦果を期待する』

 二人して緊張感を解放しながら顔を見合わせる。

「俺らが最初ってわけ?」

「そうみたいね!この調子でいくわよ!」

 フェリシアの表情は一転して誇らしそうだ。

 俺も嬉しさが込み上げてくる。やっぱ最初が肝心ってやつ?

 まぁ、よくよく考えれば、フェリシアが空から偵察して、さっさと索敵を終えたからな。これで出遅れることはそうそうないか。

 そもそも俺らは話を切り上げて先に出たんだし。

 今頃、他の遊撃部隊は感心してるか、悔しげに歯噛みしているのかもしれない。

 せっかくだから一番にはなりたいと思う。でも、ほかの連中にもそこそこ倒してほしい。全部相手にするのは骨が折れるしな。

「はいはい。とりあえず帰りますか」

「ええ」

 そんなわけで俺たちは一度帰還することにした。

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