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すぐに大聖女と呼ばれる私の白い魔法  作者: 御咲花 すゆ花


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10 心の世界

 無事に火災を止めることができました。その達成感と疲労感で、私は膝から崩れ落ちるようにして、へなへなとその場に座りこんでしまっていました。上がってしまった息を整えるように、深い呼吸をくり返していると、周りの音がよく聞き取れるように感じられます。


 麦畑を鎮火してからは、しつこいくらいに聞こえていた兵隊さんの声が、全然聞こえて来ません。うめくような悲しい呼吸音さえも、ぴたりとやんでいました。


(やったのね……)


 やっぱり、燃える麦たちと兵隊さんのやけどには、なんらかの関係があったんだと思います。そうだとするなら、私は無事に治療をやり遂げたことになりはしないでしょうか? 褒めてください、ちょっぴりでいいので。


 でも、いったいどうして心の中の世界で、活動することになったのか、私には全然見当がつきません。それに、どうして心の世界での活動が、現実にも影響を及ぼせてしまうのかについても、全く分かりそうにありませんでした。


 いっぺんにたくさんの数の疑問が浮かんで来ましたが、いくら考えてみたところで、おバカな私がうんうんうなってみても、答えが分かるはずもありません。時間の無駄というものですよ。


 自分の姿勢が気になった私は、座りなおします。もう少し楽な態勢になりたかったんです。本当は男の子みたいに、どしっとあぐらになりたかったんですが、スカートの中が見えそうになるのがいやで、ちょっぴり不恰好な体育座りになりました。だれが見ているわけでもないでしょうが、これでもレディーなんです。……ちょっと、やめてくださいよ。ちゃんとした女の子なら、そもそもスカートを泥だらけにしないなんて正論をいうのは。


「……」


 ずいぶんと乱れた息も、落ち着きを取り戻して来ました。

 あとは、この不思議がいっぱいの心の世界から、現実へと戻るだけです。戻った先も、私にとっては現実感のない場所なんですが、そこは無視しちゃいましょう。とても幻想的なので、もうちょっとこのまま、黄金色に輝く世界を見ていたい気もしますが、もう十分でしょう。


 これまでの一連の体験を踏まえて考えるならば、私が心の中の世界に踏み入ることになったのは、兵隊さんの腕を握ったことが原因であることは、間違いありません。だって、これはニリンダさんの真似をしただけなんですから。


 それならば、話は簡単です。もう私には、帰り方が分かっていました。

 やっぱり今日の私は()えています。()えまくりです。これは……明日からクールで知的なキャラクターとして、自分を売っていける予感がします。私はひとりで、人様にはお見せできないような、にやにやとした気持ち悪い笑みを浮かべながら、先ほど華々しい大活躍をしてみせた、自分の(いと)しい手に視線を落とします。


 何度も力を入れてバケツを握ったり緩めたりと、酷使してしまいましたが、そのぶんの成果はありました。自分の功績を褒めるように、私はえいやという気持ちで、勢いよく手を開きます。そこには、見渡す光景の全部が黄金色に染まった、一面の麦畑が存在していました。つまり、何も変わっていません。


 ぐふふとほくそ笑んでいた私の表情が、一瞬にして真顔に戻ってしまいました。……あれ、これどうやったら兵隊さんの腕から、自分の手を離せるんでしょうか? どなたか、教えてくださいませんか?


「……うぅ」


 弱りました。

 バカだ、バカだと自覚のあった私ですが、これには少し恥ずかしさを覚えずにはいられません。まさか、つい今さっきまで開いていた手のひらを、一度握ってから開きなおすだけで、私は自分が天幕の中に戻れるつもりでいたんです。


 非常に弱りました。

 とてもじゃありませんが、自分のおつむには期待できそうにもないので、そのうちどうにかなるだろうの精神で、私は現状を楽観的に捉えることにしてみます。いわゆる、現実逃避というやつです。


 心なしか、まだちょっぴり体が熱を持っているように感じられましたので、首元だけは私も冷やさせてもらおうと、お世話になった井戸に向かいます。決して、恥ずかしさに顔がほてっていたわけじゃありません。すごく大事なことなので、一応、つけ加えておきます。


 井戸の水は十分にきれいですが、これで顔を洗うことには抵抗を覚えます。スカートの左ポケットからハンカチを取り出し、水で()らそうとバケツの中に手を入れたときでした。


 その瞬間に、目の前で爆発が起きたかのような、まばゆい閃光(せんこう)が私の視界を焼きつくしていました。あんまりにも力強い光のせいで、見えるすべてが白色に染まっています。黄金色の片鱗(へんりん)さえ見えません。


 そして、それはつづけざまに別の景色を映しだしていました。頭の中に、直接映像が流れこんで来るかのように、唐突なモノローグが始まっていたんです。


 結論からいえば、この場所が心の中の世界であることを、すっかりと私は忘れてしまっていたんです。それは安易に触れていいようなものじゃなかったんです。兵隊さんにとって、自分がただの部外者であることを、私は忘れていたんです。

 お手数ですが、ブックマークと評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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