表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/20

ファーストコンタクト

 再び合流した俺たちは同じ階と通り道にある階の住人に片っ端から声をかけていった。流石にここまですることはないんじゃ、と思わなくもないが、乗りかかった船というか、ここまできたらもう最後まで行こう。

 ……と思っていたが、希望者が存外に多く、30人を超えたあたりでストップをかけた。個人行動は危険だが、大人数での行動も、把握できる範囲が限られるために危険であろう。

 申し訳ないが、残りの人たちは第二陣としてまとまって出発してもらうことになった。

 集まった人たちも様々で、見たことがあるような気がする人もいれば、ない人もいる。が、半分以上が主婦だ。小学校も近くにあるので、このアパートは子育て家族に人気があるのだろう。


「では、出発します!できるだけ離れず、2列くらいに並んで進みましょう!」


 言い出しっぺということもあり、自然と取りまとめる立ち位置になってしまった。こういうのはあまり慣れてないので少し緊張する。まぁ、高校までは2kmないくらいだ。黙々と歩いていればすぐ着くだろう。

 しかしでかい木だ。こんなのが地中に埋まっていたなんて信じられん。コンクリートの割れ目から顔を覗かせている草花も不思議だ。地震で下から草原が生えるなんてあり得るんだろうか。聞いたことないが。

 それにどの植物も見慣れないものばかりだ。いや、一度も見たことがないかもしれない。植生的にあり得るのか?そもそも新種だったり?地下で人知れず育っていた植物が地震によって姿を現した!なんて話しだったらロマンあるな。

 なんてよそ見をしながら歩いていると、つまずいて転びそうになった。危ない。道路は半壊して足場がかなり悪くなっている。周囲をよく見て集中した方がいいな。

 そうして周りを見渡すと、自分たち以外にも出歩いている人はちらほら見かける。同じように学校に向かっていると思われる人もいれば、見たことない木々に見入っているもの、倒壊した家を茫然と眺め立ち尽くしている人もいる。

 これだけの地震だ、損害は相当のものだろう。失ったものが多い人も多くいるだろうな。そういった人のことを考えると悲しくなってくる。悲しくなってくるが、まずは自分のことだ。

 正直なところ、海郷高校が避難場所として機能していたとして、そこでどれだけ凌げるのかもまだわからない状況だ。道路がやられているということは陸路での補給が受けられる可能性も低いとみえる。ヘリで補給するといっても限度はかなり低いだろう。

 そもそもの話、今回の地震がどれだけの範囲で被害を出しているかも把握できていないのだ。もし、支援を送るという選択を出来ないくらい他が疲弊していた場合、ここが見捨てられる可能性は十分あり得る。

 はぁー、気が重くなる。

 道中、木が邪魔で通りにくい場所はあったものの、通行が不可能なほどの道はなかったため多少時間がかかりはしたが、無事に到着することができた。


「こちらで避難を受け付けておりまーす!並んでお待ちくださーい!」


 ついた先でそんな声が聞こえてくる。同じく避難を考えていた人は存外に多いみたいで、ガヤガヤと話し声が聞こえてくる。


「皆さん、お疲れ様でした。あそこで受付をしているみたいなので、各々受付を済ませて中に入りましょう」


「刃山さん、先導していただきありがとうございました」


「ええ、ほんとに。私一人だったら家で何もできずにいたと思うわ。本当にありがとう」


「いえいえ、特にトラブルも起きず良かったです」


 お礼を言われると気分がいいもんだな。やった甲斐があるってもんだ。

 さて、さっさと受付を済ませて中に入れてもらうか。


「どうも、お願いします」


「はい、ご苦労様でした。こちらに名前と住所、電話番号を記入してください」


 言われた通りに個人情報を記入していると、


「ご家族はこの学校に通っていらっしゃいますか?」


「いえ?」


「大変申し訳ないのですが、受け入れるのにも限界がありまして、万が一いっぱいになってしまった場合、親族の方を優先させていただきます。若い男性の方の場合、優先度で言うと一番低くなっていまして、もしいっぱいになってしまった場合は、ご理解とご協力のほどよろしくお願いします」


「なるほど、分かりました」


 なるほど、そう言うもんか。まぁ確かに第一に自校の生徒の安全と健康、心身の安定をとるのは当たり前か。限界か……仮にここらへんの住民全員がここに集まってきたならあふれるだろうな。大丈夫だと思うが、しかしこれに素直に従う人はどれくらいいるだろう。ほとんどは理解を示してくれると信じたいが、果たして。トラブルが起きないことを願うばかりだ。


 中に入ると初めに食料と飲料、毛布を配っている場所が目に入った。ありがたい。大きめのリュックに腹持ちの良さそうなものは詰めてきたが、支援が来るか不透明なうちは溜め込んでおきたいと思うのが心情というもの。

 しかし、こういったものは常備されてるもんなのかね。準備を怠っていなかった学校に感謝だ。


「頼むよ嬢ちゃん。夜勤明けでなんも食ってねぇんだこれだけじゃもたねぇよ」


「ごめんなさい。一人一セットまでと決まっているんです」


 防災システムに感謝を捧げていると、そんな声が聞こえてきた。何やら揉めているようで、男性の声と、この学校の生徒だろうか女の子の声が聞こえる。会話内容からしてそこまで大事では無さそうなので無視したいところ。大事でも無視したいところだが。


「頼むって、前にいたやつは2セット持っていってたじゃねえか」


「先ほどの方はここの生徒のご家族の方です。生徒の分もまとめて配っているんです」


「はぁん?あぁ、実はこの学校に子供……妹がいるんだよ。そいつの分も貰うことにするわ」


「えぇ……」


「……あ?」


 しまった。みえすいた嘘がノータイムで発せられたことについ感嘆の言葉が出てしまった。まだバレてないか?配給をもらうために列に並んでいる人は他にもいる。このままやり過ごそう。

 なんて思っていたら前の列の人が左右にずれていく。おい、コラ。仕方がないので前の人に倣って俺も横にずれた。並んでいた全ての人が左右に避け男の目の前が開ける。ナニコレ。

 男は舌打ちをすると交渉、もとい恐喝に戻っていった。

 ふう、危なかった。しかし、前の列が左右に分かれたことで交渉のテーブルがよく見えるようになった。男は筋肉モリモリのマッチョマン……というわけではなく中肉中背のつなぎを着た俺と同年代の風体をしている。

 対する女の子はやはりここの生徒さんだろう。黒髪ロングの目鼻立ちがしっかりした可愛い女の子だ。体操服姿で毛布を強く握りしめていた。こんな災害時に不安だろうに手伝をしているなんていい子じゃないか。全く教師はどこにいるんだ、早く仲裁に入りなさいよ。まぁ教師も今は各所の対応に出ずっぱりか。


「あぁイライラするわテメェ、ぶち犯すぞ」


 そんな言葉が聞こえてきた。学校で生徒に向かってぶち犯すぞって……。ドン引きだわ。というか、ここまでの言動ができる頭の緩さを考えると、マジでやりかねない。女の子も一歩も引かず、涙目で睨み返している。

 今後起こりうる問題に嫌な予感がしてきたので、流石に仲裁に入ることにした。今更かな?まったく、日本人の関わりたくない症候群には参っちゃうね。


「おにいさん、無理があるんじゃないですか?」


「あ?」


「俺たちは避難所としてここを使わせてもらっている立場なんですから、ルールは守って貰わないと困るんですよ」


「あ?」


 あ、しか言わなくなっちゃった。まあこんな一方的に言われて納得する奴ではないよな。


「とはいえ、夜勤明けで食事抜いてるとなると、きついのもわかる。しかも、こんなでかい災害だ、さぞ不安だろう」


「あ?」


「というわけで俺の分の食糧配給は譲るよ。腹いっぱい食べるといい。そういうことならいいでしょ?」


「え、でも、いいんですか?」


 と、女の子。


「いいよいいよ。朝はしっかり食べてきたからね」


 じっと見つめ合うこと数秒。


「そういうことなら……」


 そういうと女の子は男に配給のビスケットを渡し、男は無言でひったくるとのしのしと歩いていった。あの感じは……ちょいまずいか?しかし、わかっていたけど礼もなしとはね。お里が知れるわ。


「あの、ありがとうございました」


 改めて自分の番が来た時にそう言われた。まったくこの子を見習えよ、って言っても無理な話だろうな。


「どういたしまして。それにしてもこんな大変な時に手伝いをしてるなんて偉いね」


「大変な時だからこそですよっ。先生方も避難所に来た皆さんだって大変なんですから。少しでも力になってあげたいです」


 くぅ……涙が出てくるね。笑顔が眩しい。というかすんごい可愛いなこの子。さぞモテるだろう。将来は間違いなく美人さんになるのが想像できる。


「……?あの、大丈夫ですか?」


「あぁいや、ごめん。水と毛布は貰っていくよ。それじゃ、頑張ってね」


「はい!ありがとうございました」


 いやぁ良いことをした後は気分がいいね。普段の生活で善行なんてそんなにする機会無いから、礼を言われるとことさら嬉しくなっちゃう。俺みたいなやつには災害時にしか善行を行うチャンスはこないのだろう。いや、いつものの生活では無視しているだけか。

 まぁ配給のビスケットくらいなら別に貰えなくてもしばらく問題ないから、そんなに感謝されるとちょっと苦しいが。

 心残りがあるとすればさっきの男の態度だ。腹を膨らませて溜飲を下げてくれたら嬉しいけど……。避難所なんて閉鎖的な空間でトラブルを起こされちゃたまったもんじゃない。それとなく見ておいたほうがいいだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ