第16話 神の裏切り
『ケラケラケラケラッ!!!』
頭上の虚空、まばゆい黄金の光の中から、鼓膜を突き刺すような、下品で不快な笑い声が響き渡った。
自らを『神』と名乗る超越者の声だ。
『いやー、つまんない! つまんないよ! もっとさぁ、高校生たちが生き残りをかけて、泥泥に殺し合って泣き叫ぶ姿をエンタメとして楽しみたかったのに! 何なの君たち!? 一瞬で全員殺しちゃうなんて、本当につまんないんだけど!』
神の言葉に、俺は静かに瞳を細め、懐のピストルに手をかけた。
インカムからハッカーの冷たい声が響く。
『――ウルフ(委員長)。神の魔力波長、急激に変動。帰還ゲートを開くための術式コードが、完全に消去されました。こいつ、最初から……』
「……どういうことですの、神様」
お嬢様の声から、完全にニュアンスが消えた。
底知れない狂気が、玉座の間を急速に凍りつかせていく。
だが、神はそんなお嬢様のプレッシャーにも気づかず、駄々をこねる子供のようにスピーカーのような声を響かせ続ける。
『というわけで、約束はナシ! 君たちがあまりにも強すぎてゲームをぶっ壊しちゃったのが悪いでーす! 日本には帰さなーい! 君たちは一生、この異世界で僕の退屈しのぎのオモチャとして生きてね! ケラケラッ!』
あまりにも理不尽な、神の裏切り。
普通の人間なら、ここで世界で一番偉い存在からの拒絶に、絶望し、泣き崩れるだろう。
だが、俺たちのボスの反応は、神の想像とは全く違っていた。
「……はぁ。やっぱり、出来損ないの神風情の言うことなんて、信じるんじゃなかったわね」
一条冷華お嬢様は、大きくため息をつくと、椅子の背もたれにゆったりと身を預けた。
絶望など一ミクロンもない。あるのは、自分の時間を無駄にされたことへの、心底不愉快そうな嫌悪感だけだ。
「ねえ、委員長。この世界から帰るための、もう一つの方法は何だったかしら?」
「は。神が提示したルールB――【神を倒すこと】にございます、お嬢様」
「そう。なら、答えは一つね。――作戦変更よ」
お嬢様は、死体の山を見下ろし、酷薄な笑みを浮かべた。
「あの神を玉座から引きずり降ろして、私たちの『奴隷』に作り替えなさい。……ああ、それから、そこに転がっている他クラスのゴミ共。ただの死体にしておくのは、兵力として非常にもったいないわね」
お嬢様が指をパチン、と鳴らす。
「委員長。さっき殺した奴らを全員、絶対服従の奴隷(肉盾)として生き返らせなさい。――神を殺しに行くわよ」
「御意」
俺は深く頭を下げ、再び瞳に凶悪な殺意を宿した。
神様は自分の退屈しのぎのために俺たちを閉じ込めたつもりだろうが……自分が【怒らせてはいけない最悪のキチガイプロ集団】を怒らせたことに、まだ気づいていなかった。
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