第10話 演技終了 後編
「なっ、消え――」
次に狙われたB組の勇者リーダーが叫ぼうとした瞬間、その目の前に、Xクラスのヤンキーが音もなく出現していた。
ヤンキーの数値は、筋力:【測定不能】。
現代では、一般人を殺してはいけないというルールがあったから、お嬢様をいじめる奴らに対しても、サイレンサー拳銃で不運な事故を装って撃退するしかなかった。
だが、ここは異世界だ。お嬢様の命令は【完全排除】。手加減をする理由は、一ミクロンも残っていなかった。
「おらぁッ!」
ヤンキーが放った、ただの何の変哲もない拳のストレート。
だが、その一撃が放たれた瞬間、玉座の間に凄まじい衝撃波(拳圧)が吹き荒れた。
ドゴォォォォン!!!
「ギャアアアアアッ!?」
「結界が……俺の【絶対防御】の聖結界が一瞬で――!?」
B組のリーダーや周囲の聖騎士が張っていた、あらゆる攻撃を通さないはずのチート結界が、ただのパンチの風圧だけでガラスのように粉々になって粉砕された。
それどころか、衝撃波に巻き込まれた前衛の生徒数十人が、大理石の壁まで吹き飛ばされ、そのまま動かなくなる。
「嘘……嘘でしょ……!? あいつら、ただの落ちこぼれクラスのヤンキーじゃ……!」
後方で魔法を唱えようとしていた、C組のいじめっ子女子リーダーたちが顔を真っ青にして絶叫する。
彼女たちは必死に【大魔導師】の詠唱を始めようとするが、その頭上で、ハッカーが退屈そうに人差し指を上に向けた。
「はい、詠唱コードのジャミング(バグ書き換え)完了。僕の前で、そんなトロい魔法のシステムを使えると思わないでよ」
「え――キャアアアアアッ!?」
女子リーダーたちが放とうとした炎の魔法が、ハッカーのコード改ざんによって強制的に暴発を巻き起こした。
自分たちの放ったチート魔力に包まれ、悲鳴を上げながら自爆していくいじめっ子たち。
玉座の間は、もはや戦いとは言えない、ただの【一方的な間引き】の現場と化していた。
各クラスのリーダーがどれだけ強力なチート魔法や聖剣を持っていようが、キチガイ規格外の数値を持つプロの前では、赤ん坊がオモチャを振り回しているのと変わらない。
「助けて……助けてくれ、一条……! 俺たちが悪かった! 何でも言うこと聞くからぁ!」
生き残った他クラスの男子が、涙と鼻水を流しながらお嬢様の前に這いつくばり、命乞いをする。
だが、一条冷華お嬢様は、白粉で汚された制服のまま、死体の山の上に優雅に腰掛け、召喚された玉座の間の紅茶をすすりながら、冷酷に見下ろした。
「あら。今さら許しをこう必要なんてもうありませんわ。それよりも……」
お嬢様は冷たい瞳のまま、俺の方へと視線を向けた。
「委員長。まだゴミが残っているわよ。綺麗に掃除しなさい」
「御意」
俺は静かに銃を構え、絶望に顔を歪める他クラスの生き残り全員に向けて、照準を合わせた。
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