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第13話 重力反転



「もう終わり……? 俺たちのチート能力が、こんな、こんなバカなことで……」


 広場に生き残った他クラスの連中は、もはや数十人程度にまで激減していた。

 彼らは味方の死体の山の中で、完全に戦意を喪失し、ガタガタと震えながら結託して身を寄せ合っている。

 そんな生き残りたちの前に、お嬢様を警護するXクラスの頭脳系プロ(軍師枠)の男が、静かに歩み出た。


「さて。ネズミの間引きも、これで最終段階ですね。数が減って密集してくれたおかげで、非常に効率的な処理が可能となりました」


「な、何をする気だ……!? もう俺たちは戦う気はない! 降伏する! 降伏するから助けてくれ!」


 他クラスの生き残りが涙を流して命乞いをする。

 だが、軍師プロの男は、眼鏡の奥の瞳を冷酷に光らせ、魔導画面に巨大な数式を展開した。

 彼の真のステータス――知力:【垓(がい)】。


「降伏、ですか。お嬢様の命令は【完全排除】ですので、却下します。……ハッカー、このエリアの物理法則コードの書き換え、制限を解除しろ」

『了解です。重力(グラビティ)・システムの書き換え、いつでもいけますよ』


 軍師プロが、静かに人差し指を上へと向けた。

 固有ハック魔法――【重力反転(グラビティ・バグ)】。


「――反転」


 パチン、と指が鳴らされた、その瞬間。


「え……? 身体が、浮――」


 ドクン、と空間の空気が歪み、他クラスの生き残り数十人の身体が、突如として地面から離れて静かに宙へと浮かび上がった。

 どれだけ足掻いても、異世界のチート魔法を使おうとしても、重力のベクトルそのものが【真上】へと書き換えられているため、一切の抵抗が通用しない。


「うわあああ!? 天井に向かって落ちていく!?」

「助けて! 足が地面につかない! 上がっていくんだよ!」


 生き残りたちは悲鳴を上げながら、神殿の吹き抜けの天井へ向かって、凄まじい速度で「落下」していった。

 上空、数百メートル。いや、ハッカーの魔力増幅により、彼らは神殿の天井を突き破り、上空数千メートルの雲の上まで、一瞬で強制的に打ち上げられたのだ。


 上空数千メートル。酸素もなく、極寒の地上。

 元エリートたちは、何が起きたかも分からず、ただ恐怖のなかで凍りつきながら宙を舞う。


 そして、軍師プロの男が、向けた人差し指をゆっくりと地面へと振り下ろした。


「――解除」


 その一言で、上空数千メートルで反転していた重力が、一瞬で【本来の真下】へと戻される。

 重力コードの通常化。


「いやああああああああああああああッ!!!」


 雲の上から、地上へ向けて、凄まじい速度で自由落下してくる他クラスの生き残りたち。

 位置エネルギーと重力加速度。


 ヒュオォォォォォ――!!!という凄まじい風切り音の後。


 ドガガガガガガガガシッ!!!


 神殿の中央広場に、肉塊が激しく叩きつけられる、鈍く凄惨な音が連続して響き渡った。

 上空数千メートルからの激突。

 神から与えられたチート能力など何の意味もなさず、彼らの身体は一瞬で原形を留めない肉片へと変わり、広場を真っ赤に染め上げた。


 これで、Xクラス以外のすべてのクラスが、文字通り【一人残らず完全消滅】したのだ。


「ふふ、素晴らしい大掃除ね。お見事だわ、あなたたち」


 真っ赤に染まった広場の中心で、お嬢様は傷一つない優雅な姿で、勝利の微笑みを浮かべていた。


読んでいただきありがとうございます!

次回もお楽しみに!

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