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縋り付く指先

「……アマーリエ、アマーリエ」

 誰かが呼ぶ声がする。父さま? フェリクス? そんなに取り乱さないで。私は大丈夫だから。

「アマーリエ……すまない」

 目を開けると、視界いっぱいにエルヴィスの顔があった。意識を失ったのは一瞬らしかった。アマーリエは起き上がろうとするが、エルヴィスに阻まれる。そのまま抱き上げられて自室の寝台へと下ろされた。

「アマーリエ……熱がある」

 エルヴィスの振り絞るような声がする。アマーリエはこくりと頷いた。少し寒気がする。

「姉さま……! 後のことは気にせず眠ってください。僕に任せてください。クラウスさまは熱も下がってきたので大丈夫ですから」

「うん……ありがとう。少し、休ませて」

「アンネを呼ぼう。君も着替えないと……」

「お願いするわ」

 エルヴィスがアンネを呼んでくる間に、アマーリエはまた意識を手放した。


 体が熱い。喉が焼ける。息が苦しい。誰かが手を握ってくれていて、アマーリエはその手に縋った。誰? ううん、誰でもいいわ。離さないで、なんだかとても悲しいの。その気持ちに応えるかのように、強く手が握られる。ほっと安心して、アマーリエは深い眠りに落ちていった。


「姉は」

「眠ったよ」

「エルヴィスさま、姉は、乳母でも前の奥さまの代わりでもありません」

 フェリクスは硬い声で言う。エルヴィスは、ああ、と頷く。

「姉は公爵家で役に立ちませんでしたか?」

「そんなことはない」

「エルヴィスさまが、姉を大切にしてくれないのなら、僕は姉を連れて帰ります」

「……それは困る」

 それなら、とフェリクスは声を上げた。

「それなら、姉を大切にしてください……!」

「ああ……わかっている」

 エルヴィスはアマーリエの手を握りしめながらそう答えた。エルヴィスは、眠るアマーリエの熱い手を、今度は逃がさないよう強く握りしめた。

彼女が自分に縋ったのではない。自分が彼女に縋らなければ、この手は二度と温もりを戻さないのではないかという恐怖。

「本当にすまない」

 その謝罪は誰に届くこともなく、闇夜に消えていった。



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