第9話 演技終了 前編
「――演技終了よ。全員、間引いてしまいなさい」
一条冷華お嬢様のその冷酷な一言が、大虐殺の号砲だった。
「御意」
俺は一歩、前へと踏み出した。
現代でパシリに行かされ、泥だらけの靴で頭を踏みつけられていた、あの情けないバカ委員長の面影は、もうどこにもない。
瞳から完全に温度を消し去り、ただの【暗殺のプロ】として、襲いかかってくる各クラスの軍勢を見据える。
「死ねよ、バカ委員長ォォォ!」
神に名指しで指名され、調子に乗っていたA組リーダーの男が、最初に特攻してきた。
授かった【聖騎士】のチート大剣を大きく振りかぶり、俺の首を撥ねようと全力で刃を振り下ろしてくる。
大剣が風を切り、俺の額に届く――その直前。
俺は武器を抜くことすらせず、ただ右手の親指と中指を重ね、パチン、と静かに一つ鳴らした。
固有魔法――【因果切断】。
間合いに入ったあらゆる物質の存在理由(因果)をハッキングし、認識させることすらなく、この世界から強制消去するキチガイチート。
「が、は――え?」
次の瞬間、大剣を振り下ろしていたA組リーダーの身体が、走ったままの姿勢で【一瞬で塵となって気化した】。
ガキン、と床に落ちたのは、持ち主を失った大剣だけ。
肉体も、魂も、一滴の血飛沫すら残さず、男の存在そのものが虚空へと完全に消滅した。
「…………は?」
突き進んでいたB組、C組のリーダーたち、そして他クラスの連中が、一斉に足を止め、その場で完全に凍りついた。
あまりにも理不尽で、あまりにも意味の分からない消失。
「いま……何が起きた……?」
「A組のリーダーが一瞬で消えた……? 魔法すら見えなかったぞ……!?」
悲鳴のような呟きが漏れる。
A組クラスメイト達が巻き添えで消えていく。
俺は床に落ちた大剣を静かに踏みつけ、冷徹な声で無線を飛ばした。
『――ハッカー、ターゲットの動揺を確認。敵全体の魔法ネットワークの遮断を開始しろ。ヤンキー、左翼のゴミ共の片付けを任せる』
『了解っす! しゃああ、学生ごっこは終わりだ! たっぷり可愛がってやるよ、元エリートの皆様よぉ!』
ヤンキーが、地響きを立てて爆発的な速度で地を蹴った。
その移動速度は、他クラスのリーダーたちの動体視力を完全に置き去りにしていた。
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