第13章 時を越えろ!
時を超える術…
時空術を編み出したことでマスター悲劇な目に遭ったという。
「ワシの術は未来へは行けん。過去でも行ける時代は往復合わせて20年くらい過去へ行くのに10年、元の時代へ戻るのに10年かかるんじゃ。この魔法過去へ行けば行くほど、魔力を高めねばならん。若い頃でも往復40年じゃ。それ以上はさすがに魔力が足りないんじゃ」
「で、どうして悲劇なのよ」
と、マリーが聞いた。
「ワシは死んだ恋人を助けようと、殺される前に過去へ行った。じゃが助けれなかった」
「どうして?」
「彼女があそこで死ぬ運命…それを変えることは出来んようじゃ。ワシはそれでも6回くらい過去へ行って助けようとしたが、6回も彼女の死を見ることになったんじゃ」
「全部で7回恋人が死ぬのを見たんですね」
と、ルーナが悲しそうな顔で言った。
しばらく沈黙が続いた…
「マーナちゃん頼むよ」
と、マスターが言うとマーナは歌い始めた。
マスターはマーナの歌声でいつも心を癒してもらっているのだ。
そして20時過ぎには翔たちやマーナも店を出た。
帰る途中マーナはすべてを話した。
「貴女に嫌な記憶を残したくなかったんです」
「心遣いありがとうございます」
「でも、これからは友達になってくれると嬉しいです」
「神威様とお友達に!」
「嫌ですよね」
「い、いえ…でもいいんですか?」
「うん。友達はたくさんいた方が嬉しいです。今の僕はもう一人の人格の僕と違って、一人ぼっちは嫌なんです」
「そうですか…分かりました。神威様」
「神威龍一の名前の事は秘密にしてください。この国に神威龍一がいると知られると、大騒ぎになるので…僕の本当の名は大空翔。皆は翔って呼んでいる」
「そうでしたか。分かりました翔様」
「様はやめて、せめて君かさんにしてほしいです」
「はい。翔さん」
その時、翔はある言葉を思い出した。
それは師匠神威武蔵が死ぬ前に言った言葉だ。
「…お前の姉とはいつか時の中で出会えるだろう……」
この時はあの世でいつか出会えるということか?
それともただ、翔が一人になったから、励ましの言葉なのか?
あの時の翔はそう思っていた。
この事を歩きながらルーナたちに伝えた。
「もしかしら、イムターさんに頼んで過去に行けばお姉さんに会える…そういうこと意味で言い残したのかもしれないわ」
ルーナがそう言うと、また皆で店に戻った。
翔は全てを話した。
「良く分かった…でもやめた方がいい」
「何でですか?」
「さっき言ったように、運命は変わらね~…ワシみたいに嫌な者をまた見ることになる」
「…」
しばらく黙っていた翔がこう言った。
「僕は姉の死を見ていません。逃げた時に背中を斬られ、気を失いました」
しばらく沈黙の時間が続いた。
そして…
「ワシは自分の恋人を殺されるのを、あの日見た。じゃが、お前さんは姉の死を見ていない…とすると生きている可能性ゼロではないのう…」
「師匠は僕とお姉ちゃんが会うことを知っていた。なら、生き残ったのかも」
「かもしれんが、生きているならどこに居る?いや、生きている可能性はゼロではないが、死んでいる可能性もゼロではない」
「それは…」
「どうする?大空君…往復20年…今のワシでも出来なくはないが…」
「過去へ行きます。師匠は僕と姉が会うのを知っていた。もしかしたら殺される直前を見るかもしれない…でも…でも生きたいのです!」
「(なんて曇りのない目をしておるんじゃ…)分かったワシが連れて行ってやろう」
「私も行くわ。私は翔君のもう一人の姉なんですから」
と、ルーナが言うと、美奈子も「行く」と言い出した。
「2年前や昨日の恩返しを少しでもしたい」
マーナも行く気になった。
「しょうがないわね~アンタたちだけじゃ不安だから、私も行くわよ」
と、マリーも行く気になった。
「よし、往復20年の時の旅をみんなでしよう」
と、美奈子が言うと、翔は慌ててこう言った。
「10年前のジャパールは他国の者がいただけで捕縛されて、拷問されるじゃないですか!」
「あっ!そうだった」
「とりあえずマジックカラーで目と髪を黒くしましょう」
20分後…
「どんな過去が待っているか分からんが、準備は良いな?10年前…場所と日付は?」
「カーワ村です。日付は4月23日…僕の誕生日です」
「はい」
「(4月23日が翔君の誕生日だったのね…)」
イムターは気を高めて、6人を10年後の4月23日にタイムスリップしていった。
時を超え、翔たちは無事10年前のジャパールのかーカーワ村にやってきた。
だが、翔はイムターに村の名前までしか教えていない。
教え忘れたのではなく、彼の家がどこにあるのか、彼自身覚えていないのだ。
「ここは確かにカーワ村」
「この日に翔君のお姉さんや両親が殺されるんだから」
時間はすでに夕方17時を超えていた。
皆でばらばらに散って探せば早いのだが、ルーナたちの正体を知られては不味い為、周りから不審者と思われないようにしながら、皆で翔の家を探した。
翔は悔しかったことだろう。
自分の住んでいた家でさえ忘れてしまったのだから…
19時を過ぎた頃、翔はようやく自分の家を探し当てた。
そして戸を開けると、父親の死体が横たわっていた。
ルーナや美奈子、マーナは震えて涙を流した。
マリーも震えて、涙を流した。
父親の遺体の近くには母親がいた。
まだ息をしている。
「母さん」
「ま、舞…翔をおね…がいね…」
母親は翔を舞だと思いながら息を引き取った。
「母さん…」
悲しみと怒りを抑え、姉のいる方へ向かった。
姉の舞は少しだけだが武から格闘技を学んでいる。
だが、親が殺された怒りと悲しみでいつものように動けなかった。
犯人の一人が笑いながら舞を刺し殺そうとした。
だが、翔犯人の手首をつかんだ。
「まだ餓鬼がいたのか!?」
「誰あの子?私に似ている…」
「翔君殺しちゃダメよ」
と、ルーナが言った。
「翔君?…私の弟と同じ名前…なんで…はっ!翔!」
舞は、小さい頃の翔のいるとこへ向かった。
「逃がすか~!」
と、大声で叫ぶ犯人。
だが、翔は犯人の逆関節を取り、投げ飛ばし、地面に叩き付けられた。
この時は背中から落としたが、本来は頭から落とす水神流の業の一つ「雷鳴」である。
だがこの時の翔の顔は恐ろしい方の人格の顔ではなく、悲しみに耐え涙を流す優しい顔をしていた。
本来なら相手を傷つけたくないという理由で、甘えん坊の人格の時の翔は水神流をあまり使わない。
だが、悲しみと怒りで水神流を使ったようだ。
翔たちも舞の後を追った。
そして裏口から見た光景は背中を斬られ、大量の血を流して倒れている翔の姿と、もう一人の犯人もあばらを折られ、痛みで倒れ、恐怖で震えていた。
そしてそのもう一人の犯人を倒したのが神威武蔵であった。
鋭い目付きと腰まで伸びた黒い髪……
腰には水神流の継承者の証である刀を差している。
「お前らも家族か?」
「はい。翔…」
血だらけの弟を見て涙を流した。
「まだこの子は助かります!武蔵さんあなたも来てもらえませんか?」
「(こいつなんで俺の名を?)女…いや、男か…小僧なぜ俺の名を知っている?」
「まずは病院に行ってからです。その時に全てをお話しします。水神流19代目神威武蔵さん」
「(こいつ)…まあ、いいだろう」
翔たちは病院へ向かった。
幼い時の翔を助けるために…




