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異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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56/61

戦場へ


 見張りを立てられていた外の倉庫を開けると、そこには千秋と六花がいた。


「ゆ、優希ぃっ!」


「ぐぇっ!」


 千秋が俺の名前を呼び、タックルをかましてくる。……元気に笑う顔から察するにネイの言った通り、捕まえて牢に入れる以外には何もされていないようだ。とりあえず一安心。


「優希、ごめん……捕まっちゃった……」


 六花は申し訳なさそうにして手を握ってきた。俺の腕を抱きしめながら、ことのあらましを話し始めた。

 と言っても、抱き合って寝ていたらいつの間にか拘束されていた、というだけのことだが。

 しかし、特筆すべき点もある。気づいた時には能力が使えなくなっていたことと、いくら俺に呼びかけても起きなかったことだ。

 異世界魔法です、と言えばそれまでだが、能力を使えなくする術を異世界人が持っているというのは、考慮しなければならない。


「多分これのせい」


 六花は腕に付けられている光るブレスレットを見せてくれた。なんともファンタジックな見た目のブレスレットだ。特に装飾もなく、ただただ白く光っている。

 確かネイの部下が六花達を襲っていた騎士達を拘束する時も、こんな感じの光の輪を出して拘束していた気がするな。


「とりあえずは無事で良かった……」


「優希も無事で良かったよ……酷いことされなかった?大丈夫?」


「あ、ああ……大丈夫だ。何もされてない」


 むしろこっちがヤった側だからな……。

 六花にスリスリと胸をさすられる。千秋はさっきから頭を擦り付けてくる。お前は猫か。

 …………というか、人前でベタベタくっつくのはやめた方がいいと前から……。


「少し、距離が近すぎるのではないでしょうか」


 ……ほら言わんこっちゃ無い。

 ロリ姫葉ちゃん三人がこちらを軽蔑の目で見据えていた。


「……この子たち誰?優希……?」


 千秋も軽蔑の目で俺を見ていた。…………いやなんでだよ。


「もう新しい女つかまえたの?……優希はしょうがないんだから……昨日千秋ちゃんとあんなに……」


「ああっ!!……そう、そうだった……こちらはこの学校の生徒会長だった陽ノ酉姫葉さんだ。……今は能力で見た目が幼くなってるから分からなかったかな……ははは!」


 俺は全力で姫葉ちゃんを紹介した。見た目が変わってるからな。俺が間を取り持つのが良いだろう。


「え……会長……?三人いるし……ちっちゃくなってるし……可愛いー」


「…………君たちが捕まっていると聞いたので捜索を手伝っていた。大事なさそうで良かった」


 いや、ほんとに……この大事な時に行方不明なんて、気が気じゃ無かったぞ。


「……優希とはどういう関係ですかっ」


 …………はぁ!?


「こらこら、千秋、なにを想像してるんだ?失礼だぞ?」


 千秋は俺の手をぎゅっと握り姫葉ちゃんズを睨みつけていた。……嫉妬か?……泥棒猫とでも認識してるのかもしれない……。


「何を勘違いしているのか知らないが、この人とは何もないぞ……今後も無い」


 姫葉ちゃんは心底くだらないといった表情で言い放った。……確かに無いとは思うが……俺への態度がどんどん悪くなってる気がする……。

 ただでさえ悪いのに……これ以上悪化したらこの作戦にも影響出そうだ……勘弁してくれ。


「…………」


 しばらく睨んでた千秋だが、何を思ったのか不意に俺の足を払った。

 …………え?


「ちょっ……」


 体勢を崩してかがみ込んだ俺の頭を掴むと、唇に吸い付いてくる。


「あむ……ちゅ……れぅ……」


「おい、んむ、ばか……なにやって……むぇ……」


 このエロガキがぁ……!

 訳わかんねぇ!何してんのこいつ!今キスする必要あるか!?


「あ、あはは……千秋ちゃん、やるぅ……」


 おい六花!見てないでコイツを止めろ!

 千秋はガッチリ顔を押さえてベロベロ舌を伸ばしてくる。目を瞑ってゆったりと動いているところを見るに、甘いキスでもしてるつもりなのだろうか。

 ……舌を絡めようとしてくんなっ!


「んっ……ちゅむ…………んむ……ぷはっ」


 十数秒ほどキスをし、千秋は満足したのか俺の顔を離した。


「ぶはっ……はぁ……はぁ……ゴラァ!千秋!」


 俺は尻餅をついて千秋を見上げた…………が、千秋はこちらを見ていなかった。

 姫葉ちゃんズに向き直り、得意げな表情…………。

 いや、ドヤっじやねぇよ。

 嫉妬か?嫉妬なのか?何も無いって言ってただろうが!つーか仮に何かあったとしても相手を転かして無理矢理キスしてたら逆効果だろ……。


「……意味がわからない。好きにしてろ……私は騎士どもを処理しに行く」


 当然なにかが心に響くわけもなく、三人のロリ姫葉ちゃんは倉庫の外に出ていった。

 …………千秋のおかげで俺の評価は地の底だろうな。もう顔を合わせない方がいいレベルかも知れない。


「ふふっ…………」


 立ち上がった俺に抱きつき得意げな表情を崩さない千秋。……やってやったぜ、じゃねぇんだよ!


「いたっ!」


 俺は千秋の脳天に強めにチョップを落とす。褒められるとでも思ったか?はぁ……この作戦中に支障が無ければいいが……。

 六花もこれには苦笑いだ。いつもならマイペースに参加してくるくらいだと思うが、会長の前では自粛したようだ。


 …………いや、よく考えたら千秋はいつもの六花を見て行動したのでは……?

 ネイテールと六花のやり取りが思い出される。あの時も必要以上に身体を擦り付けてきてた……あれを他の女を追い払う方法として学んでいるんだとしたら……。

 千秋は六花の真似をしている……というかもっと過激になってる……。

 …………六花は千秋の教育に悪影響だったようだ。


「はぁ…………」


 頭をさすりながらも俺の腕から離れない千秋を見る。……そのうちガツンと言ってやらんといかんな……先が思いやられる。






 千秋と六花を救出した後、俺たちは戦闘が繰り広げられている校庭には向かわずに、校舎の三階まで戻ってきた。

 二人に付けられている能力を封じる腕輪を取り除くためだ。

 試しに力任せに引っ張ったりはしてみたのだが外れる気配はなく、特殊な方法でしか解除できないのかも知れないと推測を立てた。

 思い出すのは、ネイの部下が騎士達を拘束するのに使ったあのペンのような道具だ。この能力を封じる光の輪はあの時に見た光の輪とそっくりだし、拘束するという用途で使われるものなら同じものだと考えられる。

 つまりは、あのペンを探しに三階まできたということだ。ネイの部下三人は確実に持っていたし、それを拝借するのが確実だろう。

 今はネイの部屋の前だ。


「じゃあ探してくるから、少し待っていてくれ。ちゃんと見張っているんだぞ?」


 三人があのままなら二人に見せるわけにはいかない。適当な理由をつけて外で待機してもらうことにした。

 俺は強化を付与してドアを少しだけ開き、隙間から中を確認する。


「…………いない」


 そこに予想していた光景はなく、むしろ何事も無かったかのように綺麗になっていた。

 股から白い液体を垂らしながら気絶している女の子達も、ゾンビのように俺を探す猫娘もいない。

 ベッドのシーツも綺麗に整えられており、今朝の出来事が夢だったと言われたら信じられるレベルだ。


 中に入り、クリアリングをしていく。……いないな。良かった……色んな意味で。

 自分でやっといて何だが、意識を取り戻してくれて良かった。証拠隠滅する理性も問題なくあるようで、自分のやったことの責任が軽くなったのを感じる。


 さて、誰もいないのなら物色だ。本当は三人の持ち物から見つけようと思っていたから、本命ではないのだが、上司の部屋に同じ道具があっても何ら不思議ではない。

 しかし、机の上、引き出し、ペン立てなどを調べたがそれらしいものは見つからなかった。そもそもあれの正確な見た目を覚えているわけではないんだよな……。

 ペンのようなものだったことは覚えているが……そういえば文具ではなく、拘束する為の道具か。探す場所が少し違うか?

 クローゼットに目を向けていざ物色……というところでドアが開き、中に二人が入ってきた。


「……?なんだ、どうした?」


「優希、誰かきた」


 …………マジか。


「誰だ?どんな奴だった?」


「多分ネイテールの部下だと思う」


 ……こりゃ戻ってきたか?どうする?隠れるか、窓から逃げるか、ってところだが……。

 ここから外に出たら校庭に躍り出ることになる。逃げは出来るが外は今激しい戦闘中だ。能力を使えない二人をそこに出していいものか……俺の能力で筋力を強化すればいけるか?

 隠れるのは……どうだ?クローゼットくらいしか人間が隠れられる場所はないが……。


「……っ!優希、走ってきてる!」


「なっ!?……くそっ、二人とも窓から外に!」


 ずっと聞き耳を立てていた千秋が、外の相手が走ってくる音を聞き取った。走る意味……それはこちらを逃さないために、というのが一番しっくりくる理由だ。

 …………気づかれてる。


 俺は急いで窓を開けて、二人に触れて強化を使用する。


  ──────バンッ


 と、いざ飛び降りるかと手をかけたところでドアが勢いよく開かれた。


「やっぱりいたぁ……」 


 そこにはニタァと笑ったチックが立っていた。尻尾をゆらゆらさせて……ずいぶん嬉しそうだ。

 遅れてニルファとルムネも後ろから現れる。


「探したよ、優希さん」

「逃げないでくださいね」


 後から来た二人は真面目な顔だ。……むしろ焦っているようにも見える。手をこちらに向けて、もう片方の手には件のペンのような拘束道具を持っていた。


「油断したよ……まさかウェリアの精液があんなにすごいとは思ってなかった」

「おにーさん、続きしよっ」

「私達もネイテール様に申し訳が立たなくなっちゃうの……ひどいことしないから、ここで大人しくしていてくれない?」

「はやくっ……しよっ」


 …………そりゃ、監視対象とヤって気絶した挙句逃げられましたとは、報告できんわな。今まで俺を探してたわけだ。


「なぁ、ネイを説得してくれよ……ここから逃げるんだ」


 性懲りも無くネイの無事を願ってしまう自分もどうかと思うが……俺個人としての最上の結果は、ユニオンがここを奪還しつつもネイが無事でいられることだ。ネイがここからいなくなってくれれば全てが上手くいく。


「逃げる?……そんなことするわけないじゃん。異世界人ごときにアタシらが、負けるわけないし、今まで通りに戻るだけだよ」

「おにーさんっ……ねぇ……んぅ」

「……そちらの二人は許可なく脱走したので重い罰が待っていますけどね……しばらくは団員達の相手で忙しくなりますよ」

「ふぅ……ふっんっ…………ふぅ……」

「そっちが無理矢理ボクらを捕まえたんじゃん」

「悪いことしたんだから当然でしょ」

「んぅっ……うぅ……」

「ちあき何にも悪いことしてないよっ!」

「いいえ、騎士団に逆らいましたよね?」

「おにーさんっ、おにーさん!」


 なんか、カオスだな……。いや、カオスの原因は一つしかないが……。


「…………なぁ……その…………大丈夫か?」


 さっきからチックの様子がおかしい。

 ネイには無事でいてほしいし、拘束のペンもほしい。あるいは千秋と六花の能力封じを解除してほしいので、色々と交渉をしようと思っていたのだが……。

 今チックは全力で制服を脱ごうとしているように見える。尻尾はブンブン振られ、体勢は前のめりだ。

 ニルファとルムネはそんなチックを両側から抑えているので、二人とも片手が塞がった状態になっている。なかなか必死そうだ。


「……優希さんが、チックの発情スイッチを、押しちゃったから……」

「チックは獣人ですからね……くっ、優希さん、責任を取るべきでは、ないですか?」

「ふぅー……ふぅー……」


 …………俺のせい…………。

 チックの目は血走り、フーフー唸りながら涎を垂らしてる。床がミシミシ言ってるので、脚に力が入っているのがよく分かり、抑えている二人が手を離したら弾丸のように飛んできそうだ……。


「…………すまんっ!」


 俺はそばにいた千秋と六花を抱え、窓から外に飛び出した。


「あっ!」


 それと同時に、驚いたのかニルファとルムネは手を離してしまった。弾丸が解放される。

 その弾丸は俺が窓から飛び立って重力による落下を始める前に、窓の縁に手を掛けていた。


「おにーさんっっ!」


 その勢いのまま俺に激突する。


「ぐえっ!」


 衝撃で抱えていた千秋と六花を手放してしまった。


「優希っ!」


 チックにしがみつかれ、空中で回転する。くそ……この高さから落ちるぐらいじゃ二人とも大丈夫だと思うが、俺が完全に捕まってしまった。


「くそっ、離れろ……!」

「おにーさんっ」


 腕を外そうともがくが、例によって力の差がありすぎて外すことができない。筋力強化なんぞお構いなしだ。

 いいように弄ばれ、最終的にお姫様抱っこをされながら着地した。

 目が回る……。


「えっ!?刃山さん!?」


 驚いたような声……この声は……春華?


「た、助けてくれ!」


 姿は見えないが、すぐに助けを求めた。この状況では恥も外聞もないだろう。

 周りの状況が少しずつ分かってくるが……どうやら乱戦中の校庭の中でも、味方寄りの地点に出たようだ。


「優希っ!」


 千秋の声だ。走ってタックルをかましてくる……が、チックはそれをヒラリと避け、走り出す。


「こうびっ、こうびっ」


 俺を抱えているにも関わらず、すごいスピードだ……。追いかけてくる六花も見えるが、追いつけそうにもない。


「このっ離せ……!」


 俺を抱えて戦場を駆け抜けるチックとそれを追いかける千秋と六花。周りにユニオンの人員らしき人らはいるが、この状況でどうしていいか分からない、と言った様子だ。戦いの手が止まっている。


「優希を助けて!」

「チック!止まって!」


 六花とニルファの叫ぶ声が響き渡った。

 

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