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夜会でのロマンス

 混んでいる馬車を追い抜いて、ローゼンブルク家の馬車が城の前に到着する。アマーリエは、エルヴィスのエスコートを受けて馬車を降りた。

「特権……」

「そうかもしれないね」

 エルヴィスが微笑む。まだ王宮内にはずらりと馬車が並んで待っている。地位ごとに入る順番が決まっているからだ。ローゼンブルク公爵家はその筆頭になる。

 今日は夜会なのでクラウスは屋敷に置いてきた。アマーリエは夜会などがあまり好きではないので、早く帰りたいと思う。

 ベルラインのドレスを着たアマーリエは、エルヴィスにエスコートされて城内へと入った。

「エルヴィス・フォン・ローゼンブルク公爵閣下、並びにアマーリエ・フォン・ローゼンブルク夫人ご入場です」

 きらびやかなホールに入ると、そこは別世界だった。立食パーティーは充実していて、シャンデリアもきらびやかだ。無数の蜜蝋燭が照らす壁面の金細工や、すれ違う貴婦人たちが纏う香水の強い匂いにアマーリエは目眩がしてきた。

「エルヴィスさま……陛下にご挨拶して早く帰りたいです」

「そうか。はい、シャンパンをどうぞ」

 シャンパンを受け取ったエルヴィスがアマーリエに渡してくれる。アマーリエは礼を言う。

しばらくして、国王陛下並びに王妃陛下ご入場ですとの声が響いた。壇上にエリオット陛下とマルグリット王妃が立ち、挨拶をする。乾杯の合図に合わせて、シャンパンを飲む。すっきりとした甘さと弾ける泡が喉に心地良い。

「あら。これ美味しいです」

「アマーリエはお酒に強くないからほどほどにしておくれよ」

「わかっています」

 そんな話をしていると、エリオットとマルグリットが壇上から下りてこちらに歩いてくる。エルヴィスとアマーリエは礼をとった。

「堅苦しくしなくても良い」

「今日は来てくれてありがとう、アマーリエ夫人」

 エリオットとマルグリットは親しく話しかけてくる。マルグリットはアマーリエの手を取った。

「アマーリエ夫人には本当に感謝しているのよ」

「そんな、マルグリットさま……恐れ多いです」

「例の……フィリップのこと、感謝している」

 エリオットもそう口にする。マルグリットの手紙とエルヴィスからは、フィリップに教育を受けさせていること、穏やかな乳母をつけたことは知らされていた。それならば、少しは良い効果があったのだろうかと思う。

「とんでもありません。お役に立てればなによりです」

 ひとしきり歓談して、またお茶会をしましょう、とマルグリットは言って側を離れた。

 アマーリエはふう、とため息をつく。そんなアマーリエを見てエルヴィスは笑う。疲れているのは察していると思う。

「テラスに出ようか?」

「はい」

 エルヴィスの提案に喜んで後をついて行く。テラスに出ると、爽やかな風が気持ちよかった。

「夢みたいですね。こんな場所でこうしているのが」

「夢であっては困るんだけどね」

 エルヴィスが苦笑しながら言う。アマーリエは隣のエルヴィスを見上げる。月光に金の髪が淡くやわらかに光っている。見上げるエルヴィスの横顔は、甘く端正でまるで彫刻のように美しい。

 アマーリエは亜麻色の髪を靡かせて、前を見る。あの日から自分の運命は劇的に変わってしまったと思うが、後悔はない。むしろエルヴィスやクラウスに会えて良かったと思っている。

エルヴィスがそっと近づいて、アマーリエに口づけをした。アマーリエも目を閉じてその口づけを受ける。

「さて、そろそろ戻ろうか。君も私も、挨拶をしに行かないとね」

「はい」

 アマーリエは素直に頷く。エルヴィスの腕を取ると賑やかな喧騒の中へと戻っていった。

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