第15話 義妹、来訪前夜
家の中が、少しずつ知らない場所になっていく。
そう思ったのは、玄関に段ボール箱が三つ置かれていたからだった。
箱の横には、父さんがホームセンターで買ってきたらしい新しいスリッパが二足。薄いベージュ色のものと、淡い水色のもの。まだ誰も履いていないから、布地が妙にきれいだった。
それだけで、家の空気が変わった気がした。
「ただいま」
俺が声をかけると、リビングのほうから父さんが顔を出した。
「おかえり。悪いな、玄関狭くなってるだろ」
「何これ」
「整理用の箱だ。週末に少し片づけようと思ってな」
「顔合わせ、明日だよな?」
「ああ」
「片づけるの、今日で間に合うのか?」
父さんは少しだけ目を逸らした。
「間に合わせる」
「父さん、それ間に合わない人の言い方だぞ」
「言うな。自分でも思っている」
俺は靴を脱ぎながら、玄関の箱を見た。
別に、美緒さんたちの荷物が届いたわけではないらしい。うちにあるものを整理するための箱だ。けれど、それでも十分だった。
誰かが来る準備。
新しい家族になるかもしれない人を迎える準備。
その気配が、家のあちこちに出ている。
リビングに入ると、テーブルの上にはメモ帳が置かれていた。
『買うもの』
・お茶
・コーヒー
・紅茶
・ジュース
・菓子
・新しいタオル
・来客用箸
・洗面所掃除用品
父さんの字だ。
やけに項目が細かい。
「父さん」
「何だ」
「緊張してる?」
「している」
「即答か」
「するだろう。相手の娘さんが初めてうちに来るんだぞ」
「俺より緊張してないか?」
「しているかもしれない」
「そこは否定しろよ」
父さんは苦笑しながら、袖をまくった。
リビングには掃除機が置きっぱなしになっていた。棚の上には、普段は積み重なっている郵便物がなくなっている。テレビ横の小物も少し整えられていた。
父さんなりに、かなり頑張っている。
それが分かる分、俺も変に落ち着かなかった。
「顔合わせって、何時?」
「明日の午後一時。駅前の店を予約してある。そのあと、時間があれば少しだけうちにも寄ってもらうかもしれない」
「うちにも?」
「まだ確定ではない。だが、これからのことを考えると、一度見てもらったほうがいいと思っている」
「……なるほど」
俺はリビングを見回した。
ソファ。
テーブル。
父さんのマグカップ。
俺の置きっぱなしの学校鞄。
棚の上の古い写真立て。
台所のカウンターに置かれた弁当箱。
ここは俺と父さんの家だった。
そこに、明日、知らない母娘が来るかもしれない。
紗枝さん。
美緒さん。
まだ顔も知らない二人。
いや、父さんの再婚相手になるかもしれない紗枝さんの写真は一度だけ見せてもらった。落ち着いた雰囲気の人だった。柔らかく笑う人。父さんと並んでいる写真は、少しだけ照れくさそうだった。
でも、美緒さんの写真は見ていない。
父さんも、無理に見せようとはしなかった。
「写真、見るか?」
俺の考えを読んだように、父さんが言った。
「美緒さんの?」
「ああ。紗枝さんから送ってもらっている。もちろん、本人にも顔合わせ前に見せていいか確認してある」
俺は一瞬迷った。
見れば、少しは現実感が出るかもしれない。
でも、逆に落ち着かなくなるかもしれない。
リカの顔が浮かんだ。
昨日から何度も「清楚系義妹は強い」と言っていたリカ。
俺が写真を見たと知ったら、絶対に聞いてくる。
どんな子だった?
可愛かった?
清楚系だった?
兄さんって呼びそう?
いや、最後はまだ写真では分からない。
「やめとく」
俺は言った。
「明日、直接会う」
「そうか」
「先に見たら、何か構えそうだし」
「分かった」
父さんは無理に勧めなかった。
こういうところは助かる。
最近、リカ相手に「聞く」「止まる」「勝手に決めない」を何度も話しているせいか、父さんのこういう距離の取り方が妙にありがたく感じる。
「悠真」
「ん?」
「不安か?」
「かなり」
「そうか」
「父さんは?」
「かなり」
「大人でも?」
「大人でもだ。むしろ大人のほうが余計なことを考える」
「たとえば?」
「お前に嫌な思いをさせないか。美緒さんに無理をさせないか。紗枝さんがこの家に来た時に、気を使いすぎないか。今さら俺が再婚していいのか」
「最後、重いな」
「大事な話だからな」
父さんは台所の椅子に座り、少し疲れたように息を吐いた。
「俺は、紗枝さんと一緒に生きていきたいと思っている。だが、それでお前の居場所が狭くなるようなことはしたくない」
「狭くなるって」
「家は、ただの建物じゃないからな」
父さんは静かに言った。
「帰ってきて息を抜ける場所だ。機嫌が悪くても、疲れていても、何も言わなくてもいられる場所だ。そこに新しい人が入ると、どうしても空気は変わる」
「……うん」
「それが良い変化になるか、苦しい変化になるかは、俺にもまだ分からない」
「父さんにも分からないのか」
「分からない。だから、急がずに話すしかない」
俺は少しだけ笑った。
「最近そればっかりだな」
「何がだ?」
「急がずに話すしかない、みたいなやつ」
「そうなのか?」
「俺の周り、そういう問題ばっかり」
「天宮さんか」
「まあ」
父さんは少しだけ口元を緩めた。
「彼女には話したのか?」
「話した」
「どうだった?」
「不安が多いリカだった」
「何だ、それは」
「本人がそう言った」
父さんは小さく笑った。
「天宮さんらしいな」
「父さん、リカのこと分かってる風に言うなよ」
「幼い頃から見ているからな。あの子は昔から、お前のことになると少し顔つきが変わる」
「昔から?」
「ああ。小学生の頃、お前が転んで膝を擦りむいた時も、保健室へ連れていこうとして先生より先に動いていた」
「……覚えてない」
「お前は泣きそうでそれどころじゃなかった」
「泣いてない」
「泣きそうだった」
「リカにも泣いたって言われた」
「おそらく泣いていた」
「父さんまで」
父さんは少しだけ笑った。
こういう昔の話をされると、リカが言っていた「時間は見えない」という言葉を思い出す。
家族は目に見える。
靴。歯ブラシ。マグカップ。名前。書類。食卓。
でも、幼なじみには幼なじみの見えない時間がある。
俺が覚えていないことを、リカや父さんが覚えている。
その時間は、確かに消えない。
「天宮さんは、今回のことを心配しているだろうな」
父さんが言った。
「かなり」
「お前は、ちゃんと自分の言葉で話してやれ」
「父さんに言われなくても」
「分かっているならいい」
父さんは立ち上がり、掃除機を片づけ始めた。
「悠真、悪いが明日までに自分の部屋も少し片づけておけ」
「美緒さんたち、俺の部屋まで見るのか?」
「見ないと思うが、念のためだ」
「念のためで人の部屋の秩序を乱すな」
「秩序があるならな」
「失礼だな」
父さんは俺の部屋のほうをちらっと見た。
「机の上、プリントが山になっていたぞ」
「見たのか」
「ドアが開いていた」
「それは不可抗力みたいに言うやつじゃない」
「片づけろ」
「はい」
俺は諦めて、自分の部屋へ向かった。
*
部屋に入ると、確かに机の上は少しひどかった。
教科書。ノート。配られたプリント。リカから渡された謝罪文兼改善計画書を入れたクリアファイル。コンビニのレシート。シャーペンの芯のケース。
俺はまずプリントをまとめた。
その途中で、クリアファイルから例の紙が少しだけ見えた。
『黒瀬悠真くんに対する過干渉行為の反省と再発防止策』
何度見てもタイトルが強い。
もし明日、美緒さんがうちに来て、偶然この紙を見たらどう思うだろう。
いや、見せるわけがない。
絶対に隠す。
俺はクリアファイルを机の引き出しにしまった。
その時、スマホが震えた。
リカからだった。
『帰った?』
いつものメッセージ。
俺はベッドに腰を下ろし、返信する。
『帰ってる。部屋片づけ中』
すぐ既読。
『珍しい』
『明日、顔合わせのあと家に来るかもしれないから』
既読。
少し間が空く。
『美緒さんが?』
『紗枝さんと一緒に、時間があれば』
また沈黙。
俺はスマホを見つめた。
この沈黙にも慣れてきた。
リカが今、言葉を選んでいるのだと分かる。
少し前なら、すぐに連投してきたはずだ。
部屋に来るの?
悠真の部屋も?
何を見るの?
どこまで片づけるの?
美緒さんのため?
そんなふうに、気持ちが先に走ったかもしれない。
でも今は、待っている。
やがて返信が来た。
『家に来るんだ』
『まだ確定じゃない』
『そっか』
短い。
でも、その一文の奥に、かなりの不安が見える。
『今、何点くらいの不安?』
俺が送ると、すぐに既読がついた。
『九十』
高い。
俺は思わず苦笑した。
『かなり高いな』
『家に来るは強い』
『昨日も言ってたな』
『家族って強い。家に来るも強い』
『単語の強さを判定するな』
『だって強い』
リカらしい。
でも、すぐに次のメッセージが来た。
『でも、調べない』
『偉い』
『家の外で待ち伏せもしない』
『当たり前だ』
『今、ちょっと考えた』
『するな』
『しない。言ったから止まれる』
俺は少しだけ息を吐いた。
本当に、リカは言うことで止まろうとしている。
それはかなり大きい。
『明日、終わったら話す』
俺は送った。
『ほんと?』
『話せる範囲で』
『悠真がどう感じたかも?』
『それも話す』
『美緒さんが兄さんって呼んだら?』
『報告する』
『絶対?』
『絶対』
『それは助かる』
そこまで重要なのか。
俺は少し笑った。
リカから、またメッセージが来る。
『悠真、明日大丈夫?』
少し意外だった。
リカが自分の不安ではなく、俺の心配をしている。
『分からない』
俺は正直に打った。
『緊張してる』
すぐに既読。
『そっか』
少し間。
『じゃあ今日、電話する?』
俺は指を止めた。
リカと電話。
普段はメッセージが多い。電話をすることもあるが、頻繁ではない。
今日のリカは不安が多い。俺も落ち着かない。電話をしたら、話が長くなる気がする。
でも、悪くないかもしれない。
『少しだけなら』
送信。
すぐに着信が来た。
早い。
俺は少し笑って、通話ボタンを押した。
「早いな」
『少しだけって言われたから、早く始めないと終わっちゃうじゃん』
「そういう理屈か」
『うん』
電話越しのリカの声は、いつもより少しだけ近く聞こえた。
距離は離れているのに、不思議な感じだ。
『悠真、部屋片づけてるの?』
「片づけてる」
『何を?』
「プリントとか」
『変なもの出てきた?』
「変なもの?」
『あたしの謝罪文とか』
「しまった」
『見つかったら困る?』
「かなり困る」
『美緒さんに?』
「誰に見られても困る」
『でも悠真、捨ててないんだ』
しまった。
そういう方向に持っていかれた。
「預かってるだけだ」
『でも、持ってる』
「リカが持ってろって言ったんだろ」
『うん。言った。でも持っててくれてるの嬉しい』
「タイトルが強すぎて捨てにくいだけだ」
『それでも嬉しい』
リカの声が少し柔らかくなった。
俺は机の上のプリントをまとめながら言う。
「リカは今何してるんだ?」
『ベッドに座ってる』
「何か食べたか?」
『食べた。ちゃんと』
「何を?」
『カレー』
「いいな」
『明日、悠真の家は何作るの?』
「分からない。顔合わせは外の店だし、家に来てもお茶くらいじゃないか」
『お茶』
「そこに反応するのか」
『美緒さんが悠真の家でお茶を飲む』
「実況みたいに言うな」
『強い』
「またか」
『だって、悠真の家のコップ使うかもしれない』
「来客用を買うって父さんがメモしてた」
『来客用コップ』
「それも強いのか?」
『強い。新しい家族候補のために新しいコップ』
「言い方」
『ごめん。今、ちょっと嫌な言い方だった』
「まあ、でも父さんは普通に気を使ってるだけだ」
『分かってる。黒瀬お父さん、優しそうだし』
「黒瀬お父さんって言い方やめろ」
『じゃあ、悠真のお父さん』
「普通だな」
『あたし、悠真のお父さんには嫌われたくない』
「嫌われてないだろ」
『ほんと?』
「たぶん。父さん、リカのこと昔から知ってるし」
『どんなふうに?』
「俺のことになると顔つきが変わる子って言ってた」
電話の向こうで、リカが黙った。
「リカ?」
『……そんな昔から?』
「らしい」
『恥ずかしい』
「今さらだろ」
『昔のあたし、隠せてなさすぎ』
「今も隠せてない」
『今は隠してない』
「それはそうだった」
リカは少し笑った。
笑い声を聞いて、俺は少し安心した。
『悠真』
「うん」
『明日、美緒さんに会うの、怖い?』
「怖いというか、緊張する」
『何が一番?』
「どう接すればいいか分からない」
『お兄ちゃんっぽく?』
「まだ兄じゃない」
『でも、なるかもしれない』
「そうだな」
『美緒さんも、緊張してるかな』
その言葉に、俺は少し意外だった。
「美緒さんの心配?」
『うん。ちょっとだけ』
「珍しいな」
『失礼じゃない?』
「いや、リカなら俺のことだけ考えるかと思った」
『それは考えてる。九割くらい』
「多いな」
『でも、一割くらいは美緒さんも緊張してるかもって思った』
「そうだろうな」
『急にお兄さん候補に会うんだもんね』
「お兄さん候補って何だ」
『義兄予定者?』
「もっと変だ」
『黒瀬悠真さん』
「急に名前で呼ぶな」
『美緒さんはそう呼ぶかもしれないじゃん』
「まあ、初対面ならそうかもな」
『黒瀬悠真さん、かあ』
「何だよ」
『距離あるね』
「初対面だからな」
『兄さんよりは安心』
「呼ばれてもいないのに安心するな」
『でも、黒瀬さんから始まって、悠真さんになって、兄さんになったらどうしよう』
「段階を作るな」
『呼称進化』
「進化じゃない」
『でも大事』
「分かった。呼ばれ方は報告する」
『約束?』
「約束」
『位置共有より嬉しい約束』
「比較対象が相変わらずだな」
リカは電話の向こうで笑った。
その笑い声が、少しずついつもの調子に戻っていく。
俺も部屋の片づけを進めながら、リカと話し続けた。
父さんが買ってきたスリッパの話。
来客用のコップの話。
玄関に置かれた段ボール箱の話。
俺の部屋のプリント山の話。
リカはその一つ一つに反応した。
『新しいスリッパ、何色?』
「ベージュと水色」
『水色、たぶん美緒さん用だ』
「たぶんな」
『強い』
「もう何でも強いな」
『今日は全部強い日』
「不安が多いリカ、三日目か」
『そう。でも電話してるから、ちょっと落ち着いてる』
「そうか」
『悠真は?』
「俺も、少し落ち着いた」
電話の向こうが静かになった。
『ほんと?』
「ああ」
『あたし、役に立った?』
「役に立った」
『……そっか』
リカの声が少し震えた。
「リカ?」
『ごめん。今、嬉しくて変な顔してる』
「見えないから大丈夫だ」
『見てほしかったかも』
「どっちだよ」
『悠真が少し落ち着いたなら、今日のあたしは八十点くらい?』
「電話だけなら九十点」
『高い』
「不安を言いすぎるかと思ったけど、ちゃんと俺の話も聞いた」
『本当?』
「本当」
『やった』
その声が、いつものリカに近かった。
少しだけ明るくて、少しだけ重くて、でも悪くない。
『悠真』
「うん」
『明日、終わったら絶対連絡して』
「分かった」
『無理にすぐじゃなくていい。落ち着いてからでいい。でも、何も言わないのはやだ』
「分かってる」
『あたし、待つ練習する』
「また試験みたいだな」
『今回はかなり難しい試験』
「でも、土曜日に待てただろ」
『うん。悠真、来た』
「明日も連絡する」
『うん。信じる』
リカはそう言った。
その一言が、少しだけ胸に残った。
信じる。
リカにとっては、簡単ではない言葉だ。
でも、最近のリカは少しずつそれを使うようになっている。
俺も、ちゃんと答えなければいけない。
*
電話を切ったのは、三十分後だった。
少しだけのはずが、かなり長くなった。
通話後、リカからメッセージが一通届いた。
『今日は電話してくれてありがとう。明日、ちゃんと待つ。調べない。家の前にも行かない。位置共有も言わない。だから、悠真は無理しすぎないで』
俺は画面を見て、少しだけ笑った。
リカにしては、かなり頑張った文章だった。
相変わらず「家の前にも行かない」という不穏な宣言が混ざっているが、言って止まっているならいい。
『分かった。ありがとう』
そう返信する。
すぐに既読がついた。
『悠真からありがとうって言われた』
『そこ拾うな』
『嬉しいから拾う』
『寝ろ』
『悠真も』
『寝る』
『明日、頑張って』
『おう』
『おやすみ』
『おやすみ』
スマホを机に置く。
部屋の片づけは、まだ半分残っていた。
だが、少しだけ気持ちは落ち着いていた。
父さんが再婚するかもしれない。
明日、美緒さんと会う。
家に来るかもしれない。
新しい家族になるかもしれない人と、初めて顔を合わせる。
考えれば考えるほど、胃のあたりが重くなる。
けれど、さっきよりはましだった。
リカと話したからだ。
不安が多いリカは、俺の不安も少しだけ聞いてくれた。
自分の不安でいっぱいになりながら、それでも俺を気にしてくれた。
それは、かなり大きな変化だった。
「九十点、か」
俺は小さく呟いた。
リカに聞かれたら、きっと大騒ぎする。
だから言わない。
俺は机の上のプリントをまとめ、余計なものを引き出しにしまった。
新しい家族が来るかもしれない家。
その中で、俺の部屋だけはまだ俺の場所だった。
けれど、明日からその感覚も少し変わるのかもしれない。
そう思うと、やはり落ち着かない。
でも、リカが言っていた。
待つ練習をする、と。
なら俺も、少しだけ練習しなければいけない。
新しい関係を、勝手に決めつけずに待つ練習。
美緒さんがどんな人なのか、会ってから知る練習。
自分がどう感じるのか、ちゃんと言葉にする練習。
面倒だ。
本当に、最近は面倒なことばかりだ。
でも、その面倒さの先に何かがあるのなら。
たぶん、逃げるわけにはいかない。
俺は部屋の明かりを消した。
明日、美緒さんが来る。
まだ見ぬ義妹候補。
未知の存在・美緒。
その言葉を思い出して、少し笑ってしまった。
リカが勝手につけた呼び方なのに、頭から離れない。
明日、俺の生活は少しだけ変わるかもしれない。
そして、リカとの関係も。
それでも、明日の朝もリカはいつもの曲がり角にいる。
俺はたぶん、いつも通りに言う。
おはよう、と。




