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異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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19/63

公民館

 ある程度、あの日の解明が出来たので俺たちはこの拠点を放棄することにした。

 この周辺は物資が少なすぎる。すでに荒らされている家がほとんどなので、手持ちの物資が尽きる前に大きく移動しないといけない。

 それに、黒宮さんと響の家にもちゃんと向かいたいしな。


「必要なもんは持ったな。よし、出発しよう」


 しかし、困ったことに進む方向には確信が持てていない。

 あの、俺たちが男たちに襲われた地点から離れる時、離れることを優先していたので、どの方向に走ったかを確定できないのだ。

 周りは地震によって森に変わっており、見通しも悪い。見慣れた景色も無く、地図を持っていてもあまり役に立たない。

 なので今できることは、なんとかあたりをつけて進みながら、見慣れたランドマークや看板がないかを探して、地図と同期をとることだ。

 よく、周囲を確認しながら慎重に進む。もちろん、罠なども警戒しながら。もう、あんな奴らが現れないことを願うばかりだ。




 しばらく進むと、見覚えのある大きめの施設が目に入った。町のイベントなどで使われる公民館のような施設だ。ランドマークとして申し分ない。これで地図が意味をなすようになる。

 だが、一つ無視できない要素がこの公民館にはあった。それは、この施設が外敵に備えて改修されていることだ。

 入り口は完全に塞がれ、周りには机、タンス、看板などで、バリケードが築かれていた。窓は全て板が打ち付けられており、明らかに防衛のための改修がなされていた。


「さて、どうしたものか」


「一度、声をかけてみますか?」


「うーむ」


 迷いどころだ。俺たちは一度襲われている。この公民館に生存者がいたとして、その人たちが友好的とは限らないのだ。しかし、友好的だった場合は、ここに保護してもらうことで、居場所が確保できる。当初の目的の一つを達成することが出来るのだ。


「……よし、声をかけてみよう」


 背に腹は代えられない。最大限警戒していこう。

 俺は、他のみんなを近くに隠れさせ、強化をかける。保険として黒宮さんを連れ立って近づいていく。

 ある程度近づいていくと、二階の窓が少し開き声をかけられる。


「止まれ、それ以上近づくな。ここに物資はない。襲うメリットはないぞ」


 男性の声が響いた。なるほどな。どうも人間に襲われた経験があるようだ。


「すまない、襲うつもりはない。俺は刃山優希(はやま ゆうき)。俺たちは海郷高校から他の避難所を探して歩いて来たんだ。どうか中に入れてもらえないだろうか」


「海郷高校?……結構距離あるな。モンスターどもに見つからなかったのか?」


「ああ、見つかってはいるが、なんとか処理できてる」


「なるほどな、能力持ちか?……その子は?」


「この子は黒宮さん。学校から一緒に避難して来たんだ」


「……嬢ちゃん本当か?」


「はい。優希さんと一緒に海郷高校から避難して来ました」


「……少し待て」


 ふぅ……。なんとか信用してもらえるだろうか。


 (黒宮さん、どう?)


 (はい、悪い人ではなさそうです。ただ、何度も襲われているみたいで、かなり警戒しています。あと、隠れているみんなはもうバレちゃってます)


 黒宮さんを連れて来たのは心を読んでもらうためと、相手に安心してもらうためだ。後者は役に立つかは分からないが……。しかしなるほどね、こそこそしてたのは見られてたわけだ。こりゃ入れてもらえるかは微妙だな……。

 しばらく待つと、別の大きめの窓が開き、そこから梯子が下された。


「入ってくれ」


「あ、ああ、ありがとう」


 予想に反して、招待を賜った。なんとかなるか?


「すまない、近くに仲間を待機させているんだ。その子達も呼んでいいか?」


「…………構わない」


 そんなこんなで全員入れてもらえることになった。

 中に入ると、複数人の視線が刺さった。


「ようこそ、歓迎するよ。私は柏木。よろしく」


「入れてくれてありがとうございます。刃山です。よろしくお願いします」


 その中の一人、四、五十代の人の良さそうな男性が歓迎の言葉をくれた。

 ぞろぞろと他のみんなも入ってくる。最後の一人が入るのを確認すると、梯子を引き上げ窓を閉める。


「しかし、よく生き残ってこれたね。モンスターだらけで大変だったんじゃないか?」


「ええ、だいぶ苦労しましたよ。でもおかげでここに辿り着くことが出来ました」


「はは、お疲れ様。まずはゆっくり休んでくれ。ちょっと人が多いので、スペースはあまりないのだが」


「お気遣いありがとうございます」


 なんと、人が多いとな。ここは避難所としてきちんと機能してたのだろう。もしかしたら最初の地震の時からとかか?

 柏木さんに案内してもらい、部屋を出る。すると、もうすでに何人か廊下に座り込んでいるのが見えた。軽く目で会釈する。

 一回に降り、広いスペースに出ると注目の目が集められた。すごい数だ。三十……四十人はいるか?公民館の大きさにしては多すぎる気がする。


「どうも、刃山です。よろしくお願いします」


 それぞれ軽く挨拶をする。おそらくこの避難所の主要な人物なのだろう何人かと挨拶を済ませ、生徒たちの紹介に入ると、


「かりんちゃん……?かりんちゃんっ!!」


 女性の声が上がる。と、同時に、


「ま、ママっ!!」


 生徒の一人が返事をした。

 どうやら、生徒のご家族がこの避難所にいたようだ。二人は走り寄り、強く抱きしめ合う。お互い涙を流し、再会を噛み締めている。

 良かった……。本当に。涙が出てきそうだ。周りからも鼻を啜る音が聞こえる。

 しばらくした後、母親が立ち上がりこちらに向き直る。


「あの、娘を、ありがとうございました……!」


「いえ、再会できて本当に良かったです。それに、お礼を言いたいのはこちらの方ですよ。彼女には何度も助けられました」


 嘘でもお世辞でもない。一緒に旅してきた彼女たち全員が協力してくれたから今がある。

 残念ながら、学校ですでに家族の死亡が確認出来てしまってる子や、行方不明になっている子もいる。再開できるだけでも、とても幸運なことなのだろう。

 ここまで頑張ってきて、良かった。今までやってきたことが報われた気がした。


 自己紹介を済ませたのち、物資の共有をすることになった。驚くことにここには、この人数を賄える物資が溜め込まれていた。モンスターが出現する前から周りの家々の物資を集めに集めたらしい。どおりでこの辺の物資が少ないわけだ。

 こちらから渡せる食料などがほとんどなくて申し訳ないが、しばらくは暮らしていけるだろう。

 また、ここでは屋上に畑も作ってあるようだ。もう自給自足するための仕組みを作り始めている。近々駐車場の方へバリケードや柵を広げて畑も広げていく計画らしい。

 素晴らしい。ここでは何も救助がないことを前提に、未来を向いて考えているようだ。


「そういえば、一つ質問なのですが、刃山さんは特殊な力を持っていたりしますか?」


 現状の共有をある程度してもらったあと、そのような質問をされた。


「ええ、まぁ大したものではないですけどね……柏木さんも?」


 俺は彼女たちとの力の差を思い出し少し悲しくなりながら、柏木さんに質問を返した。


「いえ、私はそのような力は持っていないです。筋力は強くなったんですがねっ」


 そう言って力こぶを作……れていない柏木さん。少しふくよかな方で、本業も力仕事とかではないのだろう。まぁ実際強くはなったのだとは思う。あの地震の時に皆体はおかしくなっているのだ。

 しかし、能力は無い、か……。


「ふーむそうなんですね。私も力はだいぶ強くなりましたよ。でも、一緒に旅してきた彼女たちの方が、力は格段に強いですね。」


「なるほど、やはりですか」


 そう言って、自分たちが筋力上昇や、能力について知っている情報を共有してくれた。


 俺が知らなかった情報としては、若い人の方が強い力を得ている傾向にある、ということ。

 ここの避難民の構成としては、三十代以上がほとんどだという。確かにここは大人ばかりだ。まぁ、地震が起きたのは平日だ。子供は学校に行ってるだろうし、避難先も学校なことがほとんどだろう。

 さて、そんな中でも大幅な筋力の上昇と特殊な能力を芽生えさせた人が若い人たち、ということだ。二十代の人が強い力を得ているようで、三十代を超えると筋力は強化されども、能力に目覚めることは今のところないらしい。

 ここで一番若い人が二十二歳でその人が一番強かったわけだが、今回俺たちが合流したことで一番若い子は十三歳の彼女たちになる。彼女たちが一番強い力を持つことになった。

 実際、後に、ここでも腕相撲大会が開かれたのだが、上位で争っていたのは彼女たちだけだ。分け方としては彼女たち女子高校生orその他、と言った感じだった。俺?俺のことはいいんだよ。聞くな。

 そして、重要なのはここに一人だけいる子供だ。この子はなんの能力も持っていないし、筋力の上昇も見られない。年は四歳と八ヶ月らしい。

 つまり、単純に若ければ若いほど強い、というわけではなく、下限があるということだ。今のところ十三歳はその下限より下ではないということが分かったわけだ。……子供の方が強いとか、大人の立場ないっすよね。


 まぁそういうわけで、能力込みの自己紹介を若い衆ですることになった。こちら側ももちろん自己紹介するわけだが……黒宮さんの能力だけはぼかして伝えることにした。相手に自分の思考を伝えることができる、とだけ。

 心を読まれるなんて、さすがに許容される能力ではないと思われる。全て正直にバラして、全員に心を読まれないようスイッチを切り替えてもらうことも考えたが、確かめる方法がないそれを信じてもらうにはハードルが高すぎる。

 よって、隠し通すことにしたのだ。誠実な黒宮さんには申し訳ないが、ここでの人間関係を穏便に済ませるため我慢してもらった。


 また、こちらからの情報共有もした。魔力についてだ。

 能力の自己紹介の時に感じたが、みなとても疲弊しているように感じた。見覚えがある症状だ。おそらく補給しようとした人はいないのだろう。

 俺は魔力と能力の関係、補給方法を教えた。俺が乳首を吸わせて補給していることは言ってない。当たり前だろ。

 この中には、二十代前半の恋人と思われるペアもいたが……まぁ、この避難所の密集度で致せという方が無理か。相手がいない人は……まぁ、新しくカップルが成立するかもな。あぶれた人は……いや、これ別に俺が考えることじゃないわ。

 さて、この流れで気づいたことがある。能力を持っている人は全員しっかり魔力枯渇していたのだ。

 俺を除いて。

 まだ比較対象が足りないだろうか。俺と同じ年齢の男性もいたが、枯渇していたようだ。

 うーん謎だ。今のところ例外という感じがしてならない。まぁ、魔力補給しなくていいんだからメリットはあれどデメリットはないので、いいのだが。

 ただ、枯渇しているやつ全員、俺の口やら耳やらを見つめてるのを感じて背筋が凍った。これも例外ってことなのか?


 まあ、そういうわけで情報共有も終わり、ひと段落ついた。魔力についての情報は有益だったらしく、俺のここでの立ち位置は悪くない気がする。他の能力者とも和気あいあいと、話ができた。

 ようやく安心して落ち着ける場所に辿り着き、生き残った生徒たちも全員無事。黒宮さんと響の家庭訪問はまだ終わってないが、少し落ち着いたら協力者を募って連れて行ってあげよう。優しそうな人ばかりだったしきっと大丈夫だ。

 俺は今後の展望が明るく開け、肩の荷が降りるのを感じた。

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