第九十七話 古代遺跡最深部 〜五十嵐隼人編〜
〜五十嵐隼人の視点〜
――――古代遺跡
古代遺跡の最深部に居るとされている『コロフロン』を討伐する為にも、意気揚々と奥地へと進んでいる最中の隼人達だったが、ふと道化師ヨイシーがソアボに向かって、とある事を確認し始めた……。
「およよ〜っ!? 一応御聞きしたいのですが、もしかすると、ソアボさんって『女神様』なのではないですかぁ〜っ!?」
「えっ? そ、そうだけど、それが何なの……?」
「おぉっ! やっぱり、そうでしたかぁ〜っ! いやなに、見た目から既に女神様っぽいと思って、そう推測したのですが、まさかの大当たりとは〜っ!」
「う〜ん? まぁ、良いや。 兎に角、早く進もうよヨイシーさんっ!」
ソアボが、前方に視線を移しながら先に進む様にヨイシーに促したものの、何故だかヨイシーは其の場に立ち止まり続けていた……。
「あれっ? どうしたのヨイシーさん……?」
「えっとねぇ〜? 折角だから、『二人切り』で御話ししたいと思ってねぇ〜っ! ねぇ、良いでしょ女神様ぁ〜?」
「えぇ〜っ? でも、そうこうしている内に、皆はどんどんと先に進んじゃってるよ……?」
道化師ヨイシーは、女神であるソアボの事を呼び止めて二人切りで話す状況を作り出そうとしていた……。
すると、そんな会話をしていたソアボとヨイシーの事を先に進んでいる隼人が呼び付けた。
「お〜いっ! ソアボ様〜、ヨイシーさ〜んっ! 早く追い付いて来ないと、このままだと置いてかれちゃいますよ〜っ!」
「あ、ほら隼人君が私達の事を呼んでるよ〜? だから、ヨイシーさんも、早く行こう? ねっ?」
「およよ〜……。 それは残念だなぁ〜……。 もう少しだけ、二人切りで話したかったんだけどね〜……。 例えば、一体何の用で女神様が『この世界に来たのか』……とかね?」
ヨイシーは、薄ら笑いを浮かべながら、ソアボに向かって問い掛ける……。
「んー? 私は、ただ単に天界に居るよりも、この異世界に来ちゃった方が楽しそうって思ったから来ただけだよ〜?」
「……ふふっ、本当に、『それだけの理由』なのですか?」
「……えっ? な、何が言いたいのヨイシーさん……?」
すると、その言葉を発したヨイシーの表情は、先程の笑顔から一転して、とても冷たいものになっていた……。
そしてヨイシーは、畳み掛ける様にソアボを問い詰め始める……。
「あ〜っ! もしかして、ソアボさんの目的って、異世界生活を楽しむ事だけじゃなくって、天界の他の女神や男神に対して『復讐』する事なんじゃないですかぁ〜?」
すると、そのヨイシーから発せられた言葉を聞いたソアボは、顔を引き攣りながら聞き返した……。
「なっ、なに……? 貴方は、一体何を知ってるのよ……っ!?」
「およよ〜っ? まさか、『図星』だったの〜っ!? 今話したのは、ボクちんが今さっき考えたばかりの『妄想』だよ〜? え〜? 本当にソアボさんって復讐を考えてたの〜っ!? うわぁ〜、『腹黒女神』だぁ〜っ!?」
ヨイシーは、ソアボに対して挑発する様に言葉を紡ぎ出す……。
然し、その挑発によってソアボが浮かべた表情は『怒り』ではなく、『恐怖』だった……。
「も、妄想……? う、嘘よ……ッ! たかが妄想が、此処まで私の考えと一致する筈が無いじゃないの……ッ! 貴方、本当に『何者』なの……ッ!?」
「およよ〜? 女神様であろう御方が此処まで取り乱すなんて、何だか変な話だなぁ〜? それで、何時もの『可愛らしい口調』はどうしたのかなぁ? ソアボさんって、そんな喋り方だったけなぁ〜?」
「……えッ!?」
ソアボは、ハッとした様な表情を浮かべて、口元を慌てて両手で押さえる……。
やがて、呼吸を整えて落ち着きを取り戻したソアボは、何時もの口調で喋り出した……。
「ベっ、別にぃ〜? ちょっと取り乱しちゃっただけだよ〜? そ、それで、今度はヨイシーさんの事を聞かせて欲しいなぁ〜っ! 私、とても気になっちゃってっ! えへへっ!」
「むぅ、ボクちんの事を話したいのは山々なんだけどねぇ……。 そろそろ、隼人さん達の所に向かわないと、本当に置いてかれちゃうと思うからさぁ〜?」
ヨイシーは、露骨に自分の話題を逸らすと、隼人達が進んで行ったであろう方向に指を差しながら、そそくさと足早で歩き始める……。
すると、ソアボは『舌打ち』をしながら渋々納得する……。
「チッ、しょうがないなぁ〜……。 分かった! じゃあ、また今度ヨイシーさんの事を聞かせてよね〜っ! それじゃ、隼人君達が待ってるから早く行こっか!」
「およよ~……。 そんなボクちんに聴こえる様に舌打ちしないでよぉ〜っ! まぁ、良いやっ! ほら、ダッシュだよっ! ダッシュ〜ッ!」
「よ〜しっ! お〜い、待ってよぉ〜隼人君達ぃ〜っ!」
ヨイシーとソアボは猛ダッシュをしながら、隼人達に追い付く為に追い掛けていると、ソアボ達が追い付いて来るのを待っていた権兵衛が手を振っている姿が目に入って来た……。
「おっ、やっと来たか! おーい、ソアボにヨイシー! ったく、待ちくたびれたぞッ!」
「ごめ~んっ! ちょっとだけ、ヨイシーさんと話し込んでてね……っ!」
「まぁ、何はともあれ、御無事で何よりでしたよ二人共……。 何かあったのかと心配になりましたよ……」
ムニルは、ホッと胸を撫で下ろしながら、ソアボの下に駆け寄る……。
すると、ムッとした表情を浮かべている『魔女っ子ネア』が、ソアボとヨイシーに向かって詰め寄った……。
「で、一体何をしていたの? もし、モンスターが現れたらどうするつもりだったの?」
「えっ!? え〜っと……。 あはは……」
すると、バツが悪い顔を浮かべているヨイシーとソアボの事を庇うかの様に、隼人が会話に加わって来る……。
「まぁまぁ、ネアさん……っ! ソアボ様とヨイシーさんも反省してる事だし、ここは一つ俺の顔に免じて許して頂けないでしょうか……っ!」
隼人は、ネアに向かって平謝りをしながら、集団から遅れたソアボとヨイシーの事の許しを請うと、ネアは呆れたかの様に隼人の肩をポンポンっと叩いた……。
「はぁ……。 仕方無いわねぇ……。 それじゃ、今回だけは貴方の顔に免じて許して上げるわね……。 さぁ、それでは先を急ぎましょう。 あ、それとソアボさんにヨイシーさん? 今度は遅れない様に気を付けてね?」
「うんっ! 今度は、皆から遅れない様にしっかりと付いて行くからね〜っ!」
「およよ〜。 何か、怒られちゃいましたねソアボさん……。 それに、ネアさんって怒ると恐いんですね〜……? あぁ、恐ろしやぁ〜……っ!」
すると、ブルブルと小刻みに震えているヨイシーから発せられたその言葉を聞いたネアは、耳元がピクッと動いたかと思うと鬼の形相でヨイシーの事を睨み付け始めた……。
「えっ!? こ、怖っ!? な、なになにッ!?」
「あ〜ら? 本当に反省しているのかしらね〜……? ヨイシーさ〜ん……?」
まるで、『ゴゴゴゴッ』と言う音声が現実に聴こえているかの様に錯覚する程に、ネアから発せられる『怒りのオーラ』に対して完全に恐れを成したヨイシーは、土下座をしながら許しを請い始めた……。
「ヒッ! す、すいませ〜ん……ッ! ゆ、許してくらひゃいぃ〜ッ!」
「全く、そんな私の事を化物みたいに……。 まぁ、良いわ。 次からは『言葉遣い』にも気を配りなさいよね?」
「はい……。 肝に免じますぅ……」
「ガッハッハ! おいおい、ネアの耳は『地獄耳』かっての!」
すると、一連の騒動を見ていた権兵衛がケタケタと笑い転げ始める……。
「ちょ、ちょっと、権兵衛さんっ!? どうやら、貴方にも『お仕置き』が必要みたいね……?」
「おっとっ! わりぃ、わりぃ! 冗談だって、冗談っ! あっ、それよりも前を見てみろよッ! そろそろ『最深部』に着く頃合いじゃねぇか〜っ!?」
「ちょっ、露骨に話を逸らしたわね……。 まぁ、確かに言われてみると、この先から何だか『空気が一変』してるわねぇ……?」
「だろっ? だから、こんな所で言い争いしてる場合じゃねぇって事だぜぇッ!」
ネア達は、権兵衛が指差した方向を眺めてみると、その場所からは明らかに今居る場所とは違った雰囲気を醸し出しているのを肌で感じ取った……。
「このピリッと来る感じ……。 どうやら、間違い無いみたいね……。 あの辺りに御目当てのコロフロンが隠れ潜んで居るのかもね……。 それで皆、戦う準備は出来てるかしら?」
「暗闇で見えませんが……。 この先にコロフロンが……?」
「俺はバッチシだぜッ! 隼人の方は準備出来てるかッ!?」
「も、勿論出来てますよっ! 遠距離攻撃は、俺に任せて下さいねっ!」
隼人達が戦いに備えていると、ふとソアボがムニルの顔色が悪い事に気が付いた……。
「あれっ!? ム、ムニルちゃんどうしたの……? 何だか、元気が無いみたいだけど……?」
「えっ? ど、どうしたんですかムニルさん……?」
それを聞いた隼人が慌ててムニルの下へと駆け寄ると、ソアボが言った通りに、何故かムニルは冷や汗を掻きながら辛そうな表情を浮かべていた……。
「ムニルさん……? もしかして、体調でも優れないのですか? だったら、一旦遺跡の外へと戻りましょうか……? 俺も一緒に付いて行くので……」
「あっ、いえいえッ! 別に体調が優れない訳では有りません……。 実は、私はモンスターの事を倒そうとすると、躊躇して仕舞って身体が竦んじゃうんですよね……。 でも、これも乗り越えて行かないと駄目なんですよね……? 立派な『冒険者』になる為には、モンスターを倒す事も躊躇っちゃ駄目なんですよね……?」
ムニルは、苦しそうに涙目を浮かべながら、息を切らして隼人の顔を見詰めながら返答した……。
そのムニルの具合悪そうな顔を見た隼人は、何だか段々と心苦しくなると、隼人はムニルの身を案じて、ムニルと共に一旦遺跡の外にへと出る事に決める事にした……。
「ムニルさん……。 辛いなら無理をする必要は有りませんよ……? だから、モンスターを倒す事は権兵衛さん達に任せましょう……?」
「で、でも……っ! それじゃあ、ハヤトさんや他の皆さんの御迷惑に……っ!」
「いえいえ、迷惑じゃないですよムニルさんっ! ムニルさんは、無理に戦おうとしなくても大丈夫ですから……ッ! それに、そのムニルさんの優しさは、俺達の『心の支え』になっていますから……っ!」
「えっ? 心の支え……ですか?」
「そうですよっ! ねっ! 権兵衛さんもソアボ様も、同じ気持ちですよね……っ!」
隼人は、権兵衛とソアボに向かって同意を求めると、権兵衛とソアボは笑顔で返答した。
「あぁ、隼人の言う通りだぜぇッ! それにムニルは、料理が上手いから、ムニルは戦闘事よりも、皆の事を支える事に徹した方が良いかもなぁッ! だから、あんまり気に病む必要はねぇからなムニルッ!」
「ふふっ、と言う事でムニルちゃんと隼人君は、後の事は私達に任せて、先に外に出て良いからねぇ〜?」
ソアボは、ニコッと笑いながらムニルの事を労った……。
「ゴンベエさん……ソアボ様……っ!」
「ねっ? 詰まり、困った時は御互い様って事です……! だから、気乗りしないのなら一緒に遺跡から出ましょう……?」
「うぅ……っ。 ハヤトさん……。 私の為に慰めてくれて心から感謝致しますぅ……。 そうですね。 私は、私に出来る事を精一杯頑張るだけでも良いんですよね……? 私は心を押し殺してモンスターを倒さなくても良いんですよね……?」
「えぇ、そうですよムニルさんっ! 無理をする必要は無いんですっ!」
するとムニルは、隼人からの返事を聞くと安堵したかの様に表情を崩し始める……。
そして、話し合いの末にムニルは隼人と一緒に、一旦遺跡の外へと出る事にしたのだった……。
「ごめんなさいハヤトさん……。 私なんかの為に苦労を掛けて……」
「いえいえ、良いんですよムニルさん。 コロフロンの討伐クエストの事は、権兵衛さん達に任せましょう。 権兵衛さん達ならきっとクエストを達成してくれますよっ!」
「あぁ、そうだぜッ! へへっ、お前達の為にも張り切ってやんよッ!」
キラリと白い歯を見せながら権兵衛は、頼もしくマッスルポーズを決める……。
その権兵衛の姿を見たムニルは、クスッと微笑みながら隼人と共に遺跡を後にする事となった。
「ふふっ、そうですねっ♪ それじゃ、行きましょうかハヤトさんっ♪」
「はいっ! それでは権兵衛さんに皆さんッ! 後の事は任せましたよ〜ッ!」
「おーッ! んじゃな、二人共〜ッ!」
かくして、ムニルと隼人は権兵衛達に見送られながら、コロフロン討伐クエストから離脱する事となったのだった……!
【現在位置】
【古代遺跡最深部】
【現在の日時】
【4月8日 12時7分 春】
【仁科権兵衛】
【状態】:健康
【装備】:騎士の鎧 斬撃の剣 鉄壁の小盾 旅人の袋
【道具】:銀貨5枚
【スキル】:最強の意志
【思考】
1:おーしっ!
2:ムニルと隼人の分まで俺達が頑張るぜぇーッ!
3:待ってろよ……コロフロン!
【基本方針】:クエストを達成する。隼人と親友になる。仲間を護る。魔王を倒して現世に帰る。
【魔女っ子ネア】
【状態】:やる気満々
【装備】:黄金のローブ 黄金のトンガリ帽子 黄金の魔法杖
【道具】:回復薬DX20個 緋色の魔石 翠の魔石 蒼の魔石 純白の魔石 金色の魔石
【スキル】:無限収納
【思考】
1:さ〜てと……。
2:コロフロンちゃんは何処かしら〜?
3:貴方の珍味の目玉を抉り取らせて貰うわよ〜ッ!
【基本方針】:コロフロンの目玉を手に入れる。
【娯楽の女神ソアボ】
【状態】:懐疑的
【装備】:金色の羽衣 金色の指輪 女神の袋
【道具】:女神の袋の中に色んな物が入っている
【スキル】:能力授与
【思考】
1:ヨイシー……。 貴方は、一体何者なの……?
2:この人を、このまま放って置いたら不味い事になるかも知れない……。
3:気が付かれない内に、殺す必要が有るかもね……。
【基本方針】:クエストを達成する。異世界生活を楽しむ。天界の神達に復讐する。ヨイシーを密かに殺害する。
【道化師ヨイシー】
【状態】:警戒
【装備】:黄色と水色の道化師の服 道化師の袋
【道具】:ナイフ10本 赤色のガラス玉、青色のガラス玉、緑色のガラス玉 各10個
【スキル】:理想の道化師
【思考】
1:ちょっと、おちょくり過ぎたかな〜……?
2:あのソアボの目……。
3:あれは、殺意が籠もっている目ですねぇ〜……?
【基本方針】:ソアボを監視する。ネアに警戒。自身の手配書を世界中から無くす。歩夢達と隼人達を手下に引き入れる。
【現在位置】
【古代遺跡出口周辺】
【五十嵐隼人】
【状態】:心配
【装備】:紺色のコート クリーム色のズボン 深紅のベルト 耐久の弓 旅人の袋
【道具】:毒の矢10本 炎の矢10本 痺れの矢10本 普通の矢29本 服屋ドア・ゼルのポイントカード
【スキル】:刹那の狙い撃ち
【思考】
1:ムニルさんも繊細な心を持っていたんだな……。
2:もっと早くからムニルさんの事を気に掛けるべきだったな……。
3:これからは、ムニルさんとも沢山会話をしていかないとな……。
【基本方針】:ムニルを気に掛ける。権兵衛達の事を遺跡の外で待つ。異世界生活を楽しむ。ソアボが気になる。後で座衛門と合流する。
【ムニル・ル・ナータ】
【状態】:ドキドキ
【装備】:街娘の服 巨大な風呂敷
【道具】:組み立て式のテント一式 調理器具 小型の冷蔵庫 様々な食料品 ナイフ、フォーク、スプーン 各10本
【スキル】:極限の癒やし
【思考】
1:あぁ、ハヤトさん……。
2:本当に優しくて良い人ですね……。
3:うぅ〜……。 愛しきハヤトさんが直ぐ隣に……。 ドキドキするぅ〜……♡
【基本方針】:権兵衛達の事を遺跡の外で待つ。隼人に寄り添いたい。




