第13話 小さなミス
登録者257人。
βスポンサー21人。
ボランティア6人。
正義は、初めて“回っている”という感覚を持ち始めていた。Slackは毎日動き、自治体データは次々と整理される。地方ページの更新頻度も上がり、滞在時間はさらに伸びていた。
登録者:289人。
「300が見えるな」
だが、その夜。
Slackに一つのメッセージが流れた。
“〇〇市の教育費、前年より減っているって表示になっていますが、増えていませんか?”
正義の手が止まる。
ページを開く。確かに前年比−3.2%と表示されている。だが元資料を確認すると、繰越金込みで+1.1%だ。
計算ロジックを見直す。
原因は単純だった。前年データの一部項目が別カテゴリに移動していた。それをチームメンバーが気づかずに集計していた。
悪意はない。だが、結果は誤表示だ。
「……やばいな」
透明性を掲げる媒体で、数値ミス。
すぐにSlackで確認する。
《この計算、どの資料参照しましたか?》
数分後、担当のメンバーから返信が来る。
“すみません、速報値のPDFを参照していました。本決算版を確認していませんでした。”
正義は深く息を吸う。責めたい気持ちはない。自分も最初は同じミスをした可能性がある。だが、これは信頼に直結する。
「どうするか……」
凛に電話をかける。
「ミス出た」
「どれくらい?」
「前年比逆になってる」
凛は即答する。
「即公開修正」
「炎上するかも」
「隠したら終わる」
その言葉で、迷いは消えた。
正義は公式アカウントに投稿する。
《〇〇市教育費の前年比表示に誤りがありました。速報値と本決算値を混同していました。現在修正済みです。参照資料と計算式も更新しました。ご指摘ありがとうございます。》
同時に、ページ下部に“修正履歴”欄を追加する。
・修正日時
・修正内容
・原因
・再発防止策
Slackにも投稿する。
《今後は速報値と本決算値の二重チェックを必須にします。テンプレートに確認項目追加します。》
数分後、担当メンバーから返信。
“申し訳ありませんでした。チェックリスト作ります。”
責任の押し付け合いは起きない。だが、空気は少し重い。
Xではすぐに反応が出る。
《やっぱりミスあるじゃん》
《正直に出してるのは評価》
《完璧じゃないのに監視とか言うな》
登録者は一時的に増加が止まる。289人のまま動かない。
正義はダッシュボードを見つめる。
ここで信頼が削れたのか。
だが翌朝。
登録者:296人。
減っていない。
さらに、チャットにメッセージが届く。
“ミスを公開する姿勢が信用できます。”
正義は椅子にもたれ、ゆっくり息を吐く。
完璧であることより、修正できること。
透明性は、正しさの証明ではない。プロセスの公開だ。
夜。
登録者:301人。
300を越えた。
偶然かもしれない。だが、ミスを隠さなかった直後だった。
Slackでは新しいテンプレートが共有されている。
《決算値確認チェックリスト v1》
チームが、進化している。
登録者301人。
スポンサー22人。
ボランティア6人。
小さなミス。
だが、それは組織の最初の試練だった。
正義は画面を閉じる。
信頼は、積み上げるものではない。削れながら、残るものだ。
RE:PUBLICは、少しだけ強くなった。




