泡
俺は今、裸の女性二人に見つめられていた。
顔を上気させ、目を潤ませ、息が荒くなっているのを確認できる。
「お、おい……」
隣で千秋もゴソゴソと服を脱ぎ始め、全裸になる。こういう時だけ空気を読むんだな、お前は……。
春華が近づいてきた。所在なさげな手がお腹の前で爪をいじっている。
「よ、よろしく、お願いします……」
「まて、待て待て。お前賢斗は?もう愛してないのか?本当は賢斗と補給したいんじゃないのか?」
「……あいつは私より六花の身体の方が良いみたいだし」
「…………はぁ……お前そういうとこだぞ。なんで二人して意地張ってるんだ。どっちかが寄り添えばそれだけで丸く収まるってのに……」
お互い想い合ってるはずだ。そして、お互い後悔してるはず。
「まあまあ、いったん補給しよ?」
六花は説教モードに入ろうとした俺の後ろに回り寝かせようとして来る。それに千秋も協力し、また足払いをされた。抵抗虚しく体勢が崩れる。
六花の体を枕にゆっくりと横になっていく。グイグイと引っ張られ寝かされていき完全に尻が床についた。六花の手は俺の胸に置かれて自らの身体に押さえつける様に力が入っている。
「んちゅ、ん、ちゅっ……んちゅ」
千秋は横から俺の顔にちゅっちゅっとキスの雨を降らせる。唇を貪られていない……このパターンは初めてだな。喋れるからいいが……。
そして春華は俺の腰の上に跨った。
「お、おい、春華、落ち着け。よく考えて……」
「刃山さんも……私の身体じゃ興奮しない?」
潤んだ目で見つめられる。今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「そんなわけ……ない……」
そんなわけなかった。
全体的にすらっとした身体にスベスベの肌。出るとこは出て、腰回りはスッキリめ。スタイルの良さはバッチリだろう。
そりゃ立花と比べたら胸は小さいということになるが、平均か、それより大きいくらいだろう。どちらにせよスタイルが良いという評価が一番しっくり来る。
「ふふ……嬉しい」
春華は顔を赤らめ笑うと俺に覆い被さった。
ぐぅ……賢斗……すまない……。
俺も春華の背中に手を回しギュゥと抱き合う。
「はふぅ…………抱き合ってるだけで……これすごい」
抱き合っていたら俺と春華の肌が触れ合っている部分にニュルニュルとした感触の液体が溢れてくる。
泡だ。能力で泡を発生させているんだ。春華はどんどん泡を出していく。
そして、顔全体にキスをされる。頬や鼻先、瞼などにちゅっちゅっとキスを落とす。千秋と一緒にやっているから顔中にキスの雨が降っている感覚だ。
ただ……唇にキスをしないところを見ると、一線は引いてるんだろうな。少し安心した……。
…………いやダメだろ。これアウトだよ。賢斗君の脳が破壊されちゃう。六花もなんで止めないんだ。
「多分大丈夫だよ」
耳元で六花がそんなことを言った。何を根拠に?好きな女の子が他の男にこんなことしてたら、俺だったら卒倒するぞ。
「ふぅ……刃山さん凄いです。こんなの知らない……」
興奮していたからなのか、泡の量もすごいことになってる。
「ふぅ……ふぅ……」
潤んだ目で見つめられながら強く抱きしめられる。ちゅ、ちゅ、と千秋と一緒にキスを浴びせてくる。
そして、頬にチュウ、と強く吸い付いた後、春華は足を立ててゆっくりと腰を持ち上げた。
……え?え?ちょ……まって……それはさすがにダメだろ!キスは避けたんだから辞めとこう?
「わぁ……春華、優希としちゃうんだ」
俺が、春華を止めないと、と思いながらも欲望に負けそうになっていたら、六花が急に喋り始めた。六花にしては大きな声だ。
なんだ?どうした?いつも無言でダルそうにしてる六花とは思えないハキハキした声だ。
「絶対気持ちいいよね。こんなの経験したらもう優希としか出来なくなっちゃうかも。あ、もしかしたら赤ちゃんとかでき……」
──────バァンッ!
突然勢いよく扉が開く。
そこには目の据わった賢斗が立っていた。ズンズンこちらに近づいてくる。
賢斗は春華の手首を掴んだ。
「……な、なに?私今から羽山さんとするんだけど……邪魔しないでよ」
「ダメだ」
…………修羅場だ。俺の上で修羅場が展開されている。さしもの千秋もこの時ばかりはピタリと止まっていた。
「は、はあ?ダメ?なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないわけ?……そんなに補給したいなら、私より良い体の六花にしてもらったら?」
「え……ごめん無理」
「………………」
六花はマイペースだな……。
「……で、出てってよ。私今から羽山さんの魔力もらうんだから。き、きもちよくしれもらって…………あ、あかひゃん………つく…………へ…………」
急に呂律が回らなくなってきたと思ったら目を閉じてこちらに倒れ込んできた。慌てて抱き止める。……寝てる。
賢斗の能力で眠らせたのか。
「すみません刃山さん」
そう言うと、賢斗は泡まみれの春華を持ち上げた。
「春華を借りていきます」
そのまま部屋を出る。バタン、と足で器用に扉を閉めて行った。
…………わお。覚悟の決まった賢斗君は春華ちゃんを捕まえて攫っていってしまったとさ。
「ふふふ、優希残念だったね。春華と出来なくて」
六花は俺の頭を千秋に預けると、背中から抜け出した。
最初からこうなることが分かっていた?いや、まさか。賢斗が覚悟を決めなかったらマジで春華と合体するところだったと思う。博打すぎる。
「大丈夫だよ。ボクが相手してあげる」
そう言うと、むにゅりと俺の上にのしかかった。
「ぐぅ……す、ストップ……」
「なんで?ボクとしよ?」
六花は先ほどの春華と同じようにのしかかる。
春華が出した泡に塗れながら抱き合う。
「ねえ……ゆうきぃ……ちあきもやりたい……」
珍しくディープキスが飛んでこないと思ったら、泡洗体を見て羨ましがってたみたいだ。
「ふふ……いいよ、千秋ちゃん」
六花はそう言ってスペースを開けた。
「やったっ!」
千秋は俺の頭を床に置くと、空いたスペースに跨り抱きついた。小さい体がギュゥと抱きつく。
「んへへ」
まったくなんでコイツはこうも毎回幸せそうなんだ。八重歯を見せて笑うたびに、こちらの気持ちも不思議と明るくなる。
「じゃあ、優希……気持ちよくなろうね……」
そうして俺は千秋と六花と一緒にしばらくの間魔力補給をし合った。




