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第三王女ヴァレンティーナ〜異世界人の子孫にして王国最後の聖女  作者: 帰り花
第一章

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第36話 初めての魔物討伐(8)家路へ

反転結界…………火葬…………鎮魂…………浄化…………結界消去。



討伐された猿型の魔物の死体をわたくしが処理し、残った灰が騎士たちの手によって土に埋められました。

そして。


「これにて此度の浄化及び魔物討伐を終了する!」


討伐隊隊長が皆に向かって告げ、五日間にわたる浄化と魔物討伐が終了しました。



今回の遠征での浄化予定地は十ヶ所でしたが、次回の遠征に回すはずだった予定地も含めて合計十六ヶ所、母とわたくしで浄化しました。

これは思いがけない成果でした。


今回の討伐隊はわたくし以外、全員が討伐経験者です。

いつもなら未経験の若手を数人連れていくのですが、若年で討伐未経験であるわたくしのためにそういう編成になったのです。

わたくしが浄化の力を使えるかどうかは未知数でしたから、浄化は一日二ヶ所ずつを予定していました。


騎士たちの中には、わたくしが足手まといになるかもしれない、魔物に怯えて役に立たないかもしれない、と危惧する者もいたことでしょう。

どれほど準備を重ねても、魔物の恐ろしさは現地で実際に遭遇しなければ体感できませんし、まだ十歳のわたくしの体が動くかどうかもその時になってみないとわかりませんから、無理もないことです。


ですが、わたくしが最初から浄化の力を使い、魔物に怯えて動けなくなることなく役目を果たせることが証明できたので、そういった印象を払拭できたと思います。


その後の四日間は魔物の出現状況により臨機応変に浄化する地を増やせました。

騎士たちの負担を増やさぬよう、浄化後、魔物が出なかった時だけ予定地の浄化をひとつ増やすようにしていたら、あわせて十六ヶ所もの浄化を済ませることができたのです。


この五日間で、わたくしは十分に浄化と討伐の後方支援ができる、と確信できました。

騎士たちもわたくしの働きを認めてくれました。

次の遠征からは母に頼らずわたくしひとりで参加できる。

そういった自信がつきました。




これですべての予定は完了しましたが、わたくしにはまだひとつ、やることがあります。


「ヴァレンティーナ殿下。我らひと足先に戻り、殿下の到着をお待ちします」

「くれぐれも我らを追い越しての到着はお控えいただきたくお願い申し上げます」

「ええ、きちんと時間を取ってから転移しますから心配しないでください。よろしくお願いしますね、パーチ、ロッシ」

「「はっ!」」


わたくしの護衛騎士、パーチとロッシが走り出し、ひと足先にこの場を後にしました。


わたくしは母やわたくしの護衛騎士ザネッラとメラート、そして討伐隊の皆と共に馬を休ませている拠点まで歩いて戻り始めました。



これから何をするのかというと、その拠点から討伐拠点の城へ転移魔法で戻ってみようとしているのです。

わたくししか転移魔法が使えないので、先にパーチとロッシに馬で城へ戻ってもらい、わたくしが転移魔法で戻るのを先回りして待っていてもらうことにしました。

これならわたくしは護衛騎士から離れてひとりきりにならずに済みます。


これから先、何度も来ることになる城ですから、転移にも慣れておこうと思ってのことです。

王都からここへ来るまでに立ち寄った砦へも転移慣れしておこうと思っていますが、まずはこの城から。

どのような緊急事態が発生しようとすぐに対応できるように、重要な拠点は転移慣れしておくつもりなのです。




今日が最終日ですから拠点の引き上げ作業も五日間張りっぱなしだった天幕を片付けるなど、少し時間がかかります。

わたくしは片付けの足手まといにならないよう、離れたところで皆の作業を見ながら時間を過ごしました。

ほどよい時間が過ぎてザネッラとメラートがそろそろ二人が城に着いた頃合です、と言うので、わたくしは転移することにしました。


「ではお母様、お先に失礼いたします。またあちらでお会いしましょう」

「ええ、ヴァレンティーナ。また後で」


母に挨拶してわたくしは城へ転移しました。



転移はあっという間です。

わたくしは狙い通りに城のエントランスへ戻りました。

目の前にはパーチとロッシがいます。


「お待ちしておりました、殿下」

「お体の具合はいかがですか?」

「まだ魔力も十分残っていますし、大丈夫です」


パーチとロッシはわたくしの顔色を見て安心したようです。

転移魔法はそれなりに魔力を必要としますし、わたくしが浄化や後方支援、魔物の処理に魔力をたくさん使った後なので、やはり心配だったのでしょう。

でもあちらの拠点からこの城までの距離はそれほど離れていないので、浄化でたくさん魔力を使った後でもまったく問題ないことを確認できました。



さあ、これでわたくしが今回の遠征でやりたいと考えていたことすべてをやり終えました。


ただわたくしにとって遠征はまだ終わっていません。

残すはヴァレリオにわたくしの顔を見せて安心させること。

必ず無事に戻ると約束したのですから、それを果たします。

わたくしの無事な顔をヴァレリオに見せてようやく、わたくしの初遠征は終了となるのです。




翌日。

早々に討伐隊は王都への帰途につきました。

わたくしは馬車に揺られながら五日間の怒涛の出来事を振り返ります。



わたくしはこの五日間でかなりの経験を積みました。

浄化の力を使えるようになり、対魔物用の結界を張って魔物の攻撃を阻むことができました。


首長オオトカゲ、長い牙を持つ牙虎、木の上から頭上を狙って飛び降りてくる尾長大猿など、大型の魔物ばかりが出てきたので、最初は恐ろしかった魔物にも慣れてきました。


討伐された魔物の死体の処理もできるようになりました。


討伐中の騎士たちの動きを見ながら後方支援することもできました。

討伐中、途中離脱しなければならないような大きな怪我を負った騎士の治癒も瞬時にできるようになりました。



でもまだまだ未熟なところもたくさんあります。


例えば。


母が魔物の気配に気づき結界を張るまでの速さにはまだまだ追いつけません。


母は魔物が汚染された森から飛び出してくる前に結界を張ります。

まだ姿が見える前に張り、騎士たちに「右前方から来ます」といった具合に、どこから来るか短く伝えるのです。


聞けば母は魔物が動くと空気の流れが変わるのですぐにわかるのだとか。


それを聞いてわたくしも魔力の気配だけではなく、空気の流れの変化を感じ取ろうと注意してみましたが、どうしても魔力の気配の方に気を取られてしまってうまく感じ取れませんでした。

そんなわたくしに母は言いました。


「場数を踏めばいずれ感じ取れるでしょう。ただ、あなたは魔力の気配に敏感なのですから、それをもっと伸ばせばよいのでは?」


もっともなことです。

母がすることすべてをそっくりそのまま真似るのではなく、基本的なところを外さない範囲でわたくしの長所を生かす方がよいはずです。

これから先、場数を踏み、わたくしなりのやり方を伸ばしていこうと思います。



他にも一度、母が浄化をしている最中に魔物が飛び出して来たことがありました。

その時母はいつもと同じ調子で浄化を続けながら、準備していた結界を瞬時に張ったのです。

その結界はきっちりと浄化中の森とわたくしたち全員を守るように張られました。

そして騎士たちが攻撃準備する間に浄化を終わらせ、それから騎士たちの出番となったのです。


母に聞けば、浄化中に魔物が出て来ることは時々あるとのこと。


「いつもそうやって浄化を続けながら結界を張るのですか?」

「ええ。結界の準備さえしておけば可能です。そして騎士たちが攻撃準備をする間に浄化を終わらせます。ここの魔物は獲物を見つけたとなればいつまでもあきらめずに攻撃してきますから、浄化を終えるまで結界で凌いでおき、そのあとは騎士たちの出番、というやり方でいけるのですよ」

「それも試行錯誤のうえ身につけたやり方ですか?」

「そうですよ」


母と討伐隊の騎士たちは実際に浄化や魔物討伐を行いながら、長い時間をかけてその技術を磨いてきました。


最初の頃は魔物の討伐にかなり時間がかかったそうです。

いくら先人の知識を頭に叩き込んでおいても、実際の討伐となると、知識を元に考えていた方法が通じないこともあったのでしょう。

命を落としかける酷い怪我を負った者が何人も出るほど、初期の頃の魔物討伐は困難なものだったとか。


母の魔力量は膨大とはいえ、浄化も後方支援もしてさらに治癒魔法を使う、となると負担は大きかったことでしょう。

魔力量が少なくなりすぎてしまうと回復にかなり時間がかかるので、常に余力を残しておかなくてはなりませんし、そのため酷い怪我を負った者が複数出た場合の治癒の兼ね合いは難しかったようです。

それでも魔物討伐遠征では、これまでにひとりの死者も出していません。



これからはわたくしも戦力になれますから、母の負担を減らせるはずです。

今回、ここの魔物の異様さもよくわかりましたから、わたくしも積極的に昔の資料を調べようと決めています。

王宮に戻ったらすぐにもやりたいことがたくさんあって気が急いてしまいます。


でも真っ先にするのは、やはりわたくしの無事な顔をヴァレリオに見せること。


わたくもヴァレリオの元気な姿を早く見たい気持ちでいっぱいです。

話したいこともたくさんあります。


ヴァレリオの顔を見たらきっと、ああ、家に帰ってきた、と実感できることでしょう。

それがとても待ち遠しいです。


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