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異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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33/61


「お、おーい……」


 しばらく少女の食事シーンを眺めていたのだが、驚くべきことに、少女は泣きながら、食べながら、寝た。

 食べかけのクラッカー片手に完全に沈黙した。


 疲労も溜まっていたのだろうな。

 俺は少女を抱え、ソファに寝かせた。毛布をかけ、諸々の後片付けをする。

 …………流石にこのまま放っては置けないよな。

 どうするかしばらく考え、俺もここで寝ることにした。寝てる間に襲われる、なんてことは無いだろう。きっと。ダメだな子供相手だと甘くなってる節がある。まだ地震前の常識が残っていることが少し嬉しくもあるが、危険だろう。少しづつ変えていかないと。

 そういえば彼女は能力を使っているようには見えなかったな。筋力も……よく分からない。小学生か中学生あたりの年齢だと思うが、その辺の年齢の場合、能力は持っているはずだ。すでに使っている可能性もあるか?凛のように心を読む、とかだとこちらは気付くことはできない。

 明日、彼女がいなくなってなければ聞くことにするか……。

 俺もまだ超長距離鬼ごっこの疲労が抜けきっていない。今日は早めに寝ておこう。






「んむ……んむ……」


 違和感で目が覚めた。

 ゆっくりと覚醒していく頭で状況を確認していく。……まだ夢の中か?凛と響にまた襲われてる?最近補給してあげてなかったから爆発してしまったのだろうか……。


「はぷ…………んむ…………」


 いや、違う。思い出した。俺はとある家屋の中で一人の少女と出会って、缶詰食べさせて、泣いて、寝たから俺も寝て……。


「んも……んむ…………」


 …………俺はその少女に唇を貪られていた。

 ソファの上に横になっていたのだが、少女は俺の頭を押さえて、横から唇に吸い付いている。


 …………起きた方がいい、よな?

 俺は少女の肩をトントンと優しく叩いた。すると、ビクッと体を跳ねさせ、チュポンと俺の舌を解放した。そのまま後ろに倒れ込み、尻餅をつく。

 俺は体を起こし、彼女を見る。

 少女は尻餅をついた体勢のままこちらを見上げていた。赤面して口を半開きにし、涎を垂らしている。目を見開いて、驚いた様な表情をしており「しまった!」という声が聞こえてくるようだ。

 ……いや、しまった!じゃねーよ。寝てる間にディープキスかましといて、起きないとでも思ったのか?


「少し、お話ししよっか」


 俺はにっこり笑った。




 テーブルを挟んで対面のソファに少女を座らせた俺は、彼女の名前を知らないことに気づき、自己紹介から始めることにした。


「俺は刃山優希だよろしく。君の名前は?」


「……ちあき……神川千秋(かみかわ ちあき)


 まだ顔が真っ赤だ。こちらに目を向けてくれない。


「千秋ね、よろしく。それで ……どうしてキスしてたのかな?」


 ビクッとして、顔をいっそう俯かせる。なんかこの感じ経験したことあるなぁ。俺が初めて補給の餌食にされた次の日の女の子たちはまさにこんな感じだった。

 まぁ十中八九補給の衝動が抑えきれなかったのだろうとは思うが。


「えと……」


 少女は語り出す。曰く、起きたらソファに寝かされていて、毛布も掛けられていたから、優しい人だと思ったと。それで、近くで寝ているのに気づいて近寄って見ていたら、キスしたくなってしちゃった、とのこと。

 しちゃったって……つーかキスした理由が飛びすぎだろ。普通出会って間もない男にキスするかね……。

 ……まあ、最初の時の疲労困憊な状態から抜け出せたようだし、良しとするか?


「そ、そうか……千秋は何か能力……不思議な力を使えたりするのか?」


「?」


 補給したくなるということは、魔力が枯渇したということだと思うが、聞いても首を傾げるだけだった。何のことやらさっぱりといった具合に。

 無自覚に能力を使っていたタイプか?俺はそのタイプで、知らず知らずのうちに自分と他人に強化をかけていたが……。


「千秋、腕相撲しようか」


「え……いいけど……ちあき力強いよ?」


 ああ、知っているさ。十分にな。

 当然、結果は俺の敗北で幕を下ろした。

 ……若いほど強くなる法則からこの子も筋力は凄まじいだろう。缶詰を開けられないくらい弱っていたのは不可解だが……。それにこの歳なら能力が芽生えていてもおかしくないと思うが。


「うーん、地震が起きてから同年代の子に会ったことない?その子たちはなにか魔法みたいな力を使っていなかったか?」


 千秋は首を振った。


「会ってないよ。ちあきずっと一人だったから」


 事も無げに言った。うぐ……。こんな世界に一人で、ずっと……。

 俺は無性に千秋を抱きしめたくなった。というか抱きしめた。


「よく頑張ったな……偉いぞ……」


「ちょ、ちょっと、な、なに?」


 しばらくヨシヨシと頭を撫で、満足したので元の位置に戻る。


「それで、不思議な力の話だけど、何か出来るようになったことないかな?」


「な、なんなの……」


 すまんつい。

 顔を赤らめて髪をいじくる千秋に能力の心当たりがないかを聞いていく。

 結果として能力は使った事が無いようだった。


「なるほどねぇ、うーん……なんかできそうな感じない? ……こう、はぁっ!って感じで」


 俺は手のひらを外に向け、火の玉を発射した。……イメージをする。……何もないさ、俺には。


「んー……」


 渋々といった感じで真似をする千秋。



  ──────パァンッ!!!



「……っ!?」


 強烈な閃光と破裂音に襲われる。俺は反射的に目を瞑った。

 なんだ!?眩しい……、耳が……くぅ…………。千秋が何かやったのか……?

 暗闇の中で状況が何も分からない。音で把握しようにも耳鳴りがうるさい。

 しばらくはそんな状態が続いた。


「……だ、大丈夫……?」


 肩がゆすられる。


「あ、ああ……少し、待ってくれ……」


 何が起きた?眩しい光に目を灼かれ轟音で耳を貫かれた。

 ようやく治まってきて少しずつ目を開けると、千秋が心配そうに顔を覗き込んでいた。周りの状況を確認する。

 窓が吹き飛び、カーテンが焦げ付いているのが見えた。

 なんだ?火でも出したか?強い光の出所が分からんな。


「千秋、何が起きたかわかるか?」


 千秋はしばらく黙り込んで考えていたが、自分の中で結論が出たようだ。


「ちあき、雷が出せるようになったかも!」


 目を輝かせている。

 …………雷。さっきの爆音と閃光は雷が放たれたということか?…………なるほど……そんな能力もあるのか。


 俺たちは外に出て能力の検証を行った。千秋の雷にまつわる能力はとんでもなかった。

 好きな方向に雷を飛ばすことが出来るようで、五十メートル離れた位置にある小石を粉々にしてみせた。

 音に寄ってきたモンスターたちも轟音と共に一瞬で消し炭になった。集団で来ようが、まとめてだ。

 なんという破壊力。雷の通り道が光ったかと思ったら、次の瞬間にはそこには燃え滓しか残っていない。……強すぎないか?


「んふふ、優希っ、いくよ?」


 極め付けは、自身の体を雷に乗せて移動する能力。いや、自分で言っててよく分からないが、千秋がそう言うのだからそう解釈するしかない。

 放出した雷に乗って、着弾した位置に移動することが出来るらしい。意味がわからない。

 しかし、目の前でやられたら信じざるを得ない。バリッという音と共に、千秋があちこちに瞬間移動していく。もう何が何やら。

「うおー!スッゲー!!」とはしゃぎながら能力を試す千秋。嬉しそうな笑顔に八重歯が覗く。…………楽しそうならいいか……それ以上考えないようにした。


「ねえ優希っ!ほらっ!見て見て!」


 瞬間移動を繰り返し、一人キャッチボールをする千秋。最初に出会った時の様子が嘘みたいだ。本来の彼女の性質はこっちなんだろうな。性格など、この崩壊した世界では容易に塗り替えられるはずだ。

 そんな中で千秋が無邪気な笑顔を向けてくれるのは、幸せなことかもしれないな。……しかし心を許してくれているのはありがたいが、少し距離を縮めるのが早くないか?

 千秋の今後が心配になる。


 しばらく能力で遊んでいた千秋。しかし、すでに疲労が見えてきている。まだ、そこまで能力は使ってないと思うのだが……。記憶の中の凛や響と比較しているが、早すぎるような気がする。朝のキスじゃ足りなかったか?あるいは能力の燃費が悪いのか……。


「優希ぃー」


 トボトボと歩いてきた千秋は俺に抱きついた。

 朝から晩まで全力で遊んだ子供、と言った感じだな……。


「…………ちゅーしたい」


「ぶっ!」


 思わず吹き出した。


「お前、反省してないだろ……」


「いーじゃんかー、もう、一回しちゃったんだしぃ……。なんかちゅーしたくなっちゃったんだもん……」


 耳を真っ赤にして俺のお腹に顔をうずめる千秋。ぐ……抱きつく力が強い……。

 スゥーっと息を吸う音が聞こえた。……こいつ、俺の匂いを……俺臭くないかな?


「とりあえず中に入るぞ、疲れたんだろ」


「うん……」


 返事はすれども腕を離してくれない千秋を、引きずりながら家に入る。




 俺はそのままソファに座り、魔力に関しての説明を千秋にした。


「じゃあちゅーすれば治るってことじゃん」


「肌を舐めても治るの!ほら」


 俺は腕を千秋の口元に近づける。が、顔を背ける千秋。グイグイと唇に押し付けても頑なに舐めようとしない。


「舐めないと疲れたままだぞー?辛くないか?」


「…………ちゅーがいい」


 クソこいつ……。

 どうすれば舐めてくれるんだ……もういっそ放置するか……?いや、寝てる間に襲われちゃかなわん。

 ……なんでこんなこと考えにゃならんのだ……。そりゃ放ってはおけないが、ここまでわがままだとな……。


 うんうん唸って考え事をしていたらソロソロと千秋が顔を近づけてきた。


「んぎゅっ……」


 俺はその顔を押さえつける。


「おいこら……勝手にキスしたら、俺はお前を見捨るからな」


「んむーー…………」


 不満そうな声を漏らす千秋の口の中に指を突っ込んだ。もう無理矢理舐めさせるしかない。


「んぇ…………」


 観念したのか舐め始める千秋。とりあえずのところはこれで何とかなるか?

 チュウチュウと指を吸う千秋を眺める。……見つけた時は相当焦燥していたからな。ずっと一人で頑張ってきたんだろう、見捨てることは出来そうもない。


「はぁ…………」


 これからどうなることやら……。

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