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神様レビュー★1「世界の運営が雑すぎます」  作者: 海老崎 伊織
第1章 ★1レビュー、神様に届く
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2/10

第2話 ★1を付けたら神様が家に来た

★1レビューを送った翌朝。


豪雨は消え、信号機は直り、事故の原因まで別のものに書き換えられていました。


しかも、改変前の世界を覚えているのは悠斗だけ。


そんな彼のもとへ、レビュー対応のため神様が直接やって来ます。


ただし、その神様は少し頼りない新人でした。


第2話、どうぞお楽しみください。

 レビューを送信した翌朝。

 神崎悠斗が病室のカーテンを開けると、昨日までの豪雨が嘘のような青空が広がっていた。

「……晴れすぎだろ」

 雲一つない。

 窓ガラスには雨粒の跡すら残っていなかった。

 遠くに見える街路樹は、強い日差しを浴びて輝いている。昨日の夜、道路が冠水しかけるほど雨が降ったとは思えない光景だった。

 悠斗はベッドの脇に置いていたスマートフォンを手に取った。

 まず天気予報を確認する。

 昨日の天気は、朝から晩まで晴れ。

 降水量はゼロミリ。

「……は?」

 画面を何度も更新する。

 結果は変わらない。

 気象庁の観測記録にも、民間の天気予報サイトにも、昨日の豪雨は記録されていなかった。

 SNSで地域名を検索してみる。

 豪雨。

 雷。

 冠水。

 信号機故障。

 どの単語で検索しても、昨日の出来事らしい投稿は出てこない。

 悠斗は投稿日時を指定し、さらに検索範囲を広げた。

 それでも、雨に関する投稿は一件も見つからなかった。

 昨日、コンビニの軒下にいた人々は、何人もスマートフォンで動画を撮っていた。

 少なくとも一件くらい、投稿されていてもいいはずだ。

「全部、消えたのか……?」

 悠斗は自分のメッセージ履歴を開いた。

 事故直後、会社の同僚から届いていたはずの連絡も変わっていた。

 昨日の夜に受信したメッセージには、こう書かれている。

『信号無視のトラックに巻き込まれたって聞いたけど、大丈夫か?』

「信号無視?」

 事故のとき、信号機は故障していた。

 赤信号も青信号も表示されていなかった。

 そもそも信号を無視しようがない。

 悠斗は同僚へ返信する。

『信号機が消えていたんじゃなかったか?』

 すぐに既読が付いた。

『何言ってるんだ? 信号は普通に動いてたらしいぞ』

『警察もそう言ってた』

『頭打った影響じゃないか?』

 悠斗はスマートフォンを握ったまま、しばらく動けなかった。

 警察の記録まで変わっている。

 事故そのものは残っているが、原因だけが書き換えられている。

 悠斗が少年を助けたこと。

 トラックが急停止したこと。

 悠斗が転倒して病院へ運ばれたこと。

 それらは事実として残っている。

 しかし豪雨も、信号機の故障も、遅れて届いた警報も、すべて最初から存在しなかったことになっていた。

 そんなことが可能なのか。

 普通に考えれば、悠斗の記憶がおかしい。

 脳震とうによって、存在しない出来事を現実だと思い込んでいる。

 医師なら、そう判断するだろう。

 だが悠斗には証拠があった。

 スマートフォンの画面に、黒い背景と金色の星が描かれたアイコンが残っている。

 GOD REVIEW。

 アプリを開く。

 昨日投稿したレビューには、新しい表示が追加されていた。

 ★☆☆☆☆

 豪雨と交通設備の故障が同時発生しています。

 過去にも同様の報告がありますが、現場では改善されていません。

 対応済みではなく、天候管理局と交通運命管理局で原因を確認してください。

 その下に、赤い文字で処理結果が表示されていた。

 《改善対応を実施しました》

 《天候管理局:局地的豪雨の発生記録を修正》

 《交通運命管理局:信号設備の障害を修正》

 《関連する因果関係を再構築しました》

「因果関係を再構築……?」

 嫌な言葉だった。

 不具合を修正したのではない。

 不具合が起きた事実そのものを、なかったことにしている。

 しかも悠斗以外の記憶まで書き換えられている。

 画面の一番下には、担当部署からの返信が付いていた。

 《貴重なご意見ありがとうございました》

 《本件は対応済みです》

「またそれかよ」

 悠斗は思わず声に出した。

 これでは改善というより、証拠隠滅に近い。

 たしかに信号機は復旧し、豪雨も止まった。

 事故の原因は取り除かれた。

 しかし、なぜ同時に障害が発生したのか。

 根本的な原因は何だったのか。

 今後、同じ問題が再発しないのか。

 何一つ説明されていない。

 ただ現実を書き換え、「対応済み」の札を貼っただけだ。

 悠斗は再びレビュー投稿画面を開く。

 評価を★二つにするか、★一つのままにするか。

 指を置いたところで、病室の扉が開いた。

「神崎さん。検査の結果が出ましたよ」

 担当医が入ってくる。

 悠斗は慌てて画面を閉じた。

「脳には特に異常ありません。今日中に退院していただいて大丈夫です」

「先生、一つ聞いてもいいですか?」

「はい」

「昨日、この辺りで豪雨が降りませんでしたか?」

 医師は不思議そうな顔をした。

「豪雨ですか?」

「事故の直前です。雷も鳴っていて、信号機も消えていました」

「昨日は一日晴れていましたよ」

「でも、俺は全身ずぶ濡れで運ばれたはずです」

 医師は手元の記録を確認する。

「救急隊の記録では、水たまりに転倒したため衣服が濡れていたとあります」

「水たまり?」

「近くで水道管の漏水があったそうです」

 新しい原因まで用意されている。

 悠斗は額を押さえた。

「やはり、記憶が混乱していますか?」

「軽い脳震とうのあとですから、記憶が曖昧になることはあります。気になるようでしたら、しばらく様子を見ましょう」

「……分かりました」

 医師を問い詰めても仕方がない。

 彼も書き換えられた現実の中にいる。

 おそらく、本気で昨日は晴れていたと思っているのだ。

 医師が病室を出たあと、悠斗はもう一度GOD REVIEWを開いた。

 レビュー一覧の上部に、小さな通知が表示されている。

 《初回レビュー特典を付与しました》

「初回特典?」

 嫌な予感しかしない。

 通知を押す。

 《世界改変前の記憶保持機能》

 《レビュー投稿者は、変更前の世界を記憶できます》

「やっぱり変えたのか……」

 現実そのものを。

 悠斗は小さく息を吐いた。

 冗談や悪質なアプリではない。

 GOD REVIEWは、本当に世界の運営者へつながっている。

 そして、その運営者は、人間の記憶や歴史まで簡単に変更できる。

 悠斗は昨日の投稿を見つめた。

 たった一件のレビューで、この規模の改変が起きた。

 もし軽い気持ちで何かを書けば、もっと大きな影響が出るかもしれない。

 もう使うべきではない。

 そう思う一方で、疑問も残っていた。

 なぜ自分にだけ、このアプリが表示されたのか。

 なぜ自分のレビューが、世界を書き換えるほどの力を持っていたのか。

 そして、レビューを受け取った相手は、本当に神なのか。

     ◇

 退院手続きを終えた悠斗は、事故現場へ立ち寄った。

 問題の交差点では、信号機が正常に動いている。

 赤。

 青。

 黄色。

 昨日、完全に消えていたことなど想像もできない。

 道路には冠水の跡もなく、コンビニも通常どおり営業していた。

 悠斗は横断歩道の前に立つ。

 そこへ、見覚えのある親子が歩いてきた。

 黄色い傘を持っていた少年と、その母親だった。

 今日は傘を持っていない。

 母親が悠斗に気付き、深く頭を下げる。

「あの、昨日は息子を助けていただいて、本当にありがとうございました」

「いえ。無事でよかったです」

「トラックが信号を見落としたみたいで……。あなたがいなかったら、この子は……」

 女性は途中で声を詰まらせた。

 少年も悠斗を見上げる。

「お兄ちゃん、ありがとう」

「もう急に道路へ出たら駄目だぞ」

「うん」

 悠斗は少年の頭を軽く撫でた。

 助かったという結果は変わっていない。

 それだけは、素直によかったと思う。

「昨日、すごい雨でしたよね」

 悠斗はそれとなく尋ねた。

 母親は首をかしげる。

「雨?」

「事故のときです。急に豪雨が降ってきて」

「昨日は晴れていましたよ」

 少年も言う。

「雨なんて降ってないよ」

「……そうだよな」

 分かっていた。

 それでも、実際に本人たちから言われると背筋が寒くなる。

 事故に巻き込まれた当事者の記憶まで変えられている。

 母親と少年が立ち去ったあと、悠斗は信号機を見上げた。

 正常に動いている。

 だが、それが本当に正常なのかは分からない。

 世界の運営者が「正常だったこと」にしただけかもしれない。

     ◇

 その日の夜。

 悠斗は自宅のワンルームマンションに戻っていた。

 左肩にはまだ痛みが残っている。

 病院からもらった薬を飲み、夕食にコンビニのおにぎりを食べる。

 事故に遭った翌日とは思えないほど、部屋はいつもどおりだった。

 テレビでは、昨日の交通事故について短いニュースが流れていた。

『昨夜、東京都内の交差点で、信号を無視した大型トラックが横断歩道へ進入しました』

 画面には、事故現場の映像が映る。

 空は晴れている。

 路面も乾いている。

 監視カメラの映像まで書き換えられていた。

『なお、通行人の男性が児童を救助し、軽傷を負いました』

 悠斗はテレビを消した。

「もう何でもありだな」

 スマートフォンには、GOD REVIEWから新しい通知が何件も届いている。

 《レビューへの「参考になった」が一件付きました》

 《関係部署から改善完了報告が届いています》

 《担当者との面談を調整しています》

「面談?」

 通知を開こうとした、そのときだった。

 部屋の照明が一度だけ点滅した。

「停電か?」

 悠斗が天井を見上げる。

 照明は正常に点いている。

 次に、部屋の中央の空間が歪んだ。

 透明な水面へ石を落としたように、空気が波打つ。

 青白い光の輪が広がり、その中心から白い靴が現れた。

「……は?」

 靴。

 細い足。

 白と青を基調にした衣装。

 腰まで伸びる銀色の髪。

 少女が、光の中からゆっくりと降りてくる。

 年齢は二十歳前後に見える。

 青い瞳。

 整った顔立ち。

 頭上には、淡く光る小さな輪が浮かんでいた。

 少女は床へ着地する。

 そして、盛大に足を滑らせた。

「きゃっ!」

 床に置いてあった雑誌を踏み、そのまま前方へ転ぶ。

 悠斗は反射的に体を伸ばしたが、左肩に痛みが走った。

「痛っ!」

「申し訳ございません!」

 少女はぎりぎりでテーブルにつかまり、転倒を免れた。

 頭上の輪だけが遅れて傾く。

 数秒の沈黙。

 少女は乱れた銀髪を整え、何事もなかったように姿勢を正した。

「初めまして、神崎悠斗様」

「今のをなかったことにするつもりか?」

「初めまして、神崎悠斗様」

「やり直した」

 少女の頬がわずかに赤くなる。

「私は神界レビュー管理部所属、受付担当神のアリアと申します」

「神界……?」

「はい」

「レビュー管理部?」

「はい」

「担当神?」

「はい」

 悠斗は目の前の少女を見つめる。

 銀髪。

 発光する輪。

 空間から出現。

 手の込んだ不審者では説明しにくい。

「つまり、神様?」

「厳密には神界運営機構に所属する下位管理神です。現在は研修期間中ですが、正式な神です」

「新人ってことか」

「新人ではありません。研修中です」

「ほぼ同じだろ」

 アリアは小さく咳払いをした。

「本日は、神崎様が投稿されたレビューについて確認に参りました」

「昨日の★1か」

「はい」

 アリアの表情が強張る。

 どうやら神様にとって、★1という言葉はかなり重いらしい。

「改善されたのは確認した」

「ありがとうございます」

「でも、直し方が雑すぎる」

「えっ」

「豪雨も信号機の故障も、起きなかったことにしただろ」

 アリアの視線が泳ぐ。

「それは……迅速な改善対応です」

「事故原因を別のものに書き換えて、全員の記憶まで変えるのが?」

「利用者への混乱を最小限に抑えるための、標準的な処理となっております」

「隠蔽の標準化じゃないか」

「隠蔽ではありません!」

 アリアは慌てて否定する。

「不具合の原因となった過去を修正し、正常な状態へ復旧したのです」

「原因は分かったのか?」

「はい?」

「なぜ局地的豪雨と信号機故障が同時に起きた?」

 アリアは黙る。

「再発防止策は?」

「……現在、確認中です」

「影響範囲は?」

「調査中です」

「同じ障害が別の地域で起きる可能性は?」

「担当部署からの報告待ちです」

「何も解決してないだろ」

 アリアは完全に言葉を失った。

 悠斗はスマートフォンを見せる。

「対応済みになっている。でも実際は、表面上なかったことにしただけだ。原因調査は終わっていない」

「ですが、現在は雨も止まり、信号設備も正常に作動しています」

「それは復旧であって、原因解決じゃない」

「復旧と解決は違うのですか?」

「神界のレビュー管理部は、そこからなのか……?」

 悠斗は頭を抱えた。

 世界を運営する神々なら、人間よりも遥かに優秀だと思っていた。

 実際には、問題が発生したら一度消し、見た目だけ正常に戻して対応済みにする。

 下手な運営会社よりひどい。

 アリアは気まずそうに視線を落としたあと、意を決したように悠斗へ向き直った。

「それでも、お願いがございます」

「何だ?」

 アリアは姿勢を正す。

 両手を体の前で重ねる。

 そして、深々と頭を下げた。

「神様への★1レビューは、できるだけ控えていただけませんか?」

「……理由は?」

「神界が大変なことになるからです」

「具体的には?」

「緊急会議が開かれます」

「開けばいいだろ」

「関係部署全員に改善報告書の提出義務が発生します」

「提出すればいい」

「責任者の評価が下がります」

「問題を放置したなら当然じゃないか?」

「予算も削減されます」

「評価が低い部署の予算を削ったら、余計に改善できなくならないか?」

「……たしかに」

 アリアは素直に納得した。

「いや、そこは今気付くところじゃないだろ」

「神界には神界の事情があるのです!」

「人間界にも人間界の事情がある。昨日は子どもが死にかけた」

 アリアの表情が曇る。

「その件については、申し訳なく思っています」

「俺が言いたいのは、誰かを罰したいってことじゃない。次は事故が起きないようにしてほしいだけだ」

「ですが、★一つはあまりにも厳しすぎます。せめて★三つくらいに……」

「改善されたら評価は変える」

「本当ですか?」

 アリアが顔を上げる。

「ただし、原因調査と再発防止まで終わったらな」

「……条件付き」

「レビューなんだから当たり前だろ」

 アリアは困った顔で黙り込む。

 悠斗は素朴な疑問を口にした。

「そもそも、どうして俺のレビューだけ大騒ぎになる?」

 GOD REVIEWには、何十億件もの投稿があった。

 その大半が対応済みという形で放置されている。

 悠斗の一件だけ、なぜ神界全体へ警報が鳴るのか。

 アリアは答えようとして、口を閉じた。

「言えないのか?」

「私にも分かりません」

「担当者なのに?」

「神崎様のアカウント情報は、私の権限では閲覧できませんでした」

「新人だから?」

「研修中です!」

「同じだろ」

 アリアは唇を尖らせる。

「ただ、通常のレビューとは違います。神崎様の投稿には、特級という識別情報が付いていました」

「特級レビュー?」

「神界の記録上、過去に一度も使われていない区分です」

「一度も?」

「はい。少なくとも、現在の神界運営が始まってからは」

 悠斗はスマートフォンを見る。

 自分が何気なく送ったレビューが、前例のないものだったらしい。

「では、改めてお伝えします」

 アリアが表情を引き締める。

「私は本日より、神崎悠斗様の専属受付担当兼、監視役を命じられました」

「監視役?」

「神崎様が危険なレビューを投稿しないよう、行動を確認します」

「俺のプライバシーは?」

「神界規約により、必要な範囲で観察させていただきます」

「今すぐ帰れ」

「困ります! これは業務命令です!」

「じゃあ、せめて玄関から来い。人の部屋に直接転移するな」

「人間界の移動規則までは、研修で習っておりません」

「本当に研修中なんだな」

「正式な神です!」

 狭いワンルームに、銀髪の神様の声が響く。

 悠斗は深くため息をついた。

 事故に遭い、世界が書き換わり、今度は神様が部屋へ押しかけてきた。

 昨日までの普通の生活が、急速に遠ざかっている。

「一つ確認する」

 悠斗はアリアを見る。

「今後、世界でおかしなことを見つけたら、このアプリで報告できるんだな?」

「可能ですが、なるべく評価は高めに――」

「問題がひどければ★1を付ける」

「ですから、それを控えていただくために私が来たんです!」

「改善すれば付けない」

「正論で押し切らないでください!」

 アリアの悲鳴を聞きながら、悠斗は思った。

 神様にもレビュー欄がある。

 そして、どうやら神様は低評価にとても弱いらしい。

     ◇

 同じ頃。

 神界の中央運営会議室では、天候管理局と交通運命管理局の責任者が向かい合っていた。

 巨大な円卓。

 周囲には数十人の神々。

 中央の画面には、悠斗の★1レビューが大きく表示されている。

 青い髪を無造作に伸ばした天候神レインは、眠そうな目で画面を見上げた。

「信号が壊れたのは、交通運命管理局の責任でしょ」

 向かいに座る黒髪眼鏡の運命神フェイトが、即座に反論する。

「局地的豪雨がなければ、設備障害は発生していない」

「信号機が雨で壊れる設計なのが悪い」

「百年に一度の雨量を、予告なく一点へ集中させるとは想定していない」

「降水量の計算は合ってた」

「時間単位が『一か月』ではなく『一時間』に設定されていた」

「入力欄が分かりにくいのが悪い」

「入力したのは君だ」

「確認したのはそっち」

「承認画面には『天候管理局確認済み』とあった」

 二柱の神が同時に相手を指差す。

「そっちの責任!」

 会議室にいた神々が、揃ってため息をついた。

 中央画面から、無機質な音声が流れる。

 《レビュー投稿者より、原因調査と再発防止策の提示を求められています》

 レインは机に突っ伏した。

「もう対応済みにしたのに……」

 フェイトが眼鏡を押し上げる。

「記憶も記録も修正した。人間側から追加の苦情が出る可能性はない」

 画面が赤く点滅する。

 《特級レビュー投稿者は、変更前の世界を記憶しています》

 レインとフェイトの動きが止まる。

「聞いてない」

「私も初耳だ」

 さらに、新しい通知が表示された。

 《再レビューの可能性があります》

 会議室が静まり返る。

 レインが顔を上げる。

「再レビューって何?」

 フェイトは画面を見つめたまま答えた。

「おそらく……もう一度、評価される」

「また★1を付けられるってこと?」

「可能性はある」

 レインの顔から血の気が引く。

 神界中に、再び小さな警告音が鳴った。

 《担当部署は、四十八時間以内に改善計画を提出してください》

 レインとフェイトは、再び同時に相手を指差した。

「報告書はそっちが書いて!」

 神界の長い夜は、まだ始まったばかりだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


世界の不具合を直すのではなく、起きなかったことにして「対応済み」。


どうやら神界の運営は、悠斗が思っていた以上に雑なようです。


そして悠斗の監視役として、新人神アリアが人間界へ派遣されました。


★1を控えてほしいアリアと、問題があれば遠慮なく指摘する悠斗。


次回、第3話

「毎朝遅れる電車は仕様です」


一人の遅刻を防ぐため、数千人が毎朝巻き込まれていました。

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