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異界融合 〜崩壊した世界で少女達と共に生き抜く〜  作者: レモンGUN
一章

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10/17

スーパーJK

 俺は響を抱えて屋上からゆっくりと教室に戻った。さすがに隣の教室の惨状を、今の響に見せるのは憚られた。


「優希さんっ!無事で……響っ!?」


 教室に戻ると、黒宮さんが駆け寄ってきた。


「凛……おはよ」


「響っ、無事だった!よかった!」


 黒宮さんは響を抱きしめた。俺ごと。

 ギュゥギュゥと力強く抱きしめられる。そりゃ、昔からの幼馴染で、一番の親友だもんな。生きていてくれてこんなに嬉しいことはないだろう。

 ……しかし、すごい力だ。振り解こうとは思わないが、これは、ちょっと、


「うぐぅわ……凛、く、苦しい」


「へ?あっ、ご、ごめん」


 黒宮さんは再会の抱擁を終え離れた。彼女のさば折りから解放された俺は、響を下ろし、念のため腰の様子を確認した。彼女たちは手を握り合い再会の喜びを噛み締めている。

 助けられて本当に良かった。あと少しでも行動が遅かったらと思うと、背筋が凍る思いだ。





 寝起きで物音と悲鳴を聞いた俺は、すぐに窓から外に出た。状況把握に向いていると思い、隣の教室ではなく、屋上へそのまま向かった。

 すると、静かな早朝の中で騒音を立てている場所はすぐにわかった。そちらに向かい見下ろすと、あの狼が何棟か設置してあるプレハブの一つに顔を突っ込んでいるのが見える。同時に女の子の悲鳴も聞こえた。

 助けないと!だがどうやって?なにか、投げられるものはないかと辺りを見渡すが特にめぼしいものは見つからない。

 掴んでいるフェンスに目が行った。おもむろに一つの支柱を掴み、勢いよく捻る。数度繰り返し、捻じ切ることが出来た。つくづく人間離れしてると我ながら思う。

 これを槍投げのように投げようと思ったが、当たる気はしない。当たるまでちまちま投げ続けている暇は無いと考えた俺は、思い切ってそこに向かって飛び降りた。

 顔を突っ込んでいる間抜けな狼の背骨目がけて支柱を突き込む。


「うぉらぁっ!」


 ズドン、と深々と突き刺さった感覚。しかし狼は即死はしなかった。暴れ回る狼から支柱を引き抜き、別の箇所に刺し込む。なんとなく今の俺の筋力なら出来る気がしたが、こうもすんなり入るとは思わなかった。

 何度か抜いて、刺してを繰り返す。今までの無念をこいつに少しでもぶつけたくて、無心で刺しまくった。

 完全に動かなくなるまで続けた後、そいつを引き摺り出し投げ捨てる。鍵のかかっているドアを無理矢理引き剥がすと、そこには響がへたりこんでいた。




 それから少し危ないところもあったが、無事ここに戻ってこれた。

 響が生きていてくれて本当に良かった。失われそうだった命を救うことが出来た喜びに、俺の心も少し救われた気がした。


 しばらく喜び合っている生徒たちを眺めた後、朝食をとることになった。

 俺がいなかった間に校庭の惨状をみんなで確認したらしい。相当なショックを受けただろう。だが同時に他の生徒の救出に成功もした。感情を乱高下させて悪いが、いい出来事で払拭出来たと思うので良しとしてほしい。


「さて、まず昨日探索して分かったことをもう一つ報告させてくれ」


 昨日の夜の重い空気の中話せなかった報告。


「この学校は狼どもに囲まれてる。多分縄張りにでもされてるんだろう、集団で眠っているのを確認できた」


「そんな……」


 昨日、屋上から狼どもが集まって眠っているところを見て心臓が止まるかと思った。だが、今朝気づいたこともある。奴らの数が異様に少ない。おそらく狩りにでも出かけているのだろう。少しここに残していったのを考えると、きちんと縄張りとして守っているという認識もあっている気がする。

 そして、夜しっかり眠っているところを見るに昼行性で、朝から狩りに出る習性がある。


「つまり、この時間帯なら脱出できるかもしれないってことだ」


 脱出してどこに行くのかと聞かれれば答えに詰まるが、こんな狼の巣のど真ん中に比べればどこもマシだろう。


「あ、でも、実は外に別の、変なのがいて……」


 響が外の情報を話してくれる。同時に、経験してきた壮絶な帰り道の様子を聞いて、本当に、よく無事で帰ってきてくれたと思う。よく頑張った。盛大に労ってやりたい。しかしそうか、外にも化け物が湧いているのか……。対応を考えないとな。

 それに、響の逃走劇を聞いて確信したことがある。それも話しておかないと。


「それともう一つ」


 そう言って俺は立ち上がり、バリケードとして使っていない机を持ち上げ、裏返しにして置いた。

 そして、足の一本の根元を握り、片手で捻じ切る。


「ひぃっ……」


 引かれた……が、想定の範囲内だ。


「あの地震の後から妙に筋力が上がった気がするんだ。走るスピードも速くなったし、こんな風に力も強くなった」


「優希さん、すごい……」


 黒宮さんが褒めてくれるが、それはまだ早い。


「それで、みんなに確認してもらいたいんだが……黒宮さん、これを折り曲げてみてくれないかな」


 そう言って、ネジ切った机の足を彼女に渡す。


「えぇっ!?そんな……私そんなこと……」


 そんな野蛮なことできませんわよ、みたいな感じで渋々受け取るが、しかし ──────。

 クニャリと、その棒は形を変えた。心なしか俺よりも簡単に曲げている気がするが……気のせいだろうか。 


「うわぉ。やるねぇ凛」


「ええっちょっと、なにこれ!?優希さん何かしました?」


「いや……タネも仕掛けもない、ただの金属の棒だ。みんなも確認してみて欲しい」


 なんか俺よりも力が強いような気がして少し恐ろしいのだが……。

 結果として、全員がスーパーパワーを手に入れていることがわかった。


「こういうわけだ。いや、どういうわけかは分からないが、地震の後、みんなは強くなった。力も強いし、走るのも速い」


 アメコミヒーローのように、あるいは異世界転生したラノベ主人公のように、強力な力がある日突然手に入ったのだ。こんな状況じゃなければ飛び上がって喜んだだろう。

 しかし、現実は現実。今俺たちは窮地に立っている。ここで重要なのはこの力をどう使うかだ。俺は、先ほどから考えていたことをみんなに話すことにした。


「そこでだ、俺たちみんなで力を合わせて、狼退治をしないか?」


 少しざわつく。

 狼が少ないうちにここから脱出することも候補としてあるが、響の話でも聞いた通り、どうやら街中には狼以外の化け物がうろついている可能性があるらしい。

 それを考えると一番最悪なパターンは、外の方が危険だと分かり、すごすご学校に戻って来た際に狼どもと鉢合わせる、あるいは挟み撃ちにされることだ。そうなったらもう詰みだ。

 それを考慮するなら、一度セーフエリアを確保するのが良い選択だと考えたわけだ。

 女子高生に狼と戦えと言いだしたら、そりゃ頭がおかしいとでも思われるだろう。ただ、この子達はただのJCじゃない。スーパーJCだ。


「大丈夫。なにも真っ向から殴り合おうなんて考えちゃいない。やり方はいろいろある」


 そうして狼撲滅委員会の作戦会議が始まった。





 ある程度話がまとまってきたので、俺はずっと気になっていたことを確かめるためにある提案をした。


「黒宮さん、腕相撲をしないか」


 大の大人が女子高生に腕相撲を申し込む。イカれてるが待って欲しい。これは重要なことだ。俺の中でのヒエラルキーが今揺らいでいるのだ。


「?いいですけど……いくら力が強くなったと言っても優希さんにはさすがに……」


 そんなか弱い少女のようなポーズをしているが、どうだか。確かめねば。


「まぁまぁものは試しよ、さ、座って」


 そう言って一つの机と二つの椅子を用意する。渋々といった感じで黒宮さんは席についた。対面に座り腕を出す。


 俺は彼女の小さな手を容赦なく握り込む。準備完了。一人の生徒に合図をお願いする。

 ちなみに響は今は寝ている。夜中ずっと走り回っていたのだ。体力は限界だっただろう。ゆっくり休んで欲しい。


「ファイッ!」


「っ!」


 戦いの合図。嫌な予感があったので最初から全力だ。そして、その予感は的中する。動かない。腕の筋肉に全集中し、押し込むビジョンを思い浮かべ、腕を倒す。

 び、びくともしない……。

 チラと黒宮さんの表情を見る。困惑したような表情をしている。眉根を下げ、本気出してもいいのかしらとでも思ってそうな顔だ。屈辱だ。


「く、黒宮さん…やるねぇ……。まだ、本気じゃない、んじゃない?」


「へっ!?い、いえ本気です。とても私では勝てそうにないです!うーん!」


 今更がんばり演技を始める黒宮さん。拮抗している時点でもう俺のプライドはズタボロだった。その上で気を使われ手加減をされる。く、屈辱の極み……!なんとか俺のプライドを守る手立ては……。


「ふ、ふふ……そうかなぁ?余裕そうに見えるけど、なぁ……。そうだ、俺に勝てたら、何かご褒美を、あげるよ……なにか……例えば……何でも言うことを聞いてあげる券、とか ──────」


 瞬間、ズドン、と音が響く。

 シン、と教室が静まり返る。なにが起こったのか、一番初めに理解したのは俺だろう。手の甲の痛みによって自分の負けを心に刻み込まれる。


「……はっ!あっ、いやっ……もうっ!優希さん!き、急に力を抜いたでしょ!危ないですよ!」


 耳を真っ赤にして勝利に対する弁明をされた。まるで悲しきモンスターが力加減を間違えて大事なものを壊してしまった時のよう。……実際急に力を入れて腕を回すのは危ない。腕相撲でも大怪我はする。俺の手の甲をさすってくれている黒宮さんを見ながらそんなことを思う。

 しかし、すごい力だ。薄々感じていたが、俺なんかより強い。いや、黒宮さんだけじゃない、ここにいる生徒全員の行動の節々から凄まじいパワーを感じる。俺との違いは何だろうか?年齢なのか、性別なのか。この学校の教育とかか?どんな授業を受けていたのか気になる。

 謎が多いが、ひとつ明確にわかることといえば、今日、この瞬間、この教室で一人の男が死んだと言うことだ。




 俺は念の為、全員に勝負を挑んだ。万が一ってこともある。情けないが、一番下ではないという証が欲しかった。背に腹は変えられない。まぁ、大方の予想通りその証は手に入らなかったが。

 それから腕相撲大会が始まったが、俺以外は全員いい勝負をしていた。さっきまで狼を殺す算段を立てていたと言うのにだいぶ緩い空気になった。まぁ暗くなるよりはマシかね。注意することでもない。死人に口なしだ。


 

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