お母さんとは違う
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最近、優希さんが私たちを避けている。……気がする。
忙しいのは分かるのだけど、なんか、私たちが近づいて来た時だけわざと忙しそうにしている気がする。夜も一緒に寝てくれないし。
それに、こっそり見ていたことがあるけど、ぼーっとしている時間も結構あるのだ。そんな姿も素敵だけど……。私としてはもっといっぱいお喋りしたいし、もっといっぱい、その、触れていたい。
そうっ、優希さん、私が腕に抱きつこうとすると、避けるのだ。今まではそれくらい当たり前だったのに。もっと凄いことたくさんしてたのに。
……そういえば、補給もしてくれなくなった。私はもともとしてないけど、響にもしてくれないのだ。毎日、私たちで補給し合えと言われているので、今はこまめに私の肌を舐めさせている。
最初は本当に忙しいのかなって思ってたけど……暇な時間があるなら、補給してくれてもいいのにって思う。
……やっぱり、私たちのこと嫌いになっちゃったのかな……。一緒にいられるところを見られると困ると言っていた。それは、優希さんが大人で私たちが子供だから……。
…………子供っぽすぎるってことかな。大人の魅力が、私には、ないから……。男の人ってみんなおっぱいが好きだって聞いたことがある。優希さんもやっぱりそうなのかな。だとしたら私は……優希さんの好きな人にはなれないのかな……。
はぁ、自分で言ってて悲しくなってくる。どうしたら私でも優希さんを振り向かせることができるんだろう。おっぱいかぁ…………。はぁ……。
別におっぱいがなくてもお喋りくらいしてくれてもいいと思うんだけどなっ。私は、それだけでも楽しいのに!
…………いや、嘘だ。本当は優希さんには私のことを好きになってもらいたい。けど、お喋りがしたいのもちゃんと本当なのだ。なんで、私達のこと避けるんだろう……。
優希さん…………。
………………そういえば……優希さんとこんな風になっちゃったのって、理科室に会いに行った後からだ。何か、怒らせるようなことをしてしまったのだろうか……。なにか……。あの券のせいかな……。やっぱり捨てた方が……いや、でもあと一回くらい…………。あ、使えばお話ししてくれるかも?……いや、もっと怒っちゃうかな……。
はぁ………………。
……………?………お母さん……?
葛藤しながら、響のお父さんとお話をしているお母さんを見て思い出した。たしかお母さんは、優希さんと二人で話をしていたはずだ。こんな風になっちゃったのは、正確にはその後からな気がする。
どんな話をしたんだろう?聞いてみよう。
私は響のお父さんとの会話が終わるのを待った。……なんか、お母さんすごく楽しそう。最近よく二人で話しているのを見かける。
地震があって仲良くなったのかな?私と優希さんと同じだ。そういう意味で言うと、地震が起きて良かったなって思ってしまうけど……。
なんて考えていたら、ようやく話が終わったようだ。私はお母さんの前に座った。
「お母さん、聞きたいことがあるんだけど」
「あら、凛。なあに?」
なんだかすごく上機嫌だ。いろんなことが起きて大変だけど、そんな中でも、お母さんが楽しそうにしているのを見られるのは、とても嬉しい。
「優希さんのことなんだけど……」
だけど、そんな楽しそうなお母さんはすぐにどこかへ消えてしまった。
「刃山さん、のこと?何かしら」
「……あの、前、優希さんと話があるって、ふたりでどこかに行っちゃったこと、あったよね?その時、何を話したのかなぁって……」
私は、お母さんの雰囲気が変わったことに戸惑いながらも、気になっていたことを聞いた。
「…………凛、大事な話があるの、聞いてちょうだい」
……?なんだろうか。優希さんと話したことと関係があること?
「……凛は、まだ子供なのよ。あまり、特定の大人の男の人と一緒にいるのは良くないと思うの」
特定の大人の男の人……きっと、優希さんのことを言っているのだ。
「どうして?」
知りたい。優希さんも言っていた。どうして好きな人と一緒にいてはいけないのだろう。
「それは……男の人は、怖いのよ?凛が嫌がることを無理矢理するかもしれないわ」
「優希さんはそんなことしないよ!」
「分からないでしょ?あの男だって、本当はずっと凛のこと襲おうとしてるかもしれないのよ?」
優希さんは、ずっと私達のことを考えてくれていた。最初からそうだった。心を読めなくなってもそれくらい分かる。
「……そういうこと、優希さんに話したの?」
「…………」
なんで、答えてくれないのだろう…………。
…………私は…………心を読むことにした。
本当は、もう人には使いたくないんだけど、どうしても知りたかった。お母さんが、優希さんになんて言ったのか。
そうして……読んで……私は、すべて理解した。
お母さんと優希さんがどういう話をしたのか。どうして優希さんが、私達を避けるようになったのか。
お母さんは優希さんに、私達と会わないよう命令していたのだ。私のいないところで。勝手に。
酷いよ……。私は、もっと優希さんと一緒にいたかったのに……。
「……なんで、私は優希さんと一緒にいちゃいけないの?」
「なんでって……、凛にひどいことをするからよ。あの男も醜い感情を凛にぶつけて、ひどいことをするに決まってるわ。凛は可愛いんだもの」
「……ひどいことって何?私が可愛いと、優希さんが酷いことするの?なんで?」
反射的に言い返してしまった……けど、そのくらいは私だって知ってる。その、ネットで見たこと、あるし……。
「それは…………」
…………………………わっ…………。
私は、頭の中に流れてくる、イメージに衝撃を受けた。
優希さんが、裸になって、その、私と抱き合って……わ、わわ……はぅ……。えっ!ゆ、優希さんが…………っ!ひゃーーっ!!そんな、ダメっ!こんなの、知らないっ!
お母さんが想像していることが、どんどん私の頭の中に送られてくる。とても、エッチで、とても、幸せなイメージ……。ドキドキして顔が熱くなる。
……でも、お母さんはよく思ってはいないようだ。
「と、とにかくっ、あの男は危険だから近づいちゃダメ。分かった?」
分からない。お母さんの懸念していることは分かったけど……私には全然納得できなかった。
「お母さん。私、優希さんのことが好きだよ」
だから、私の気持ちを言った。お母さんに分かって欲しくて。私の気持ちを理解して欲しくて。
お母さんはしばらく固まって、そして……
「だ、ダメ。お母さんは許しません。凛、きっと凛にはもっとふさわしい素敵な人が現れるわよ。もっと、大切にしてくれる人が……」
理解してもらえなかった。どうしてだろう……なんで、分かってもらえないんだろう。もっとふさわしいって、どういう人?その人は優希さんより素敵な人なの?そんなの……考えられないよ……!
「なんで?優希さんも素敵な人だよ!私のことを守ってくれたよ!大切にしてくれたよ!」
「…………きっと、それは、演技よ。男はみんな凛みたいに可愛い子を騙したりするの。凛もそろそろそういうのも勉強しないとね」
「……じゃあ、お父さんは?お母さんのこと騙してるの?お母さんは騙されてるってこと?」
「……そんなこと……ないわ。お父さんは私のことをとても大切に思ってくれる、素敵な男の人よ。もちろん凛のこともね」
……あれ?なん、だろう…………。何か、違和感……というか……。
「お父さんのこと……好き?」
「もちろんよ」
お母さんは笑顔で答えた。
嘘だった。
お母さんの一番好きな男の人は…………お父さんではなかった。
「ひ、響の……お父さん……?」
「っ……!」
私のお母さんは、響のお父さんが好きみたいだ。地震が起きた後、一緒に小学校まで行って、助け合いながら、生活して…………好きになったんだ……。
こんな、こんなの…………。
お母さんはお父さんを捨てたんだ。
「……お母さんは、響のお父さんが、好きなの?」
「な、なにをいっているの?凛」
……………………。
お母さんの頭の中のイメージが私に流れ込んできた。
お母さんは響のお父さんと……セックスをしていた。とても気持ちよさそうで、とても幸せそうだ。
でも…………私には、とても醜いものに感じられた。
お父さんは、お母さんにとっての素敵な人じゃなかったのかな。昔はそうだった?でも、今の素敵な人は響のお父さんで……。
好きな人ってそんな風に変わってしまうものなの?
私はどうだろうか。私は優希さんが好き。この気持ちが、変わる?別の人の方が好きになっちゃう?
…………考えられなかった。
私とお母さんは、違う気がしてきた。それなら私のこの気持ちがお母さんに理解できるはずもない。こんなに簡単に好きな人が変わってしまうお母さんには。
「り、凛……お願い、待ってちょうだい!」
私は席を立つと、静止するお母さんの声を無視して、その場を立ち去った。今は、お母さんの顔を見ていたくなかった。酷い気分だ……。
「響、どう?」
「んむ?オッケーらよ。なんとかなりそう。はむ……」
私は今、響に腕を舐めさせている。魔力補給だ。優希さんが乳首を舐めさせてくれないので、私たちで補っている。私の肌を舐めている響って、何だかちょっと可愛い。
「ねえ響」
「んむ?」
「響は、優希さんのこと、好き?」
「……?うん、好きだよ?」
「ふふ、私も好き」
親友が同じ人を好いている。不思議な感じだけど、今はとても嬉しいと思っている。
「なになに?どうしたの?」
響は補給をやめ、聞きモードになった。こういう時、響は優しくて、安心するなぁ。
「響はさ、優希さん以外の男の人を優希さんより好きになることってあると思う?」
「無いね」
即答だった。正直驚いているけど、私でも同じくらい早く答える自信があった。
「どうして?もっと素敵な人が現れて、響のことを守ってくれるかもよ?優希さんが、突然怖くなって、酷いことしてくるかも」
「うーん……でも、優希さん以外かぁ……うーん…………無いかなぁ。凛はどうなのさ」
「うん……私もおんなじかも」
ははは、と二人で笑い合った。響も同じ気持ちですごく嬉しかった。響は私と一緒だ。
「なんかさ、優希さんって私たちのことばっかり考えてくれるじゃん?だから私が優希さんのこと考えてあげたいっていうかさ」
「そう!それっ!なんかこんなに大切にされちゃったら、返してあげたくなるよね。あとかっこいいし」
「うん、かっこいい」
ふふふ、また二人で笑い合った。
そうだ、優希さんはいっつも私たちのことばかりで、自分のことを蔑ろにしている節がある。
補給の時だって、本当は恥ずかしいんだろうなってことも、実は何となく分かっているのだ。だから、少しでも気持ちよくしてあげたいと思って頑張っている。まぁ、ビクビクしてる優希さんも、とっても可愛いなと思ってやっているところはあるけど……。
そ、それに、今回のことだって……。お母さんに命令された後もいきなり私たちを突き放したりしなかった。きっと、私たちのことを思ってのことだ。急に突き放して傷つけないように。
優希さんは優しすぎるのだ。他の人を慈しむ心を持っている。一緒にいてとても安心する。
もし、急に怖くなってしまったとしても理由があると信じられる。例えば今回のように。
私は、他にどんな素敵な人が現れても、優希さんと響が結ばれたとしても、優希さんを好きなこの気持ちは変わらないんだろうな、と思えた。
簡単に好きな人が変わるなんて……考えられないよ。
「ねえ、響はさ…………私のお母さんと、響のお父さんが結婚したら、どう思う?」
「ええ!?それって…………私と凛が姉妹になるってこと?あれ?でも、凛のお父さんって生きてるよね?」
「ああ、うん、生きてる……。ごめん今のなし忘れて」
私は、少しでもお母さんの不倫を肯定しようとしていた自分を嫌になった。
お母さんがおかしいのだ。それは響と話して確信が持てる。
「凛…………」
私は心配してくれている響に、謝って補給を再開した。響は渋々といった感じだったが、舐めてくれた。
もう一度、お母さんと話そう。




