第八十三話 風来坊ギンヤとの決闘 〜疾風のエスペランサ編〜
〜疾風のエスペランサの視点〜
――――始まりの大地ストファー
「確か、この辺りに居た筈ですが……」
愛戦旅団の団員を増やしたいエスペランサは、先程上空を飛んでいる最中に見掛けた、『二人』の男の下へと向かって行った。
するとエスペランサは、キョロキョロと天空から地上を見渡していると、岩場で腰を降ろしている『三度笠』を被った一人の男を見付けた。
「あ、良かった……! どうやら、あの人は移動していなかったみたいですね……っ! さてと、早速交渉しに行きましょうか……!」
探し人を見付けたエスペランサは地上に降り立つと、そのままの勢いで岩場に腰を降ろしている男に話し掛けた。
「あのー、突然すみません……。 僕の名は『エスペランサ』と申しまして、もし宜しければ御話しを聞いて頂けませんか?」
すると、エスペランサの声を聞いた三度笠を被った男が酔っ払った様子で返答した。
「ん? 何だぁ、あんちゃん。 俺と話してぇのかぁ〜? ひっく。 へへっ、物好きな奴も居るもんだな。 俺みたいな、おっちゃんと話したいとはねぇ〜……?」
酒臭い息を吐きながら、三度笠の男は薄ら笑いを浮かべる。
「いえいえ、貴方は見るからに『腕利きの冒険者』だと推測出来ます。 なので、是非僕達が結成した新旅団である、通称『愛戦旅団』への入団を貴方に御願いしたいのですよ」
「ほぉ? 新旅団の誘いねぇ? なるほど、あんちゃんは俺をスカウトしにやって来たっつー事だなぁ? そんじゃあよぉ、少しばかり、あんちゃんの『実力を測らせて貰う』とすっかな……」
「……僕の実力を測るですって?」
「そうだぜぇ〜? よっこいしょっと……。 さてと、準備は良いかぁ〜? 準備が整ったのならいざ、尋常に……勝負だぜッ!」
すると、のらりくらりと不気味に立ち上がった三度笠を被った男が鞘から刀を取り出すと、そのままエスペランサが剣を引き抜くのを待った……。
「成程、僕と御手合わせがしたいのですね? 分かりました。 僕はこの勝負に勝って、晴れて貴方を愛戦旅団に入団させましょう……!」
「へへっ、言っとくが俺は強えぞぉ? そう簡単に勝てるとは思わねぇ方が良いぜぇ〜?」
「そんな事は分かっていますよ。 ですが、だからこそ『燃える』ってもんですよ……! 強い相手と闘えるって事はね……!」
「へへっ、んじゃあ、俺が勝ったらあんちゃんに頼みてぇ事があんだけどよぉ〜? もし俺が勝った暁には、俺に『エッチな店での一発分』を奢ってくれねぇか? それも飛び切り値が張る『最高級店』のだぜぇッ!?」
三度笠の男は、目をギラ付かせながらエスペランサに向かって、もし自分がこの勝負に勝ったら風俗代を払ってくれと頼んだ。
「わ、分かりましたよ……。 もし僕が貴方との勝負に敗れた場合には、しっかりと御支払い致しましょうとも」
「お、言っちまったなぁ〜? あんちゃんの名は、エスペランサだっけか? 『漢』なら約束は絶対に守るんだぞぉ〜? おっと、そういりゃまだ俺の名を名乗ってなかったな。 俺の名は『ギンヤ』ってんだ。 通称、風来坊ギンヤって呼ばれてるぜぇ〜?」
「風来坊ギンヤさん……。 それでは、御手合わせ宜しく御願い致しますね……」
「おっ、何やら『目付き』が変わったねぇ〜? んじゃ、お互い死なねぇ程度に力比べすっかエスペランサよぉ……ッ!」
「すぅ~……。 では、始めましょうか……」
エスペランサは静かに鞘から『翠の剣』を引き抜くと、ギンヤに向かってゆっくりと近付きながら、ギロリと睨みを利かせた……。
対するギンヤも、一呼吸整えた後に不敵な笑みを浮かべると、決闘の開始の合図を出した……。
「んじゃ、『開始だ』。 好きなタイミングで来いよエスペランサ〜?」
と、ギンヤがエスペランサに向かって煽った瞬間だった……。
一瞬の内に、エスペランサはギンヤの懐に詰め寄りながら、剣を振るった……!
「せいッッッ!!」
ビュンッ……!
「おっと、何だこの程度かよぉ〜?」
ガキーーン……ッ。
エスペランサから繰り出された剣撃を、手に握り締めている『名刀白銀世界』を使って意図も容易く防いだギンヤは、直ぐ様カウンターの蹴りをエスペランサの腹に思いっ切り喰らわした。
ドンッ!
「うぐッ!? くっ……!」
ギンヤの攻撃を受けて、蹌踉めきながら慌てて後退ったエスペランサは、冷や汗を掻きながら次なる攻撃の手を考えた……。
「はぁ……はぁ……ッ! まぁ、この程度の攻撃では流石に止められますよね。 ならば、この攻撃は貴方に防げますかね……ッ!」
そう言い放ったエスペランサは、拳に力を込めて翠の剣を両手で握り締めながら、ギンヤに向かって挑発した……。
「なにぃ? おいおい、安い挑発すんじゃねぇかエスペランサよぉ? この俺に防げねぇ剣撃がある訳ねぇだろぉ?」
「ふふっ、言いましたねギンヤさん。 ならば、手加減は致しませんよ。 喰らいなさいっ! 【天空疾風移動】ッッッ!!!」
「んあ? まさか、『スキル』を使うってのかぁ? まぁ、別に良いけどな……。 へへっ! イイぜ、お前の全力って奴を俺に見せてみろよぉッ!」
「言われなくても……ッ!」
するとエスペランサは、疾風の如く速さで空中に舞い上がると、そのまま天空からギンヤに向かって思いっ切り剣を振り下ろした……!
「おぉ、成程な。 要するに、天空から俺に向かって『遠距離攻撃』をして来るってのかぁ? それも、風圧を利用して途轍もない程の威力に育ってんなぁ〜? だが、『甘い』な?」
然し、そのエスペランサから発せられた剣撃に対して、ギンヤは涼しい顔をしながら、鮮やかに剣撃を躱してゆく……。
「んで? まさか、こんなんが『奥の手』な訳じゃあ無いよなぁ? ふわぁ〜……。 思わず欠伸が出ちまうぜぇ〜……?」
すると、地上に降り立ったエスペランサが、そのギンヤの言葉に対して、含み笑いを浮かべた……。
「奥の手ですって? ふふっ。 いやいや、まさかそんな訳が無いでしょう? 僕が本気を出すのは『これから』ですよ……ッ!」
すると、そう言い放ったエスペランサの姿が不意に消え始めた……!
どうやら、疾風の速さでギンヤの周りを取り囲う形で高速移動をし続けている様だ……。
「ほぉ~、高速移動ねぇ? そんで、こっから俺に向かって攻撃をすると言う事か?」
「その通りです。 さて、この僕から繰り出される数多の攻撃を、果たしてギンヤさんは防ぎ切る事が出来ますかね?」
ガンガンガンガンッ!
「うおっと、確かに速ぇな……。 こりゃあ、防戦一方だなぁ?」
驚いている様子のギンヤに対して、エスペランサは攻撃の手を決して緩める事無く、ひたすらに高速で翠の剣を何度も振るった……!
剣を振るい続けるエスペランサは、疲れる様子が無いどころか、寧ろ剣撃の速さが一撃毎に加速していった……!
「さぁ、どうですかギンヤさん! そろそろ、打開策を見付けないと、やがて僕の剣撃のスピードが貴方の防戦のスピードを超えてしまいますよ……ッ!」
「ほぉ〜ん? ちったぁ、やるじゃねぇかよエスペランサ? だが、まだ『弱い』な」
「何ですって……ッ!?」
と、エスペランサが声を発した次の瞬間だった……。
ギンヤが、エスペランサを超える程のスピードで、大きな曲線を描きながら刀を振り下ろした……!
「何ッ!? 速い……ッ!」
突然の事に驚いた様子のエスペランサは、慌ててギンヤの下から避けるモーションを取ろうとしたその瞬間……!
ギンヤの一言と共に、エスペランサは自身の『負け』を瞬時に悟った……。
「残〜念。 この勝負、お前の負けだ。 エスペランサ……」
「ハッ! しまっ……ッ」
エスペランサが気が付いた頃には、ギンヤが振り下ろした筈の刀が、エスペランサの眼前に姿を現していたのだ……。
「……勝負有りだなエスペランサ。 お前は『俺が創り出した幻想』に惑わされていたんだよ……」
「……その様ですね。 まさか、刀を大きく振り下ろした様に見えた事すら、ギンヤさんが生み出した『残像』の姿だったとは……。 どうやら、初めからギンヤさんは、僕が残像に騙されて避けようとした時に現れる『一瞬の隙』を狙っていたのですね……。 ははっ、見事な迄に騙されましたよ……。 これは僕の『完敗』ですね」
「あぁ、そうだ。 一応『今日の所』はアンタの完敗だなぁ?」
「……えっ? 一応今日の所は、ですって……? ハッ! って事は、もしかして……!?」
ギンヤの意味深な言葉を聞いたエスペランサが、咄嗟に顔を見上げると、見上げた先に居るギンヤが照れ臭そうにしながらエスペランサに向かって手を差し伸べている姿が目に入った……。
「あぁ、是非とも俺も愛戦旅団ってもんに入らせて貰いてぇと思ってよ」
「い、良いんですか……!? だって、僕は貴方との決闘に負けたんですよ……?」
「へへっ、俺が勝ったらエッチな店を奢ってくれるって言う約束をした事は勿論覚えてるよな? なら、俺達は『もう仲間』だッ! それ以外の理由が居るか?」
「ギンヤさん……っ! 詰まり、最初から僕達の仲間に入る気だったのですねっ! うぅ……誠に感謝致しますギンヤさん……っ!」
「まぁ、決定打は『アンタの気持ちが伝わった』からだけどな? 剣を交えてる最中に、ヒシヒシと伝わって来たんだよなぁ〜? へへっ!」
こうして、無事に風来坊ギンヤの事を愛戦旅団の一員に迎えた疾風のエスペランサは、気持ちを昂らせながら『もう一人』の勧誘したい人物の下にへと向かおうとする。
「よしっ、ギンヤさんっ! それでは僕の両肩に掴まって下さいねッ! 実は、ギンヤさんの他にも一人だけ勧誘したい人物が此処の近くに居るんですよっ! だから、その人が愛戦旅団に入団してくれる様にギンヤさんにも交渉を手伝って欲しいんですよっ!」
「お、おぉ! 分かった! 早速、その愛戦旅団とやらの活動に俺も協力しろって事だなっ! うおっしゃ! 俺に任せとけッ!」
「頼りになりますギンヤさんっ!」
そして、言われた通りにギンヤはエスペランサの両肩に掴まると、そのままエスペランサは、猛スピードで天高く舞い上がり始める……!
「おぉッ! 凄えなこりゃッ! んで、その勧誘したい奴は何処に居るんだ?」
「ほら、彼処を見て下さいギンヤさんっ! 一人の『犬鬼族』の男が見えますよねっ!?」
「おぉ、アイツかぁ〜。 良いぜ、早速アイツの下に向かうとすっか!」
「えぇ、それでは体勢を整えた後に、高速で向かいますよ〜ッ!」
そして、エスペランサは空中で体勢を変えながら、ギンヤを自身の背中の上に跨がせると、もう一人の勧誘したい人物の下にまで猛スピードで向かったのだった……!
「よし、そろそろこの辺で地上に降りましょうか」
「おっと、因みに話しておくとな? あの狼男とはさっき話したばっかだから、奴との交渉は全て俺に任せてくんねぇか?」
「分かりました。 そう言う事ならば、任せましたよギンヤさんっ!」
エスペランサは、ゆっくりとギンヤを地上に降ろすと、地上に降り立ったギンヤは間髪入れずに狼男の下へと駆け出して行った。
タッタッタッ……!
「よおっ! さっきぶりだな狼男の兄ちゃん!」
ギンヤは、陽気な口調で犬鬼族の男に話し掛けた。
「あれ? どうしたんだよギンヤ。 何か忘れ物でもしたのか?」
ギンヤから話し掛けられた犬鬼族の男は、どうやら首元に『自動翻訳装置』を身に着けている様だ。
その為か、ギンヤと犬鬼族の男はスムーズに会話を続けてゆく。
「忘れ物か? あ~、そうだったな。 忘れ物だよ忘れ物!」
「全く……。 一体何を忘れたんだ?」
すると、ギンヤは狼男に指を向けた。
「え? 一体何故、俺に向かって指を刺すんだよ?」
その問い掛けに対して、ギンヤは一言で返した。
「忘れ物は、お前の事だからだよ。 『ディートハルト』」
「えっ、どゆこと?」
かくして、風来坊ギンヤはディートハルトを愛戦旅団に入団させる為の交渉に入るのであった……。
【現在位置】
【始まりの大地ストファー】
【現在の日時】
【4月8日 11時12分 春】
【疾風のエスペランサ】
【状態】:喜び
【装備】:翠の鎧 翠の剣 袋
【道具】:金貨30枚 煙玉5個 回復瓶5個 回復薬DX10個
【スキル】:天空疾風移動
【思考】
1:ギンヤさん……。 愛戦旅団に入団してくれて、本当に有り難う!
2:今日の決闘は僕が負けましたけど……。
3:今度手合わせした時には負けませんからね……!
【基本方針】:ディートハルトを愛戦旅団に入団させる。何れギンヤと再戦したい。
【風来坊ギンヤ】
【状態】:健康
【装備】:三度笠 道中合羽 名刀白銀世界 巾着袋
【道具】:おにぎり5個 ピザまん5個 酒2瓶
【スキル】白銀世界【効果】:周囲に雪を降らせながら、相手の視界を狭める事が出来る。更に相手に自身の幻影を見せる事も出来る。
【思考】
1:さて、どうやって交渉するかな?
2:取り敢えず、飯で釣ってみるかぁ?
3:コイツって、如何にも腹が減ってそうだかんなぁ〜!
【基本方針】:ディートハルトを愛戦旅団に入団させる。エスペランサに風俗店を奢らせる。
【ディートハルト】
【状態】:困惑 空腹
【装備】:鉄の剣 鉄の弓 旅人の袋 自動翻訳装置
【道具】:閃光玉5個 痺れの矢30本 鉄の矢50本
【スキル】:達人の構え
【思考】
1:え、俺ぇ?
2:何か話そびれた事でもあったのかな?
3:うぅ……。 それよりも腹減ったなぁ〜……。
【基本方針】:腹が減ったので何でも良いから食べたい。自動翻訳装置を世間にもっと普及させたい。バルフ達の動向が気になる。




