緑髪の女
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ユニオンの人達が方々に散らばって行っている。
学校の敷地の中に入ってもここを占拠しているという異世界人の抵抗はなかった。
「優希さん……どこだろう……」
響が不安そうに辺りを見回している。
優希さんがここにいるということは分かっているのだけど、行方不明なのだ。
昨日の夜まではいたらしいので、この学校内にいる可能性は高いと思うけど……。
まずは入り口を探さなくちゃ。
私は校舎の裏手の方へ回った。職員玄関がある駐車場の方だ。いくつか車はあるけど、どれもバリケードとして使われていた。もうこの世界では使うことのできない物だ。
──────ドンッ!
突然、強烈な光と一緒に爆発音の様な大きな音が響き渡った。激しい揺れを感じる。眩しい……何が起きたの……?
──────ドンッ!
再び爆発音。すぐに熱風に襲われて、パラパラと周りに何かが落ちてくる音がした。
目を瞑っていたから状況がよく分かっていないけど……たぶん戦闘が始まったのだと思う……全ての異世界人が動けないわけではないと言っていたから、その人達の反撃かもしれない。
ようやく目が開けられるようになって周りを確認する。
前の方では大きな穴が空いているのが見えた。黒い煙がもくもくと上がっていて…………空に浮いている人が数人いた。
女の人が一人とその周りに変な服を着た五人の男の人が浮いている。きっとあれが異世界人だ……。
女の人はこちらを見下ろしながら手のひらを上に向けている。その上に光の玉?が現れて、それがどんどん大きくなっていく。
あれが攻撃なのかな?…………っ!
「響っ!あの光の玉を冷やして!急いで!」
「えっ?わ、分かった!」
響は能力で温度を上げ下げする速度が上がっているから、きっと間に合うはずだ……。
少しして、ジュウ、と音を鳴らしてその光の玉は小さくなって消えた。
危なかった……すごい破壊力の攻撃だった……あれが魔法……正面から戦っちゃダメだ……。あの光の玉は大きければ大きいほど爆発する威力も増す物だ。
あれでも手加減してた……その気になればこの学校なんか消し飛んでしまう攻撃だ……。
この後の攻撃にも対応できるように、私は響とテレパシーを繋いだ。
響はもう思考を読まれないようにはしていないから、テレパシーを繋いだ時はどちらの考えもすぐに共有できる様になっている。
「……?魔力による干渉?……小癪な……すぐ楽にしてあげようと思っていましたが仕方ありませんね」
その人は何やら周りの男の人たちに指示を出している。……どうやら一人づつ確実に殺していこうとしているみたいだ。
威力は低いけど、すぐに飛ばせる火の玉みたいな魔法があってそれをばら撒こうとしているようだ。
私は近くにいるユニオンの人全員に今の異世界人の作戦を伝えた。何故そんなことが分かるのか、とみんな少し戸惑っていたけど、すぐに行動に移ってくれた人もいる。
そのうちの一人は飛んでいる異世界人の一人に紐の様な物を飛ばして脚に絡み付かせていた。
紐を出してそれを操ることができる能力の人だ。一緒に探索したことがあるから、私の、|自分の思考を相手に伝える能力を戦闘中に経験済みの人だ。
私の能力は情報を広げるのに便利だからユニオン内では結構有名だ。他の人達も戸惑いつつも少し間を置いて動き始めてくれた。
「よし、身を隠せ!」
火の玉を避ける為に地面を盛り上げて大きな壁を作ったり、木を生やして要塞を作ったりしている。
それに続いて続々と防御が進んでいった。
そして、ある程度盾ができあがったら、その後ろから遠距離攻撃を飛ばしていく。火の玉、鉄球、岩、車まで……色んな攻撃が異世界人目がけて放たれた。どれも当たったらひとたまりもない攻撃ばっかりだ。
「くそっ、効いてないか!?」
…………でも、大半の攻撃は透明なバリアで防がれてしまっていた。
これは事前に知っていた魔法の一つだ。これがあるから異世界人は強いのだと、この学校の生徒会長だった姫葉さんが言っていた。
いくら攻撃しようにもこちらの攻撃が相手に届かず、一方的に攻撃されるのだと。
ただ……飛んでいる異世界人の頭の中を読んで分かったことがある。攻撃は見てからじゃないと透明なバリアは出すことができないみたいだ。
飛翔体の情報を高速で読み取って最適な防御をする魔法……?あのバリアは燃費が悪いから、一瞬だけ展開する魔法に改良されたものらしい……よく分かんないけど。
でも弱点があることは分かった。見えない所から攻撃すればいいんだ。私はその考えを全員に伝える。
「オッケー凛ちゃん」
「広がれ!」
みんなは少しづつ、飛んでいる異世界人を囲む様に広がって行った。こっちを守る防御も同時に広がっていく。一人一人が死角に入ろうと移動しているみたいだ。
火の玉、鉄の槍、氷の塊、車、いろんな物を飛ばしながら包囲していく。
「……小賢しい……防御陣形、弍型!」
女の人がそう言うと背中合わせで輪を作るように並んだ……死角を無くすためだ。そっか……弱点に対抗する手段があるのは当たり前だよね……。
「くそっ!一点集中だ!防御は薄くなっているはずだ!あの女を狙え!」
ユニオンの誰かが叫んだ。
みんなは一斉に女の人に向かって攻撃を飛ばしていく。
…………でもダメだ……いくら遠距離攻撃を飛ばしても、見られてしまっては絶対に届かないんだ。私たち程度の人数の攻撃じゃ、あの透明のバリアを突破することはできない。
「攻撃開始!殲滅せよ!」
女の人の声と共に、火の玉が飛び始める。
「ぐぁっ!……くそっ!隠れろ!」
ユニオンの人何人かにその火の玉が当たった。最初の光る玉ほど威力が大きく無いけど、服が破けて火傷を負ってしまっている。
回復の能力を持っている人が治療に向かったから、大丈夫だろうけど……無闇に当たっていいほど威力の低い攻撃じゃ無さそうだ。
……ダメだ、このままだと私達が押し切られてしまう。能力で出した壁も、火の玉をたくさん当てられて崩れてきてしまっている。響が冷やしたりしてるので、燃えてしまうことはないんだけど……。
なにか……この状況を変えることができないだろうか……。こちらの攻撃は全てバリアに防がれてしまうのだ……魔力の消費も少ないようで、このまま続けたら私たちの方が先に枯渇してしまう。
何か手は……。死角を作ったり……バリアに防がれないくらい早くて見えない攻撃とか……。見えない……?
…………響の能力はバリアに防がれるのかな?
そう思った瞬間、響はすぐに行動に移ってくれた。飛んでいる異世界人を睨みつける。
「……?な、なんだ!?」
「っ!散開せよ!」
異世界人達はバラバラに散っていった。
やっぱりだ!響の能力なら、バリアに防がれない。響の空間の温度を上下させる能力は、何かを飛ばしたりするわけじゃなくて直接その場所に影響を与えているから、攻撃が見えてるわけじゃない。
「くそっ!」
ばらばらに散った異世界人に攻撃が当たり始める。ユニオンの人達の方が数が多いので死角がどうしても生まれてしまうみたいだ。
「今のうちだ!仕留めろ!」
「陣形を組ませるな!」
こちらの攻撃はさらに勢いを増していって少しずつ当たり始める。
「あぁ!もう!イライラする!」
近くに異世界人の女の人が飛んできた。多分この人があの中では一番偉い人なんだろうな。命令とかしてたし。
……明るい緑色の髪の、綺麗な人。だが敵だ。美人だとか……胸が大きいとか、関係ない。優希さんを探す為にはこの人は邪魔だ。
その女の人はまた手のひらを上にして光の玉を作り始めた。……響っ!
すぐに響が反応してその光の玉の温度を下げるけど……素早く移動してるから上手く対処出来ない。どうすれば……。あの光の玉で攻撃されたら大きな被害が出てしまう!
私は女の人の思考を読んで響に伝える。移動先になんとか合わせてもらって、少しづつ温度を下げる。
「……もう!またですか!小賢しい固有魔法持ちがいるようですね……」
……なんとか対処に成功した。危なかった……この光の玉の攻撃をしてくるこの人が今のところ一番危険だ。なんとか無力化しないと……。
「くう……早く終わらせて戻りたいのに……!」
「…………え?」
思考を読んでいたら……その中でなぜか優希さんが出てきた。
……なぜ?
は、裸の優希さんと抱き合って……キスして……。
…………この人、優希さんとする妄想をしながら戦ってる…………。
(ネイ……気持ちいいよ……好きだ……愛してるよ)
妄想の中で囁く優希さんが見える。
…………な、なんで?どういうこと……?
優希さんがここにいるということは分かってたけど……この人とはどういう関係なの?
………………?み、魅了魔法……?………はぁ……?
どんどん思考が流れ込んでくる。この人……優希さんの心を無理矢理自分のものにしようとしてる。
魔法で徐々に自分のことしか見えなくする魔法をかけてあるみたいだ。最後は結婚して、幸せな家庭を……はぁ?
それを理解した瞬間、沸々と怒りが湧いてくるのが分かった。テレパシーを繋いでいた響も同様に怒りを湧き上がらせているのを感じる。
この緑髪の女は早く戻って優希さんをメチャクチャにしたいという欲求を抑えながら戦っているのだ。……なんて醜い……。
そんな気持ちの悪い妄想を優希さんに向けるな!
「た、退避!逃げろ!」
怒りで頭が真っ白になっていたからか、光の玉の攻撃に対処するのを忘れていた。
その光の玉は土の壁に当たると強烈な光を放ち爆発した。強い熱風と爆音が辺りに広がった。
土の壁は容易く破壊され、周辺にいたユニオンの人たちを吹き飛ばした。
「ぐ……うぁあ………!」
「くそ、回復できるやつはどこだ!」
「攻撃は止めるな!援護するんだ!」
周囲から苦しそうな声が聞こえてきた。ユニオンの人たちに大きな被害が出てしまったようだ……。怪我人が多く出てしまった。
「…………」
でも……私はこの異世界人から目が離せなかった。心を読み続ける。
この人は……優希さんとセックスしたんだ……。
裸で抱き合って、キスして……気持ちよくなって…………。最後は優希さんに抱かれながら寝る……。
憎くて、妬ましくて、羨ましかった…………。
この女……ネイテールは優希さんを私達から奪い取ろうとしている……。絶対に、許せない……。
心の底から湧き上がる怒りが黒くなって渦を巻いていくのが分かった。響の殺意と合わさって、どんどん膨れ上がってくる。
「凛……」
「うん……」
優希さんを取り返さないと……。




