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異界融合 〜崩壊した世界を少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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3/13

天変地異

 スマホのバイブレーションで目を覚ました。薄らと覚醒していく頭で考える。あれ?これって何回目の目覚ましだ?

 一瞬思考。……終わった。念の為一縷の希望にすがる思いでスマホで時刻を確認する。

 はい終わり。遅刻確定。お疲れ様したー。軽くシミュレーションして家を出るまでの時間、駅までの時間を計算する。動きながらやれよと思いつつ、いつも利用している線の時刻表を確認する。

 うん、終わってるね。どう足掻いても間に合わない。はぁー、なんでいつも二度寝しちゃうかなぁ。なんで自分を信じちゃうんだ。スマホのスヌーズあと3回分は眠れるとか馬鹿じゃねぇの。あぁー部長に会いたくねぇー。遅刻の連絡入れたくねぇー。あーあー。……ふぅ、とりあえず支度はするか。


 刃山優希(はやま ゆうき)、25歳、会社員。彼女なし。一人でアパートに住んでいて、会社とこことを往復するだけの人生だ。特に面白いこともなく、一生これが続いていくと考えると絶望に押しつぶされそうになる。

 なんて鏡に自己紹介しながら身支度を整えていく。遅刻が確定してんだからもう急がない方がいいよな。誰に見られるわけでも無いし、今頑張ってもしょうがない。重要なのは部長にいかにそれっぽい理由をお届けできるかだ。

 馬鹿正直に寝坊と言ってしまうのも手だ。バレる嘘が一番やべーんだから、その時点で最悪を回避できる。通勤中のイレギュラーが一番丸いが、電車の遅延は少し調べればバレるし、そもそも証明書がないと話にもならないだろう。なにか、不幸を演出するのも手だな。痴漢の冤罪とかどうだろうか、その場で解決はしましたけど時間取られちゃいましたよー、みたいな。ありか?同情を誘えるような気もするが……。

 はぁ、もういっそ隕石でも降ってきてくんねえかな ──────。




 揺れている?地震だ。しかもこれはかなりデカくなるんじゃないか?ヤバいかもしれん。

 とりあえず家中の扉を全て開けてまわり、窓を開け放った。そしてなにか落ちそうなものが周りにないか確認して ──────。


 ズドン。


 はっきりそう聞こえるくらいのでかい音が腹の底に響いた。今まで経験したことのないような大きな揺れだ。そこまで古いアパートではないはずだが、そこらじゅうからミシミシと音が鳴っている。なんなら鳴ってはいけないような破砕音も聞こえてくる。これは流石にヤバいかもしれん。

 窓際に掴まりながら耐えていると、窓の外の異様な光景が目に入ってきた。

 空が紫色だ。雲もドス黒く、渦を巻きながら一点に流れていっているように見える。

 バキバキと音が聞こえそちらの方を見やると、地面が割れていた。その割れ目もどんどん広がっていき、中から木が……は?

 でかい植物が割れた地面から浮上してきている。次々と木が生えてきているが、同時に草の生えた地面も中から隆起してきている。

 なんだ?何が起こっている?まるで下から別の土地を使って押し上げているような……。

 部屋の中がメチャクチャになっているのをよそに外の光景に呆然としていると、頭痛と耳鳴りがしてきたのに気づいた。いや、実は揺れが始まった時から少ししていたんだが、ここにきてさらにひどくなって無視できなくなってきた。

 酸欠にも似た症状で、手足が痺れて立っていられなくなる。物が散らかっているが、構わずその上に座り込む。苦しい。何か尋常じゃない事が起きているのは確かだ。異常事態。その言葉がよく似合う状況だろう。願わくば心のどこかで、ただのでかい地震であれと、うっすら願う自分に少し笑えてきた。


 1分くらい揺れていただろうか。いつの間にか酸欠は治り、重い腰を上げて窓の外を見た。空はもとの気持ちのいい青空に戻っていた。梅雨はまだ明けていないが、今日は束の間の快晴らしい。

 下に目を落とすと……見間違いであってほしいと思っていた現実が目に入る。隆起した、何かよく分からない植物が生えた大地がコンクリートを割り、向かいの住宅を割りながら鎮座していた。うちの窓側は大きめの道路に面しており、左右を見れば先の方までよく見える立地だった。が、どちらも同じく変な植物、見たこともない木。

 信じられない光景だ。なんなら森の中にワープしてきたと言われた方が信じられるかもしれない。そんな光景が広がっていた。


「やっばぁ……」


 さっきまで部長に話すホラ話を考えていたのに、今は誰に話しても信じてもらえないようなド級の妄想が現実に起こってしまっている。


「どうする?どうすりゃいいんだ?なにか、こういう時やらなきゃいけないことは……」


 部長に話せるド級のプレゼン|(真実)が出来上がってしまったことに内心ちょっと喜んでいる自分に呆れつつ、緊急時のマニュアルみたいなものを頭に引っ張り出してみる。が、今の状況ではどれもピンとこないものばかりだ。


「会社に電話してみるか」


 自責ではない遅刻の理由がしっかりあるから、堂々と電話をかけられる。気楽なもんだ。


「圏外だ、つーかWi-Fiも繋がってない」


 うちのルーターくんはさっきの地震で身投げしたので当然か。我が家にはテレビもラジオも無いので、外の情報を得る手段がほとんどない。

 取り敢えず、部屋を片付けるか、と現実逃避の掃除を始める。途中、デスクトップのゲーミングPCが壊れてないか嫌な予感がしつつも電源をいれる。反応なし。


「おいおい、嘘だろ勘弁してくれ。頼むよ」


 型落ちのミドルクラスだがそれでも安くない物だ。それなりにこだわって組んだし、中に大事なデータも山ほどある。絶望しながら、確認のため部屋の電気をつけるが、こちらも反応なし。セーフか?ただ停電しただけならPCが壊れることはない。一安心だ。

 ついでにガス、水道も確認したが、問題なく使えているように見える。が、どうだろうな。外の状況を思い出して、これももたない気がしてくる。


「一応水は今のうちに溜めておくか」


 俺はゴミとして捨てていた空のペットボトルに水を詰めつつ、浴槽に水を溜め始める。しばらく続けて、500mlが2本と、2Lが3本溜まったところで水が細くなっていった。まぁ、役に立つか分からんし、こんだけあれば上々か。浴槽には半分もたまってないが、こちらもこれだけあればまぁいいだろう。生活用水として役には立つ。


 そうこうしていると、外の廊下の方から話し声が聞こえる。普段近所付き合いをほとんどしていない身からすると、多少億劫ではあるが、今は情報が欲しい。話をしにいくべきだろう。

 そう思い立ち、玄関のドアを開ける。幸いドアが歪んで出られなくなるということはなく、すんなりと開いてくれた。

 話し声のする方に目を向けると、確かに見たことがある顔ぶれだ。同じ階に住む大学生のあんちゃんと、4人家族の奥様だ。見たことはあるが、名前は思い出せない。申し訳ない。


「どうもー」


「あ、こんにちは」


「こんにちは、刃山さん」


 奥様は名前を覚えてくれていたらしい。申し訳ない。


「すんごい地震でしたね。大丈夫でした?」


「いや全然大丈夫じゃないっすねー。うちの家具は全滅っす」


「うちもかなりやられちゃった。電気も水道も使えないし、どうしましょう」


 このアパートは全滅だろう。というか、うちの地域全体的に壊滅状態とみておいた方が良さそうだ。


「ですよねぇ。スマホはどうです?こっちのは圏外になっちゃって、ネットも繋げないんで周りの状況とかよく分からないんですよね」


「私のもそうです。テレビもつかないし、一体どうなってるのかしら」


「俺のも似たようなもんっす。ネット使えないと講義受けられないから困るんすけどね。そういえば外見ました?なんか森生えてるんすよ」


「見た見た。ありゃ道路もボロボロだったし、しばらくは何も出来なさそうだね」


「えぇ、私はそんな余裕なくて見てないけどそんなに?主人と子供たち、大丈夫かしら」


 4人家族の主婦としては、送り出した家族が心配だろうな。同じように奥様も心配されてるに違いない。


「まぁこのままここにいても危ないですし、俺たちもどこかに避難した方がいいのかもしれないですね。余震とかも起きるでしょうし」


 これだけ大きな地震だ。余震は十分考えられるし、このアパートの状況もよく分かってない。この地域は津波の心配は無いとはいえ、どこか広いところに避難するのが無難だろう。


「そうっすよね。うーんでもどこに避難するんすか?あんまりそういう避難経路みたいなやつ把握してなくって」


「恥ずかしながら私もあんまり……」


 恥ずかしながら自分も……。しかし経路はわからないが、避難場所としての相場はだいたい決まってくる。この辺りで言うと……近くに高校があるか。


「そういえば、お子さん高校生くらいでしたっけ?この付近だと海郷(かいごう)高校が避難場所として選ばれてそうですし、そこに向かうのが良さそうですけど」


「はい、2年生の娘と3年生の息子が。確かに心配ですし、避難ついでに会いに行けるならそれが良さそうね」


「海郷高校っすね。了解っす。一緒に行きますよね?」 


「そうだね。一人で行動するのは危険だし、3人で行きましょう。なんならご近所さんにも声をかけて、希望する人たちで向かいましょうか。」


 そんな感じで、今後の方針が固まった俺たちはひとまず解散し、最低限の準備を済ませてから合流することになった。

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