第4話 超過激 サイレント処刑
お嬢様の教科書が破られた事件から数日。他クラスのいじめっ子女子たちの行動は、ついに一線を越えた。
「ちょっと一条さん、旧校舎の地下備品室に、あなたが落とした生徒手帳があったわよ?」
そんな見え透いた嘘で、放課後の薄暗い旧校舎へと連れ出されたお嬢様。
お嬢様が地下の備品室に入った瞬間、外から重々しい鉄製の扉が閉められ、ガチャン!と激しい音を立てて鍵がかけられた。
「あはは! 明日までそこで反省しなさーい、没落令嬢!」
いじめっ子たちの勝ち誇った足音が遠ざかっていく。
埃っぽい部屋に取り残された一条冷華お嬢様は、怯える演技のまま、耳のインカムに指を触れた。
(――蓮、聞こえる? ゴミ共に見事に閉じ込められたわ。これ、夜になったら全員の家を焼き払っていいかしら?)
『お嬢様、落ち着いてください。今すぐ解放します。……いや、待て。ハッカー、ヤンキー、作戦フェーズを即時移行。お嬢様のいる地下通路に、正体不明の男が2名侵入した。一般の生徒じゃない。この足音の運び、完全にプロの暗殺者だ』
お嬢様の命を狙う、一条財閥の敵組織が放った本物のテロリスト。
彼らは清掃員に変装して学園内に潜入し、偶然いじめっ子たちによって隔離されたお嬢様の居場所を突き止めたのだ。
男たちの懐には、サイレンサー付きの自動拳銃が握られている。
(あら、本物の害虫が迷い込んできたのね。一般人のゴミを処理するよりは、少しは退屈しのぎになりそうだわ)
『お嬢様は部屋の奥の死角へ。――これより、Xクラスの【害虫駆除】を開始する。ヤンキー、ハッカー、防犯カメラの映像を3分間ループ改ざん。廊下の見張りを無力化しろ』
『了解っす、委員長』
地下通路の闇。
テロリストたちが備品室の鍵を壊そうと銃を構えたその瞬間、天井の通気口から俺は音もなく滑り降りた。
「なに――っ!?」
プロの暗殺者がこちらを振り向くよりも早く、俺の手に握られた愛銃が、暗闇の中で冷たく火を噴いた。
パシュッ! パシュッ!
放たれた2発の9ミリ弾。
消音器によって極小に抑えられた銃声の後、弾丸はテロリスト2人の額のど真ん中を完璧に打ち抜いた。
男たちは声も出せずに、ドサリと崩れ落ちる。
「残骸の処理、手伝うっすよ、委員長」
すぐさま影から現れたヤンキー(戦闘プロ)が、二人の死体を一瞬で抱え、通気口の奥へと消え去った。
ハッカーが床の血痕に特殊な消臭・消去スプレーを吹きかけ、秒速で現場を完全隠蔽する。
ガチャン、と俺が外から鍵を解除し、扉が開く。
中から出てきた一条冷華お嬢様は、衣服の埃を優雅に払いながら、床に落ちたテロリストの薬莢を踏みつけた。
「お見事。やっぱり、サイレンサーの音は落ち着くわね」
「お怪我はありませんか、お嬢様。いじめっ子女子たちはすでに校門を出ました。彼女たちは、自分のすぐ後ろで本物の処刑が行われていたことすら、一ミリも気づいていません」
「本当にマヌケな一般人ね。でも、これで少しはヘイトが晴れたわ」
俺たちは再び、何事もなかったかのようにバカな落ちこぼれクラスの仮面を被り直した。




