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異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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新たな使い方


 騎士団にはユニオン側が工作によって盛った毒を無力化する術があるようなことを騎士達は言っていた……魔法か薬か分からないが、とにかく騎士が少しずつ集まりつつあった。

 騎士が十数人いた段階で拮抗していたのに、今はもう三十人程まで増えている。


「攻撃は緩めるな!圧をかけ続けるんだ!」


 怒号が飛ぶ。

 こちらが取れる行動はとにかく攻撃すること。透明なバリアを出させている瞬間は動きが止まり、同時に攻撃をしてくることはあまりない。多少の負担にはなっているはずだ。

 しかし、有効打たり得ない。遠距離攻撃で沈んだ騎士は一人もいないのだ。


 では、近接攻撃はどうかと言うと、実は有効ではある。どうやら飛翔体を弾く効果はあっても直接振るわれた槍や刃物はバリアで防ぐことはできないみたいだ。

 数多の姫葉ちゃんを犠牲にするクローンゾンビアタックで二人ほど騎士を殺したことで判明した。

 しかし、それが分かったところで騎士に対抗するのは難しい。そもそも筋力面、技術面両方におい力量差があり過ぎるのが原因だ。これは俺が強化したところで埋まらなかった。異世界人には個人で勝つことは出来ない。

 騎士を正面から殺したことで姫葉ちゃんが警戒されてるのも痛い。見つかると明らかに狙われるので迂闊に前に出ることが出来なくなっている。


「大技が来る!退避!」


 号令が出る。


「千秋走れ!」


 俺は手を繋いだままの千秋と、ユニオンの誰かが作ってくれた即席の塹壕に潜り込む。……ほとんど俺が引きずられるような形だが、おかげで助かった。

 千秋の手にはこれまでにないくらい力が入っており、俺を守りたいという強い意志を感じることが出来た。嬉しいやら情けないやらだが、好意には報いないとな……。


「優希、大丈夫?」


「ああ、助かった。ありがとう」


 手を繋いでいることで片手が塞がっているが、どうせ出来ることは強化くらいしかないからな。俺も能力の使えない千秋を見失うのは怖かったから都合がいい。


 俺は近くの人達に強化を掛け直しながら、敵の攻撃をやり過ごす。

 風の魔法と火の魔法による熱風だ。直撃すると全身を火傷し動けなくなり、受け続ければ簡単に命を落とすだろう。何人かやられており、正直見るのも辛い状態になる。

 広い範囲への攻撃ゆえか準備に時間がかかるようで、それほど頻度が多くないのが救いだ。


「攻撃再開!」


 また這い出て攻撃が再開される。周辺の地面は焼け焦げているが、水やら風やらの能力で冷やされてすぐに動けるようになる。

 俺もバフ要員として前に出なくては……近接戦が難しいとはいえ身体能力が上がることで生存率はぐっと上がるはずだ。怠けることは出来ない。


 だが、先に塹壕内の人達全員に強化をかけておく。ここには治療能力や指令、観察などを得意とする能力の人達が固まっていて、同様の理由から強化はしておきたい。

 塹壕は現在進行形で広がり続けており、幾つかの能力によって協力して穴が掘られ、壁が作られ、整えられていく。……なんとも不思議な光景だが、確かな技術を見ることが出来て面白い。


 塹壕が騎士団相手に有効だったのも幸運だったな。

 異世界の歴史ではどのような戦術の変遷を辿ったか分からないが……魔法のある世界だ、地球の戦術の攻略法を熟知しているということも無かろう。

 初めの頃は水攻めや氷攻めなどもされていたが、こちらは排水構造もバッチリで能力によって快適性も十分だ。

 多少崩されてもすぐに修復できるし、もはやちょっとやそっとじゃ崩されない要塞と化していた。


 騎士団は固まって背中合わせに隊列を組んでおり、それを囲み円を描くように塹壕が作られていく。ラインを引くというより囲みに行っているのも騎士団が攻めあぐねている要因かもな。


 俺は広めに幅を取られている塹壕内を歩き回り、強化をかけていった。途中でロリ姫葉ちゃんにも強化をしたのだが、相変わらず良い印象は持たれておらず、肌を触らせるのも渋々と言った感じだ。

 軽蔑され続けるのは辛いが、印象を変える方法が思いつかない。……あながち誤解ということでも無いので強く出れないのだが…………まぁ、近接戦メインの姫葉ちゃんとは相性が良いはずだから今は我慢してもらおう。


「よし、こんなもんか……千秋ここで待ってた方が安全だぞ?大丈夫か?」


 本音を言えば学校の敷地外に退避していてほしいくらいだが……。


「ううん、優希と一緒がいい。ちあきが優希を守りたい」


 ……千秋はこのマインドだからな……。なんなら本当に千秋に守られてるから俺から言えることは何も無い。


「んじゃ、行くか」


「うん!」


 俺たちは周囲のユニオンメンバーに強化を配るべく、ジャンプして塹壕から出る……が、千秋に腕を引かれて想像以上に高く跳んだ。

 …………いや、跳びすぎ!


「わ、わっ!」


 千秋があたふたして、手をバタつかせている……いや、お前が引っ張ったんやろがい!

 空中で千秋を抱えてなんとか着地する。15メートルは跳んでたな……周りからジロジロ見られた……なんなら数人の騎士もこっちを見ている。


「千秋、戻るぞ!仕切り直しだ!」


「う、うん」


 俺はバッファーだ。目立って良いことなどない。一度塹壕に戻って別の地点から外に出よう。

 千秋を抱えたまま塹壕に飛び込んだ。


「……千秋、張り切るのは良いが、目立たない方が助かる」


「……ご、ごめんなさいっ、ちあき、そんなつもりじゃなくて……」


 力んでしまったのだろうか……まぁそうだよな……。直接やってはいないとはいえ、殺し合いだ……負担は大きいはず。

 ぎゅっとつないだ手は離されることはなく、力強く握られている。これは恐怖を紛らわせているという面もあるんだろうか……。

 ……いや、今更だけど強すぎんか?……意識するとだいぶ痛い。握られてるところ白くなってるし。


「千秋、ちょっと手離せるか?」


「え…………分かった……」


 離してもらい少し休憩する。ずっと手を繋いでだから無意識のうちに強くなってたか?


「優希、ここにいたんだね。探した」


 手をマッサージしていたら腕に絡みつかれた。六花だ。

 そういやだいぶ前に強化を施したのを最後に会ってなかったな。塹壕戦がメインになりつつあるから、味方の把握も難しいし……この戦場での合流は期待しない方がいいと思っていたが。

 恐らくさっき跳びあがったのを見てこっちに来たんだろうな……相当目立ってたようだ。


「六花か……大丈夫だったか?」


「うん大丈夫」


 六花に強化を掛け直していると後ろから春華と賢斗も近づいてきた。


「刃山さん、千秋ちゃん、無事でしたか!」


「ああ、なんとか……二人にも強化を掛け直しておこう」


「助かるわ」


 六花に絡みつかれながら二人にも強化を施し直す。動きづらいから脚を絡めないでほしいんだが……。


「むぅ……」


 六花を見ていた千秋は、不満そうな声を上げて同じように抱きついてくる。


「ぐえっ!」

「いた……」


 しかし、思ったより強い抱擁……もといタックルに六花共々尻餅をついてしまった。


「あ……ご、ごめんなさい……大丈夫?」


「あ、ああ……」


 思わず力が入ってしまったといった様子だ。

 ……またか。


「まったく……こんな時に何やってるのよ」


「うぅ……」


 いや、ほんとに……。しょんぼりしている千秋を見やる。

 そんなつもりじゃなかったのに……そう言いたげだ。

 どうしたんだろうか……まるで自分の力をコントロール出来ていない赤ん坊だ。

 …………ふと、かつての腕相撲大会を思い出した。能力検証のために腕力勝負をした訳だが、みんな自分の力に戸惑っていた。

 懐かしいな……みんな元気だろうか。凛と響は無事かな……二人でなんとか助け合って生き延びてくれてると嬉しいんだが。


 ……いや、今重要なのはそこじゃ無いか。要は能力を把握できていなかったあの頃の女の子達に今の千秋は似ているということだ。

 自分の力に戸惑っている……そこまで考えて試したいことが出来た。


「なあ、六花……ちょっと千秋と力比べしてくれないか?押し合うだけでいい」


「んえ?……いいけど……なんで?」


「いいから、頼むよ。千秋も、頼む。」


 とある推測。ほとんど妄想だが……これが正しければ今の状況を打開できるかもしれない。

 こんな大変な時にやることでは無いとは思うが、試させてほしい。疑問に思いながらも千秋と六花は手を合わせて押し合う。


「え?……わわっ」


 結果としては、六花が押されて尻餅をついた。千秋はまたも自分の力に困惑している様子だ。

 条件が違うということはなく、どちらにも強化を施したばかりだ。それなのに千秋の筋力は明らかに強い。それもここまでの差が出るくらいに。


「刃山さん、どういうことですか?」


 賢斗は種明かしを求めている。が……


「ああ……説明する前に、すまんがもう一つ実験に付き合ってくれ」


 次は春華と賢斗に押し合ってもらう。今度は拮抗した。若干春華の方が押してるか……まぁつまりはほぼ同じくらいの筋力だということだ。さっきの千秋と六花ほどの差はない。


「賢斗、手を貸してくれ」


「はぁ……」


 俺は差し出された賢斗の手を握り、強化を付与する。しばらく手を離さず、ずっと。


「あの……刃山さん?」


「もう少し」


 変な空気が流れ始めたところで手を離した。強化し始めて大体一分くらいだろうか。


「よし、春華ともう一度押し合ってみてくれ」


 さて、結果は…………


「えっ?ちょ、強い……!賢斗、力強くなってるわ!」


 ビンゴだ。賢斗の腕力の上昇を確認できた。


「刃山さん?」


「ああ、説明する」


 俺は実験から得られた情報を共有する。

 ……といっても単純で、要は俺の能力の使い方が増えたということだ。


 俺の能力は他人に触れて強化を施すと、その人の筋力を高めることができる、というものだ。

 今までは触れて強化してそれで終わりだったので、ずっと触れ続けるということをしてなかった。触り続けるのもどうかと思ったしな。

 しかし、今回は意図的に触れ続けて強化をしてみたわけだが、そうすることにより触れてすぐ離れるよりも筋力の上昇値が高い、という結果になった。

 強化効果が切れる前に再度強化をかけても、効果時間の更新くらいしか出来ていなかったので、重ねがけは出来ないと思っていたが……肝は触れ続けるというところだ。

 ずっと千秋と手を繋いだまま強化をかけてまわっていたから、図らずもこの条件に合致したというわけだ。


「なるほど……つまり、筋力においては騎士達に勝ることが出来るかもしれないということですね……」


「優希すごいっ!」


「優希、えらい」


「……でも、一度にそんなに強化もできないわよね?刃山さんに長時間触れ続けられる人数も限度があるし……」


「ああ、そうだな……それに具体的にどれくらいかけ続けないといけないのかも分からないし、上限も分からない」


 たった今判明した俺の能力の仕様だからな……。じっくり検証したいところだが、今は作戦中だ。そこまで悠長にやってられない。


「じゃあどうするのよ」


「……一つ、考えがある」


 実験中に運用方法を思いついていた。これが実現したら騎士達に勝てるかもしれない。

 

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