表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三王女ヴァレンティーナ〜異世界人の子孫にして王国最後の聖女  作者: 帰り花
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/39

第29話 初めての魔物討伐(1)従者の不満と王国史

「殿下。なぜ私をお連れくださらないのですか」

「ヴァレリオ。今回は討伐隊隊長からお許しが出なかったのですから、堪えてください」

「私だって殿下をお守りしたいです」

「ヴァレリオ。あなたの気持ちはとても嬉しいのですよ。でも今回はわたくし自身が皆の足手まといになる立場なのです。若年のわたくしが魔物討伐に初めて参加するのですから、周りが普段より気を使うのは当然のこと。そこへもうひとり若年の魔物討伐未経験の者を増やしてこれ以上負担をかけるわけにはいかないのですよ。聞き分けてください」

「……はい」


そう返事をしたヴァレリオはとても納得できないという表情のままです。

でも今回は残念ながらヴァレリオを連れていくことはできないのです。




わたくしはフォンタナ王国第三王女ヴァレンティーナ。

いよいよ明日から初めての魔物討伐に参加します。

側妃であるわたくしの母コンチェッタと共に赴くのです。

母はもう十五年近く魔物討伐のために力を尽くしています。

なぜなら母は聖女の力を持つからです。

そしてわたくしも母と同じ聖女の力を持って生まれました。

ようやく十歳になり、浄化以外の聖女の力は使えるようになりましたし、八歳で治癒師の資格をとり治癒にも力を尽くしてきましたから、今回、魔物討伐隊の一員として参加が許されたのです。



わたくしたちが向かう場所は神聖国キドエラがあった跡地を含む一帯です。

そこは禁忌魔術大暴走による魔力汚染がもっともひどかった場所で、いまだに汚染が残る深い森が広がっています。

そこから時折り凶暴な魔物が彷徨い出てくることがあり、監視の目を緩めることができない厄介な森でもあるのです。


浄化の力を持つ者がいない時期は森の浄化を進められませんが、今は聖女の力を持つ母が現れたため、定期的な浄化と魔物討伐が復活しました。


母が言うには、その森は異様な禍々しい雰囲気に包まれているそうで、母の優れた力を以てしてもなかなか浄化が進まないそうです。

そのため、討伐隊が森の奥深くまで入ることはかなわず、周辺から浄化を進めつつ、浄化を嫌って飛び出してくる魔物を討伐する、という地道なやり方を取るしかありません。

それでも聖女の力によって浄化した場所は再び汚染されることはありませんから、十五年前と比べたら人が入れる範囲はかなり広がったそうです。


わたくしは浄化の力についてミカ様が残された聖女のための本で学びましたが、実際に使ったことはありませんので、今はまだ知らないも同然です。

でも今回、母の使う浄化の力を実際にこの目で見て、わたくしも使えるようになろうと決めています。

もう十歳になったのですから、母の負担をわたくしが軽くしてさしあげたいのです。



「殿下。今回向かわれるのはキドエラの跡地ですね?」

「ええ。正確に言うとキドエラの跡地とそこを呑み込んでしまった広大な森になります」

「なぜキドエラの跡地も王国が浄化するようになったのですか?」

「もともと神聖国キドエラがあった土地はベネドリナ王国のものだったのです。諍いや複雑な事情があり、最終的に土地を貸して自治権を認める形に落ち着いたのですよ。ただ両国の仲は良いものとは言えませんでした。ですから神聖国キドエラが滅びたあとは土地を取り戻し、ベネドリナ王家直轄地に組み込んで管理したのです。汚染がひどい地域でしたから放ってもおけませんでしょう?」

「なるほど、そういう事情があったのですね。そういえばベネドリナの王都も汚染されて、遷都されましたよね?なぜ今のフォンタナ王国の王都は昔のベネドリナの王都と同じ場所にあるのですか?」

「それは少し話が長くなりますよ」

「お手間でなければ教えてください」

「では聞かせてあげましょう」


わたくしはヴァレリオに簡単な王国史を話してあげることにしました。




ベネドリナ王国は、禁忌魔術大暴走により聖堂などを含む中心部が壊滅状態となり、王宮も一部が破壊され、魔力汚染によって王都には人が住めなくなりました。

そのため、ベネドリナ王家唯一の生き残りである王弟フォンタナ大公テオ様が王位を継いでベネドリナ国王となり、ベネドリナ王国の王都をフォンタナ大公領へ遷都し、王国の中枢もそちらに集約しました。


ここでフォンタナ大公領の名は消えることになるはずでしたが、キドエラの跡地、隣接する広大な森、そして旧王都を含む魔力汚染地域をあらためてフォンタナ領の名で王家直轄地とし、ベネドリナ王家が管理し浄化を始めました。

ベネドリナ王国はそれなりの大国でしたから、禁忌魔術大暴走の被害にあっても未だ健在と見せるためベネドリナの名を急に消すわけにはいかず、フォンタナの名はそういった形で残したのです。


その後、魔力汚染地域の浄化や、そこから次から次へと湧いて出る数多の魔物討伐に協力したくない有力諸侯が独立するなどして、ベネドリナ王国領は縮小しました。

ただそれは、禁忌魔術大暴走の際、主や嫡男を失って混乱した家もあったため、領地の立て直しに必死で余力がなく仕方がない一面もあったのです。


そんな中、ベネドリナ王国がどうにか滅びずに済んだのは、元フォンタナ大公領にあった魔石を産出する鉱山が命綱となったからです。

この重要な地域の支配者がフォンタナ大公テオ様であったことが幸いしたのです。


およそ四百年の時を経て魔力汚染地域フォンタナ領は山や森林が八割方復活し、時のベネドリナ王国第二王子が臣籍降下し、フォンタナ公爵領として賜り領主となりました。


これより後、フォンタナ公爵領は農産畜産に力を入れて王国の食糧庫へと発展していくのですが、逆にベネドリナ王国は王となった第一王子の失政が響き王国の力が弱まりだしました。


さらに百年を経る頃にはベネドリナ王国は国力がますます低下。

王国の食糧庫であるフォンタナ公爵領はフォンタナ公国として独立しました。

そして公国の首都は、位置的にも歴史的にもふさわしい、としてベネドリナ王国の旧王都だった地に置かれたのです。

フォンタナ公国が興った表向きの理由はベネドリナ王家とフォンタナ公爵の不仲による対立ということになっています。


なお、魔物討伐の任はフォンタナ公爵、そして後のフォンタナ公国へと受け継がれました。


それから五十年後、フォンタナ公国が衰退したベネドリナ王国を併合する形を取り、さらにかつて独立した有力諸侯の領地も含む周辺諸国を統一し、フォンタナ王国となったのです。

もちろん公国時代の首都がそのまま王都となりました。

ですから現在の王都はベネドリナ王国の旧王都と同じ場所にあるのです。


そしてベネドリナの名はここで消えました。

なお、ベネドリナの名が消え、王国の名がフォンタナとなることはテオ様から続くフォンタナ一族の悲願でもあったのです。




わたくしの説明を聞いたヴァレリオが感慨深げな表情で言いました。


「国の形というのは六百年も経つと大きく変わるのですね。王都が同じ場所になった経緯もわかりました。でもベネドリナ王家とフォンタナ公爵の不仲というのは、なんとなく裏の事情があるように思います」

「あら、そうですか?」

「はい。第一王子の失政というところは、実際は奸臣が絡んでいたのではないか、と思いました」

「王家の内情というのは一筋縄ではいかないものですからね」

「はい。明暗がはっきりわかれましたし、その後、短期間で公国が興りベネドリナは衰退、そして併合、というのも出来過ぎのような気がします。結局のところ中身は同じフォンタナ一族のままなのですから」

「どうでしょうね。タルティーニ侯爵家はテオ様の時代から続く忠臣ですから、そのあたりの事情について何か記録が残っているかもしれませんよ」

「では殿下に置いていかれている間に、調べてみようと思います」


まだヴァレリオは拗ねているようですね。

それでも目のつけどころは流石です。




ヴァレリオがわたくしの従者になって四年ほどになります。

わたくしたちはずっとさまざまなことを共に学び経験してきました。

今回の討伐期間は十五日ほどを見込んでいますが、わたくしたちがこれほど長く離れ離れになることはこれまでありませんでした。

しかもその理由が魔物討伐。

勇者の子孫でもあるヴァレリオにとって、魔物討伐に参加することの意味は大きいのかもしれません。

それで置いていかれることが不満なのでしょう。



さて、少しでもヴァレリオの気持ちをなぐさめるために、わたくしはどうしましょうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ