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異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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12/61

大道芸人集団

 俺は屋上で狩りをしながら、先ほどのことを思い出していた。

 実に尊い友情を見た。二人の間でなにがあったか分からないが、なにか、通じ合ったものがあったのだろう。なにせ幼馴染で親友だと言っていたし、二人にとって互いの存在は特別だろう。

 状況が変わって積もる話でもあるのか、今は二人きりで教室で話をしている。今のところ狩りでの危険はさほどないし、屋上組は紐を引っ張るだけなので、こっちは二人減るくらい問題ない。

 しかし、黒宮さんには驚いた。他人の心を読む能力か……。FBI捜査官もビックリな、人間離れした力だ。いや、筋力が強くなったことも十分すごいことだが、まだ人間の能力の延長上にあるというか……。

 黒宮さんのそれは読心術だとか、そんな生やさしいものではなく、実際に心を、思考を覗き見ているように思える。マジックでもインチキ超能力でもなく、マジのテレパシーだ。

 モンスターの思考も読み取れるという話だ。きっと今後、この異常事態の中で彼女の生存率を上げてくれるだろう。

 しかし、少し懸念点もある。心を一方的に読まれることによる、人間関係の不和。人間誰しも表に出していない言葉や感情があるだろう。それはどれだけ友好的であってもだ。もし、思ったこと、感情の全てを包み隠さず出しているような奴がいたら、そいつの周りに人は近寄らない。相手のことを思って言葉を飲み込むことも、人間にはある。

 みんな彼女を受け入れてあげられるだろうか。


 なんて、別のことを考えながら狼駆除をしていたからだろうか、俺は重大なミスをしてしまった。……なんて事はなく、昨日と同じように淡々と狼どもを処理した。簡単すぎて、拍子抜けするくらいだ。今日は5頭殺った。


 俺は狩り組の狼たちが戻ってくるまで、少し生徒たちと話をすることにした。


「いやぁ黒宮さんの能力にはビックリだよね。あの力があれば、もしかしたらもっと簡単にここを脱出できるかも」


「ですよね。相手の考えてることが分かっちゃうなんて……」


「モンスターがなに考えてるかも分かっちゃうって言ってたもんね。」


「ああ、危なくなる前に逃げることができるだろうし。きっと黒宮さんがいれば、みんなが狙われてる時でもすぐに助けに行けるぞ」


 俺は黒宮さん上げを始めた。少し露骨だっただろうか。実を言うと、すでに黒宮さんに対してあまりよく思ってない子らもたぶんいる。今も少し、顰めっ面だ。

 まぁ気持ちはわかる。俺だって心を読まれているとなると、少し身構える。たとえ相手が女子高生であろうが。もちろん黒宮さんに対して、悪感情を抱いているわけではない。彼女はいい子だ、嫌う方が難しい。

 何事も起きないことを祈るばかりだ。





「実は私もみんなに話したいことがあって……」


 と、一人の生徒が言った。なんだろうか、まさか黒宮さんをハブにしようとか、そういう話?そういえば女子のいじめは陰湿だって聞いたことがある。こういうとろころから外堀を埋めてくるのか?

 俺が身構えていると、その子は手のひらをこちらに向けた。な、なんだ?

 混乱していると、髪が揺れて風が強く吹いていることに気づく。ここは屋上だ。もともと風を感じやすい場所だが、この強さは……。


「君がやっているの?」


 彼女はコクリと頷く。

 試しに色々やってもらった。風の吹く方向は自由自在、強さも調節出来るようで、範囲を狭めれば人間を押し倒すこともできるみたいだ。もっと強くもできるみたいだが、危なそうなのでやめてもらった。


「すごいな!魔法使いみたいだ」


「エヘヘ」


 すごいことだ。もう近頃はいろんなことが起きまくっている。魔法使いの出現もあり得なくはないのだろう。感覚が麻痺している気がする。


「あ、あのぉ……、実は私も……」






 そこからはカミングアウト合戦になった。みんながそれぞれ、火を出したり、石のブロックを金属に変えたり、腕を剣に変えたり。まるで大道芸人集団だ。


「は、はは……すごいね、みんな」


 驚く心が完全に麻痺してしまった。感情のメーター最大値を常に叩かれまくっている。

 一人の生徒が、俯いてかたまっていた。どうしたのだろうか、声をかけようとした時、


「あ、できた」


 その子が呟く。曰く、床を透視していたらしい。自覚がなかったが、みんなが能力を披露していく中で、なんとなく自分にもできると感じたらしい。

 能力が生えたということか?自覚はなかったけど、周りに触発されて覚醒した、みたいな?

 ……なるほどね?俺は覚醒して手から火を出し、床に触れて金属に変え、腕を剣にして舞い、突風を起こして髪を巻き上げる。……イメージをした。


「おにーさん、なにしてんの?」


「いや……」


 なにも……な゛かった。




 能力の検証でワイワイしているのを、危ないからと少し離れて眺める。俺以外の女の子全員が何かしらの能力に覚醒した。どうやら一人一つの能力を持っており、それを派生させて様々なことができるらしい。火の玉を飛ばしたり、腕を剣ではなく、槍にしてみたり。風の範囲と強さを変えるのもそうだ。

 なんか、とても楽しそうだ。緊張感がないんじゃないだろうか。周りの狼は全て駆除したとはいえ、狩り組の狼がすぐに戻ってくる可能性も0じゃない。能力だって、まだ覚えたてだろう、もっと慎重に扱うべきだ。はぁ……これだから子供は……。


「これ、なんです?なんかすごいことになってますね」


 後ろから戸惑ったような声をかけられる。黒宮さんだ。話し合いは終わったのか、二人とも困惑しながらも晴れやかな顔をしていた。少し泣き腫らした後があるような気もするが、触れないのが吉だろう。

 俺は、先ほどまでの出来事を二人に話した。


「ほぇー。なんか、みんな魔法使いって感じ?すご……」


 はっ。そういえば、この中でなにも特別な能力がないのは俺と響だけでは?黒宮さんは派手ではないとはいえ、強力な能力を持っているが、響はノー能力だ。良かった。俺は独りじゃなかったんだ。


「うーん、にゃるほどね、こんな感じかな?」


 響はそう言うと、近くにあった布切れ視線を合わせ、発火させた。


「響すごいっ。今のが響の能力ってこと?」


 黒宮さんがはしゃいでいる。


「うん、なんか温度を上げ下げできる、みたいな?こう、空間を意識して、グッてやったら、温度がグンッて上げられるみたい」


 俺は、布切れ目がけてグッてやった。グッ……グッ……。当然なにも起きない。

 俺の心は仄暗い霧で覆われた。何も見えない。まるで世界で一人だけになってしまったような。いや、世界から俺だけが弾き出されてしまったような。俺だけがいない街。


「あ、あの、優希さん、その、元気を出してください……きっとあるはずです!優希さんだけにしかできないこと」


「あ、あぁそうだな、ありがとう」


 黒宮さんが俺の孤独な世界を読んだのだろうか、慰めの言葉をかけてくれる。いい子だ。だが今は、そんな優しささえも少し痛い。


「優希さんっ!実は、少し確かめたいことがありまして!」


 黒宮さんは話題の転換を図るように大きな声で話す。そうだな、いつかきっと、俺にだって何かあるはずだ。頼む。


「確かめたいこと?」


「はい、えと、優希さん。私に心を読まれたくないって思ってみてくれませんか?」


「ん?わ、分かった」


 ……いや、分からない。どういうことだろうか、読まれたくないって思う?とりあえずやってみようとするが、よく分からない。どういう感じだろうか。


「あ、オッケーです」


「え?」


「私今、優希さんの気持ちを読み取れないです」




 黒宮さん曰く、心を読めるようにするかは、その当人が切り替えることができるらしい。個人的には切り替えた感覚はないのだが、その思考こそがトリガーらしく、それを黒宮さんが認識することで、黒宮さん側でブラインドが掛けられるらしい。黒宮さんに心を読まれたくないです、と頭の中で喋る感覚だろうか。

 なんか、ちょっと眉唾だが、教室で二人で色々検証してみたらしい。心が本当に読まれて無いかどうかは確かめようが無いが、黒宮さんのことだ、きっと嘘ではあるまい。全面的に信用しよう。

 もうひとつ、黒宮さんの感情が他のみんなに流れ込んできたことについて、それも彼女次第でコントロール出来るらしい。コツを掴むまではよく分からなかったようだが、自在に自分の思考を相手に伝えることができるのだと。 

 まだ強く意識しないと、コントロール出来ないみたいだが、要するに僕らはいつも以心伝心ができると言うことだ。


 すごいな?つまり説明の誤認による齟齬が完全に無くせるわけだ。モンスターと相対したとしても、相手の思考を読み、それをみんなに伝えて……最強か?会社員時代に欲しかった。


「凄いぞ黒宮さん。その能力があれば、よっぽどのことがない限り負けなしだ」


「そ、そうなんですか?ありがとう、ございます?」


 黒宮さんにはあまり有用性が伝わっていないようだ。まぁこんな世界になってしまったんだ、じきにわかる。わかってしまうんだろう。


「それで、みんなには常に心を読めないモードにしていてもらいたくて……」




 黒宮さんの提案により、みんなの心が読めない状態になった。つまりは今まで通りということだ。まぁ、誠実な彼女らしい提案だ。心が読めてしまうこと自体が負担になってしまっていたに違いない。

 もし、自分に同じ能力があったらどうだろうか?自分だけ心を覗き込んでしまっていることに罪悪感を覚え、苦悩して………いやぁ、悪用しそうだわ。相手の考えてることが手に取るようにわかるなんて。利用しない手は無い。

 自分と黒宮さんの格の違いを突きつけられながら、みんなの能力発表会を眺める。俺以外の、みんなの能力発表会だ。

 凄まじい、の一言に尽きる。少し前だったら各メディア、ネットで話題になり続けるだろう。魔法使いだ。現代科学もひっくり返る。きっと彼女たちならこの世界でも逞しく生きていけるだろう。


「優希さん、ありがとうございました」


「うん?」


 黒宮さんが、俺の隣に腰掛ける。なんのことだろうか?


「私がみんなにこの能力をカミングアウトした時、私が不利にならないように、色々考えて行動してくれていましたよね。ごめんなさい、心を読んじゃってました」


「あぁ……。まぁそういえば、そうだったかもな」


 自分の思考が筒抜けになる。やられた側からすればそりゃ不快だろう。俺だって例外じゃ無い。こんな時に不和を起こしたくないってのもあったが……。

 単純に、これが理由で黒宮さんに嫌われてほしくないと思ったのが一番の理由かもな。


「でも一番考えて、勇気を振り絞ったのは、黒宮さんだ。よく話す決断をしてくれたよ。普通の人にできることじゃ無い、頑張ったね」


 そうだ。さっきも考えていたが、もし自分にこの能力があったら、そのことを他人に話すか?俺だったら隠し通すね。多少病みはするだろうが、それでも、何がなんでも隠し通すと思う。誰だって心を読まれたく無い。自然と、人は離れていく気がする。会ってくれる人も分厚い盾を持って近づいてくるだろう。

 黒宮さんは、うるうるとした目でこちらを見る。


「はい……」


 そう言うと俯いてしまった。


 俺はしばらくの間、彼女の隣に座っていた。

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