第8話 サーバーエラーの真実
「おい、なんだよこれ……! 画面がおかしいぞ!?」
他クラスの誰かが引きつった悲鳴を上げた。
玉座の間に立ち込める、息が詰まるほどの重圧。その発信源は、間違いなく目の前にいるXクラスの面々だった。
「ひ、光が……画面がバグってやがる……!」
他クラスの連中が後ずさりしながら俺の前に浮かぶステータス画面を指差す。
そこには、世界の理を完全に超越した、狂気的な文字列が羅列されていた。
名前:近藤 蓮
職業:【???(エラー)】
筋力:【999999】
魔力:【測定不能】
数値がカウントアップを止めず、画面の枠そのものを突き破ってノイズを撒き散らしている。
それは俺だけではない。ヤンキーも、ギャルも、お嬢様も、他の護衛たち全員のステータス画面が、真っ赤なエラーログを吐き出しながら激しく明滅していた。
「な、何なんだよこれ! お前ら、ステータス【1】の無能じゃなかったのかよ!」
「バカな……! 俺はA組のリーダーで【勇者】だぞ!? 攻撃力500のエリートなんだぞ! なんで、なんで数値が読み取れないんだよ!」
さっきまで壇上で俺の頭を踏みつけていた、A組リーダーの男が剣を握る手をガタガタと震わせながら絶叫する。
そんな彼の無様な姿を見つめながら、我がXクラスのハッカーが、魔導画面の文字列を滑らかな手つきで書き換えつつ、クスクスと鼻で笑った。
「言ったでしょ? この世界のセキュリティはゴミ以下だって。僕たちの本気の能力をそのまま表示しちゃったら、世界の処理速度が追いつかなくて、この空間ごとフリーズして消滅しちゃうんだよ」
「は……? 何を言ってるんだ……お前……?」
「つまり、サーバーエラー。僕たちのキチガイじみた強さに世界が怯えて、自動的に【最小値の1】に数値を偽装して、なんとかシステムを維持してただけ。……あはは、バカだねぇ他クラスの皆様。そんなことも分かんないで『ボーナスステージ』だなんて、本当におめでたい頭をしてるよ」
ハッカーの冷酷な言葉が、玉座の間に響き渡る。
各クラスのエリートリーダーたちは、ようやく理解し始めていた。
自分たちが、どれほど取り返しのつかない『バケモノの群れ』の尾を全力で踏み抜いていたのかを。
『――こちら、ハッカー。世界の魔導コードのハッキング、初期段階を完了。お嬢様の命令があれば、いつでもこの国の結界ごとシステムを逆流させられます』
『上出来だ。ヤンキー、戦闘の準備は?』
『いつでもいけるっすよ、委員長。現代では銃を隠して撃つのが面倒だったけど、ここなら魔法って言えば、何やってもバレないっすもんねぇ?』
ヤンキー(戦闘プロ)が首の骨をボキボキと鳴らし、獣のような凶悪な笑みを浮かべる。
俺たちの脳内無線には、お嬢様をパシリにし、俺たちを足蹴にしていた他クラス全員の、現代での罪状データと行動心理予測が、すでに完璧な『殺傷リスト』として表示されていた。
「おい、ひるむな! 画面がバグってるだけだろ! 俺たち各クラスのリーダーはチート能力を貰った最強の勇者たちなんだ! 数だけならこっちが圧倒的に多い! 囲んで殺せえええ!」
恐怖に耐えかねたA組リーダーの男が、B組やC組のリーダーたちに向かって叫び、武器を振り上げて一斉にこちらへ殺到する。
だが、その声は虚しく響くだけだった。




