第九十八話 デレン王国 〜田川晋也編〜
〜田川晋也の視点〜
――――バーシト王国
クリスの『革新的な演説』を聞いたバーシト王国の民達は、完全にクリスに対して心を許して仕舞った……。
そして、演説が終わって国民達の興奮が冷めやらぬ内に、『白騎士ベルター』がクリス達に向かって、とある『御願い』を頼み込んだ……。
「あの、少しだけ宜しいでしょうか……? 実は、貴方方に頼みたい事が有るのですが……」
「おやおや? 何でしょうかベルターさん? この、ワタクシに出来る事で有れば、何なりと御申し付け下さい……」
そのニコッと微笑んだクリスの顔を見たベルターは、安心し切った表情を浮かべると、直ぐ様クリスに向かって頼みたい事の詳細な説明をし始めた……。
「あのですね……。 実は私達は、これから『とある国に対して戦争』を仕掛けようかと思っていた所でしてね……? ですから、是非ともクリスさん達にも手伝って貰いたいのですよ……っ!」
すると、続け様に『赤騎士ドマル』と『黒騎士ハッチェス』も必死にクリスに向かって懇願する……。
「頼むッ! だって、クリスさん達の様な頼りになる人達が俺達の増援に加わってくれれば、とても心強いからな……っ! だから頼むよぉ〜ッ!」
「どうか、協力して貰いたいのです……ッ! 我等『3人程度の騎士』だけでは、簡単に返り討ちにされて仕舞います……ッ! どうか、私達と一緒に来て頂けませんか……ッ!?」
「フム? と言うより、3人程度の戦力で良く他国に戦争を仕掛けようとしましたねぇ……? さてと、どう致しましょうかねぇ……?」
すると、その会話を聞いていた『参謀ムゴズ』が、少しだけ興味を示した様子で会話に加わって来た……。
「えっと一応、御聞きしたいのですが、一体『何と言う名の国』に対して、戦争を仕掛けようとしているのでしょうか……?」
ムゴズが騎士達の返答を待っていると、白騎士ベルターがそっと小声で語り出した……。
「えっと、『デレン王国』って知っていますでしょうか……? そのデレン王国と言うのは、この世に『悪人』を大量に排出している最悪な国でしてね……? なので、『自国の平和』を願っている私達にとっては、あのデレン王国と言うのはとても『邪魔な存在』なのですよ……ッ!」
「フムフム……。 なるほど、事情は分かりましたよ。 それならば、このワタクシ達共々、そのデレン王国とやらを滅ぼす為の協力を致しましょうとも……っ! あ、因みに報酬は要りませんからね?」
すると、クリスの口から報酬を要らないとの言葉を聞いた3人組の騎士達は、まるで驚きを隠せない様子で、慌ててクリスの下へと駆け寄り始めた……。
「えぇッ!? いえいえ、私達から頼み込んでいるのですから『報酬』は、しっかりと払わせて下さいよ……ッ!」
すると、その騎士の意見に対して、晋也も同意する……。
「そ、そうですよクリスさんっ! タダ働きなんて割に合わないですよ……っ!」
「うーむ、そうは言ってもですね晋也さん……。 ここは、一先ず彼等との友好度を上げる事の方が先決だと思うのですが……?」
「う~ん……。 確かに、そう言われちゃうと弱りましたねぇ……。 まぁ、最終的な判断はクリスさんに一任しますよ……。 俺は一応、金目の物は有り難く受け取った方が良いと思いますけどね……」
「フフッ、それでは『コレ』ならどうでしょうかねぇ? 例えば、強いて欲しい物を挙げるとするならば、それは『バーシト王国の民達の喜んだ顔』とかは如何がでしょうかねぇ……? フフフッ!」
「えっ? それってどう言う……?」
すると、クリスからその言葉を聞いた3人組の騎士達は、羨望の眼差しをクリスに浴びせながら、思わず感激の声を上げた……。
「なっ!? クリスさんの求める報酬は、国民達の喜んだ顔……ですかッ!? おぉ……ッ! 何と『素晴らしい心』を持っているのでしょうか……ッ! この私、年甲斐も無く思わず感激して仕舞いました……ッ!」
「くぅ〜ッ! やっぱりクリスさんって格好良いぜぇ〜ッ! まるで、『正義のヒーロー』だなぁッ!」
バーシト王国の騎士達から『御褒めの言葉』を貰ったクリスは、薄ら笑いを浮かべながら照れ臭そうに頬を掻いた。
「フフフ。 正義のヒーローですか……! 正しく、今のワタクシ達にピッタリな言葉ですねぇ……? ねぇ、晋也さんもそう思いませんか?」
「えっ!? あ、そうですね……っ! 俺等は、この世界を救うヒーローなんですよ騎士の皆さん……ッ! あっはっは!」
晋也は、心の中に秘めている『ドス黒い感情』を騎士達に悟られない様に、慌てて高笑いを上げた……。
すると、その晋也の笑い声に釣られて、『通り魔ロンバン』も一緒になって高笑いを上げ始める……。
「アッハッハッハ! よーし、じゃあ血が騒いで仕方ねぇから、早速そのデレン王国とやらを滅ぼしに行こうぜッ! ヘッヘッヘ! 悪人共を血祭りに上げてヤるぜぇッ!」
「おぉ……っ! 頼もしい限りですよロンバンさん……っ!」
と、白騎士ベルターが感激していると、何やら乗り気でないアイグが、頭を掻きながら弱音を吐いた……。
「やれやれ、また歩くのかよ……。 やっぱり、ボルモ達と一緒に留守番してるんだったな〜……」
「ほらほら、弱音なんか吐いてないで、さっさと行きますよアイグ? さぁ、それでは共に参りましょうか騎士の皆様方……!」
「フッフッフ……。 ワタクシ達の手に掛かれば、『半日』も経たぬ内に、容易く一つの王国を滅ぼす事が出来るでしょうねぇ……? フッフッフッ!」
「おぉ……っ! 何と言う『自信』だ……! これは、とんでもない助っ人が仲間に加わったのでは……ッ!?」
「だなッ! ベルター!」
「フム? それで、騎士の皆様方は『戦いの準備』は出来ていますでしょうかねぇ? ワタクシ達は、このままでも平気ですがねぇ?」
クリスは、3人組の騎士に向かって問い掛けると、各々が直ぐに返答した……。
「あ、勿論大丈夫ですともっ! ですよねっ、ハッチェスにドマル!」
「へへっ、とっくに戦いの準備は済ましてんぜッ!」
「直ぐにでも、デレン王国の連中に『引導』を渡してやりましょうとも……ッ!」
すっかり戦いの準備を済ましている様子のバーシト王国の3人組の騎士達は、ニヤリと微笑みながら次なるクリスの発言を待っていた……。
「フフ……。 どうやら、準備万端の様ですねぇ……? それでは、滅ぼしに行きましょうか……。 そのデレン王国とやらを……ッ!」
『オォォオオーーーッッッ!!!』
クリスの発令を聞いた騎士達は、意気揚々とクリス達と共に、バーシト王国の門を開けて、デレン王国を滅ぼしに行く為の一歩を踏み出そうとする……。
するとクリス達が、ふと後ろを振り返って見ると、其処にはクリスの事を崇拝し切っている『バーシト王国の国民達』が、去り行くクリス達に対して別れを惜しむ様に大きく手を振って涙ぐみながら見送っている様子が嫌でも目に入って来た……。
「おーいっ! 頼んだぞーっ! 『英雄』クリスさーんっ!」
「絶対に、悪のデレン王国の人達に負けないでねーっ!」
「デレン王国を滅ぼして、この世界をもっと平和にしてくれよなぁーーっ!」
大歓声に包まれる中、クリスは微笑みながら晋也に向かって問い掛ける……。
「フフ、中々に良い眺めですねぇ……? 貴方も、そう思うでしょう晋也さん……?」
「えぇ、確かに『壮観』ですね……!」
そしてクリスは、小さく頷きながら国民達に手を振って、そのままバーシト王国を後にする……。
すると、そのクリスの行動を見た国民達は、途端に大歓声を上げながらクリス達の後ろ姿を見送ったのだった……。
「よしっ、門を閉めるぞぉぉおおーーーッッッ!!!」
ガシャン……ッ!!!
そして、騎士達が門を閉めた事を確認したクリスは、静かに口元を緩ませると、騎士達に聴こえぬ様に細心の注意を図りながら、小声で呟いた……。
「フフフ……。 矢張り人間って言う生き物は面白いですねぇ。 自分達は平和を願っていると言うのに、他国に戦争を仕掛けようとしているなんて……。 結局は、己の利益や保身が欲しいだけなんですよねぇ……? フフフ……!」
すると、同じくニヤついている様子のムゴズが、そのクリスの発言に対して同意し始める……。
「ですねクリスさん……。 矢張り、この国の人達は利用しがいが有りそうですね……。 彼等を、もっと信頼させる事が出来れば、ゆくゆくは強力な『デコイ』になってくれる事でしょうね……?」
「フフフ……。 ワタクシも同感ですよムゴズさん……。 これからの事を思うと、何だか胸が弾んで来ますねぇ……? フフフッ!」
かくして、クリス達はバーシト王国の国民達と、騎士達の心を完全に掌握する事に成功し、彼等の事を自分達にもっと心酔させる為にも、デレン王国とやらを滅ぼしに向かう事に決めたのであった……。
【現在位置】
【バーシト王国周辺】
【現在の日時】
【4月8日 12時30分 春】
【死神クリス】
【状態】:戦闘態勢
【装備】:漆黒のシルクハット 漆黒の紳士服 漆黒のステッキ
【道具】:水晶玉
【スキル】:瞬殺の審判
【思考】
1:フフフ……。
2:デレン王国ねぇ……。
3:少しは、歯応えの有る相手が居ると良いのですがねぇ……?
【基本方針】:異世界を滅ぼす。天界に戻る。デレン王国を滅ぼす。
【田川晋也】
【状態】:陽気
【装備】:学校の制服 袋
【道具】:金貨30枚 銀貨28枚 銅貨30枚
【スキル】:極度の不幸体質
【思考】
1:クリスさんの手に掛かれば、どんな相手だろうと楽勝ですねッ!
2:寧ろ、懸念すべきなのは、『俺自身』の方だな……。
3:なるべく、クリスさん達の足を引っ張らない様にしないとな……ッ!
【基本方針】:琴子を探す。デレン王国を滅ぼす。クリス達の足を引っ張らない様に気を付ける。
【通り魔ロンバン】
【状態】:血気盛ん
【装備】:黒色の服 赤色のマント 殺戮の剣
【道具】:包帯
【スキル】:一瞬の辻斬り
【思考】
1:あ〜……。
2:血に飢えてるぜぇ〜……。
3:もう、我慢出来ねぇぜぇ〜……ッ! イッヒヒッ!
【基本方針】:デレン王国の国民を皆殺しにする。異世界が滅茶苦茶になるのが見たい。
【参謀ムゴズ】
【状態】:冷静
【装備】:眼鏡 神父の服
【道具】:バーシト王国の資料
【スキル】:虚言の祈り
【思考】
1:デレン王国ですか……。
2:確かに、あの王国から悪人が出て来る確率は高かった筈ですが……。
3:然し、せいぜい小悪党止まりの雑魚ばかりだと、記憶して居ります……。
【基本方針】:デレン王国を滅ぼす。バーシト王国の国民達を立派なデコイに育て上げる。
【血塗れのアイグ】
【状態】:面倒
【装備】:血塗れの料理人服 血塗れのコック帽 血塗れの包丁 小さな袋
【道具】:金貨6枚
【スキル】:抜群の切れ味
【思考】
1:もう歩くのやだなー……。
2:戦うのも疲れるからやだなー……。
3:俺に料理を作らせてくれよー……。
【基本方針】:デレン王国に向かう。料理を作りたい。
【白騎士ベルター】
【状態】:感涙
【装備】:白騎士の鎧 諸刃の剣と盾 袋
【道具】:金貨60枚
【スキル】:武器修復
【思考】
1:最高ですクリスさん……ッ!
2:私、涙が止まりませぬ……ッ!
3:うぅ……うぅ〜……ッ!
【基本方針】:クリス達に心酔する。デレン王国を滅ぼす。
【黒騎士ハッチェス】
【状態】:健康
【装備】:黒騎士の鎧 闇夜の剣と盾 袋
【道具】:火炎瓶5個 回復薬DX5個
【スキル】:闇夜斬り
【思考】
1:待ってろよ……デレン王国!
2:貴様等が生みだした盗賊や小悪党のせいで、傷付く者が多発しているのだ……ッ!
3:貴様等の悪運も此処で尽きるのだ……ッ!
【基本方針】:クリス達に心酔する。デレン王国を滅ぼす。
【赤騎士ドマル】
【状態】:やる気満々
【装備】:赤騎士の鎧 赤騎士の双剣 袋
【道具】:回復瓶20個
【スキル】:見せ掛けの死体
【思考】
1:よーしっ!
2:やってやるぜ〜ッ!
3:久々の戦いで腕が鳴るぜ〜ッ!
【基本方針】:クリス達に心酔する。デレン王国を滅ぼす。




