17.エピローグ
無事完結となります!お読み頂きありがとうございました((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
「お義姉様!」
駆け寄ってきたリリアがわたしの腕に掴まる。今日も尊い程可愛らしいリリアには、学園の制服がとても良く似合っている。
「リリア、もう終わったのですか?」
「はい!一緒に帰っても大丈夫ですか?」
「勿論よ。」
「…リリア嬢…。」
「あっ、ウィリアム様。ごめんなさーい気づかなくって。」
口ではそう言っているけれど、リリアは臨戦態勢だわ。何故だか分からないけれど、この二人は最近何かを競い合っているみたいなの。
リリアの学園生活は順調にスタートした。私が演じていたリリアから本物のリリアにスイッチして、上手く馴染めるか本当に心配したわ。でも私の心配をよそに、リリアはあっという間にクラスに溶け込んでしまった。
と、いうか私がリリアのフリをしていた事は、もはや公然の秘密となっていたの。
ウィリアム様に思いを伝えたあの日。全く周りが見えていなかったけれど、学園の門の周りには多数の生徒がいた。何なら私は過激派を引連れてウィリアム様に突撃したあげく、彼女たちの目の前でカツラを叩きつけたのだもの。何人かが驚き過ぎて気を失ったという話は後から聞いたわ。
問題が表沙汰にならなかったのは、学園長とアレクセイ様の根回しや、一人二役に気づかなかった生徒たちがプライドを守るため黙認した事。何より私とウィリアム様の一部始終を見ていた過激派が何故か大興奮して火消しに奔走してくれたお陰よ。
迷惑をおかけしたアレクセイ様にはウィリアム様とお詫びに伺ったけれど、謝罪は必要ないと言われた。とても上機嫌に「上手く転んだねぇ」と言われたけれど、どういう意味かはわからない。ウィリアム様はロータリーを花まみれにした事を笑顔で怒られていたけれど。
あれ以来、私の周りは大きく変わった。元過激派のお友達が沢山出来たし、話しかけられることも増えた。散々だった呼び名も“変装の女神”とか“愛の雪解け”とかに変わったらしい。少しばかり恥ずかしいわ。
ウィリアム様とはたくさんの話をして、これまでの誤解を一つずつ解消している。
「いつから私の事をお好きだったのですか?」
「ゴフっ!」
「何か不味いことでも?」
「…それは言わないといけないのか?」
「気になりますもの。」
今日もウィリアム様の眉間には皺が刻まれている。このお顔を見るのは私の特権と思えば、皺すら愛おしく感じるから不思議ね。
「…最初は親の決めた婚約者という印象でしかなった。異論はなかったし、仲良く出来ればとは思っていたけど、正直な事を言えば愛情がなくとも、共に公爵家を支える同志になれればいいと思っていたんだ。」
貴族の婚姻は徐々に変わってきているけれど、いわゆる政略結婚はまだ多い。儀礼的な家庭もあると聞いているわ。
「婚約して少したった頃、たまたまクレアの屋敷近くを通った事があったんだ。気まぐれに君に会おうと寄ったら、庭園から楽しげな笑い声がして。気になって覗いたら笑っていたのは君だったんだ。」
失敗したお兄様のパーマ頭に鳥が卵を産み落とした時の事ね。
「それまで何度か茶会をしたが、君は表情を変えた事はなかった。だから笑顔を見たのはその時が初めてで。それ以来、クレアの笑顔が頭から離れなくなったんだ。…俺が笑わせたいと思った。」
自分で聞いておいて何だけれど恥ずかしい。私は急いで話題を変えた。
「観劇に行く前、リリアをじっと見つめていたのは何故ですの?」
「君と観劇に行くというだけで緊張していたのにデートだの名前で呼べだの言うから、つい恨めしく思って見てはいたな。」
「何故あの作品を?」
「君は学園で酷い噂が流れても、言い訳もせず耐えていただろう?そんなクレアが逆境や困難に挫けぬ美しいヒロイン似ていると思ってな。」
「あの舞台は“野の花は愛を得て大輪になる~真実の愛を貴方と”が原作なのですが。」
「野の花?なんだそれは。」
庭園で話す私たちの様子を見守る陰がある。
「…お義姉様たちは今まで何を話していたの?」
「大抵お天気から始まって、ご家族は息災な事、飲んでいる紅茶の種類と産地プラス茶菓子について。後は庭園を散歩して花を愛でるというのがお決まりのパターンでした。」
「えぇ~…。」
「引くわ。俺でももうちょい頑張ってるよ。」
「私と旦那様でも、もう少しまともな会話をしてましたよ…。」
「途中から茶菓子の種類が増えましたから、会話は増えましたよ。」
「それ会話じゃなくて解説。」
「言い得て妙ね。」
「母さんが話聞いてくれたよ!」
「アンリ、あの子が嫁ぐ時にはついて行ってくれますか?」
「…私、裏から如何様にも牛耳れそうですが…。」
「もういいんじゃないですか?それで。」
「お願い、覗くならわしも誘って。」
愛する義妹、温かな家族、仲の良い友人、そして愛しい婚約者。
リリアのフリをしたからこそ気づけた私の大切な宝物。この幸せを大切にすると、あの夢のような花畑で私は誓ったの。驕ることなく努力するわ。
私には目標があるの。
ウィリアム様に見破られないリリアの変装をする事、よ。




