第23話 天使の襲来
キィィィィィィィン――!!!
鼓膜を引き裂くような高音の羽音が、漆黒の荒野に吹き荒れた。
神の城から飛来したのは、まばゆい白銀の光を放つ、巨大な翼を持った数千もの天使の軍勢。
彼らが手にする槍や剣からは、一般人ならそれを見つめるだけで精神が崩壊するほどの、圧倒的な神聖魔力が放たれていた。
「ひっ……ひぃぃぃ! 本物の天使だ……! あんなの勝てるわけねえだろ!」
「神様! 俺たちはあなたの言う通り一条を殺そうとしただけだ! 助けてくれよぉ!」
最前線に並べられた他クラスの奴隷たちが、迫り来る死の軍勢を見上げてガタガタと震え、涙を流して叫ぶ。
しかし、神の差し向けた天使たちに「会話」は通じない。彼らは無表情のまま光の槍を掲げ、容赦ない殲滅の突撃を敢行してきた。
『――こちらハッカー。天使の個体数、およそ3200。放たれる光エネルギーの総量は、この世界の国家規模の魔導障壁を数秒で焼き切る出力です。まともに喰らったら、一般人なら一瞬で遺伝子レベルまで分解されますね』
『結構。だが、俺たちの前には、頑丈な【人間の防壁(チート勇者)】が数百人も転がっているからな』
俺は、奴隷部隊の最後尾から、首元の呪印を通じて冷酷に命令コードを打ち込んだ。
「前衛、A組・B組の聖騎士部隊、大盾を構えて前へ出ろ。お嬢様の斜線(射撃ルート)の前に立ち塞がり、全ての光の槍をその身体で受け止めるんだ。一歩でも後ろに下がったら、その場で脳の信号を書き換えて自爆させるぞ」
「う、うわあああああああん! 身体が、身体が勝手に前に出るぅぅぅッ!!!」
かつて現代の学校で俺をパシリにし、背中を蹴り飛ばしていたサッカー部の男たちが、絶望の悲鳴を上げながら自分の意志に反して全力で前線へと突き動かされる。
神から授かった【聖騎士】のチート大盾を掲げ、数千の天使の突撃を受け止めるために、強制的に肉盾として立たされたのだ。
「死ね! 不遜なる迷い子どもよ!」
無表情な天使たちの光の槍が、最前線の奴隷部隊へと一斉に突き立てられた。
凄まじい神聖魔力の爆発が、荒野の激しい砂埃とともに吹き荒れる。
ドゴォォォォォォン!!!
「ぎゃああああ、痛い! 身体が、身体が灼けるぅぅぅッ!!!」
「腕が、腕が折れたぁ! もう嫌だ、死なせてくれぇ!」
天使の圧倒的な火力の前に、奴隷勇者たちの身体が次々と血を吹き、骨を砕かれ、文字通り肉を引き裂かれていく。
しかし、ハッカーの少年が仕込んだ【死者蘇生ハック】により、彼らはどんなに致命傷を負っても、首元の呪印が強制的に肉体を再生し、気絶することすら許されずに前線に引き留められる。
「あはは、さすが神様から貰ったチート体力! どれだけ槍で刺されても、なかなか死なないねぇ! ほらほら、後ろにいるお嬢様に一発も攻撃を通しちゃダメだよ? もっと必死に盾を構えなよ!」
回廊の上で魔導画面を叩きながら、ハッカーの少年が心底楽しそうに嘲笑の声を響かせる。
中央に鎮座する冷華お嬢様は、歩く椅子の台座(いじめっ子女子たち)の上で、優雅に紅茶の香りを楽しみながら、その血飛沫が舞う戦場を冷酷に見つめていた。
「素晴らしい防壁ね、委員長。私たちの服に、一滴の返り血すら届いていないわ」
「御意。一般人の皆様のチート能力、これ以上ないほど有効に活用させて(使い潰して)いただいております」
天使の猛攻が荒野を赤く染め上げるなか、Xクラスのプロたちは傷一つ負わず、完璧な無傷のまま、神の居城への第一歩を踏み出した。
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