第14話 交差点
第14話 交差点
登録者301人。
スポンサー22人。
ボランティア6人。
数字は順調だ。だが、この夜は少し違った。
凛からのメッセージ。
「ちょっと話せる?」
珍しく、絵文字も句点もない。
正義はすぐに電話をかけた。
「どうした?」
少しだけ間があって、凛が言う。
「今日、社内会議でRE:PUBLICの名前が出た」
正義の背筋が伸びる。
「どんな文脈で?」
「スポンサー企業のリスク管理の話。最近、企業広告と政治的コンテンツの距離が議題になってる」
広告代理店の現場だ。クライアントはブランド毀損を嫌う。政治的な火種には敏感だ。
「うちのクライアントの一社が、RE:PUBLICの記事リンクを社内回覧してたらしい」
「……マジか」
まだ登録者は300人規模。だが、企業側のレーダーには映り始めている。
凛は続ける。
「悪い意味じゃない。ただ、“どの立ち位置なのか分からない”って」
正義は一瞬、言葉を探す。
立ち位置。
中立と言い続けてきた。だが企業から見れば、それは曖昧さでもある。
「どう説明された?」
「“国民スポンサー型の透明性メディア”って」
凛の声は冷静だ。だが、その裏に緊張がある。
「うちの上司が言ってた。“広告出稿は難しいが、動向は追う”って」
正義は窓の外を見る。
追われる側になり始めている。
「凛、迷惑かかるか?」
少し沈黙。
「正直に言うと、多少は」
その一言が重い。
RE:PUBLICは個人の挑戦だったはずだ。だが、凛の職場に波及し始めている。
「でもね」
凛が続ける。
「私は嫌じゃない」
「……なんで?」
「本気でやってるの分かるから」
正義は言葉を失う。
広告代理店の世界は、数字と安全とブランドで回る。そこに“透明性”という曖昧な価値を持ち込むことの難しさを、凛は誰よりも知っている。
「ただし」
凛の声が少し硬くなる。
「企業と対峙する構造になるなら、設計を変えなきゃいけない」
「設計?」
「企業広告を受けないなら、完全に市民モデルでいく。受けるなら、基準を明確にする。どっちつかずが一番危ない」
正義は机に置いたノートを開く。
“企業広告:未検討”
今はβスポンサーだけ。だが、いずれ選択の瞬間が来る。
「今は市民モデルで行く」
正義は即答する。
「迷わない?」
「迷う。でも、今はそれしかない」
電話を切ったあと、Slackを見る。
新しいメッセージ。
“地方議会データ、来週3自治体追加できます。”
チームは前に進んでいる。
ダッシュボードを見る。
登録者:318人。
今日だけで+17。
数字は伸びている。だが、成長は単純ではなくなった。
RE:PUBLICは、個人と市場の間にあった。
そこに、企業という第三の軸が加わろうとしている。
正義は深く息を吸う。
登録者318人。
スポンサー22人。
ボランティア6人。
まだ小さい。
だが、交差点に立ち始めた。
理想、市場、企業。
次に選ぶ道で、形が変わる。




