第七十一話 怪盗ヘレマネラ 〜探偵ジンラ編〜
〜探偵ジンラの視点〜
――――古の事大地ドンセカ
策士ミツヒが張り巡らせた結界から、命からがら逃げ延びた探偵ジンラとロマン・エル・ラインの2名は、逃げ延びた先で夢幻旅団の一員である『怪盗ヘレマネラ』と幸か不幸か、バッタリと出食わして仕舞った……。
「いやぁ〜、まさかこのタイミングで、かの悪名高い『怪盗』さんと出食わして仕舞うとはなぁ〜?」
探偵ジンラは、怪盗ヘレマネラに向かって、にじり寄りながら会話を試みる。
すると、慌てた様子でヘレマネラが許しを請い始めた。
「たっ、頼みますわ……! 私の事を見逃してくれないかしら……っ!? 私は、ただ単に近場の街で買い物に行こうとしてただけで……! 確かに、過去には色々と盗んで来たけど、今日は真面目に金も払おうとしていたし……ッ!」
「おっと。 まぁまぁ、落ち着いてくれよ。 別に今の所は、アンタの事を捕まえる気は、俺達には更々ねぇから安心しな?」
すると、探偵ジンラからの意外な返答を聞いたヘレマネラは、心底驚いた様な表情を浮かべると、そのままジンラに向かって聞き返した。
「なんですって……? 貴方は、犯罪取締連盟の一員の『探偵ジンラ』なんでしょ? なのに、怪盗で有る私の事を捕まえる気は更々無いですって……? と言う事は、私の事に対して目もくれなくなる程の出来事が、貴方の身に起きたのかしらねぇ……?」
「……怪盗に対して、目もくれなくなる程の出来事か。 そうだな、確かに『セイラ王国』のクソッたれな奴等に対して、復讐したくなる程の出来事が、俺の身に巻き起こったばかりだぜ……? だからこそ、お前の力を借りたい所なんだけどな?」
「……えっ、私の力を借りたい? だけど、一応知っているとは思うんだけど、私は『戦闘タイプ』では無いんだけど……? 例え、戦闘事に駆り出されたとしても、私程度の力では瞬殺されて仕舞うのがオチだけど……」
すると、ジンラは頭を掻き毟りながら、ヘレマネラに向かって説明をした。
「あぁ〜、そうだなぁ。 使いてぇのは、お前の『戦闘力』の方では無くて、お前の『コネ』の方だ」
「……私の、コネですって? ハッ、まさか……?」
「あぁ、そのまさかだ。 お前は『夢幻旅団』の一員だろ? だったら、お前と同じ夢幻旅団員の中でも特に腕っぷしの強え奴を、お前の『コネ』を使って、俺達の仲間になる様に説得して貰いてぇんだ」
「成程、要するに交換条件って事? 私の事を見逃す代わりに、貴方達と協力する事に尽力しろと……?」
「まぁ、そう言う事だな。 あ~っと、これも言っておくんだが、恐らくセイラ王国には他の夢幻旅団の団員の『ギョン』と『エザック』も潜んで居るだろうから、このままだと同士討ちになっちまうと思うんだが、それでも良いか……?」
バツが悪そうにしながら、探偵ジンラは怪盗ヘレマネラに向かって、そう説明すると、ヘレマネラは何とも無さそうな顔を浮かべながら直ぐ様返答した……。
「エザックとギョン? まぁ、あの2人には、特に思い入れもないから、そのまま死んで貰っても私としては別に良いんだけど……。 そもそも、同士討ちなんて夢幻旅団内では日常茶飯事だから特に気にする事でもないし……」
そのヘレマネラの返答に対して、ジンラは肩を竦めながら苦笑いを浮かべた。
「へぇ? 矢張り、夢幻旅団員ってのは、かなり肝が据わった奴が多いんだな。 まぁ、それぐらいの心構えがなきゃあ、夢幻旅団員の名折れだもんなぁ?」
「まぁね。 そんな事よりも兎に角。 要点を纏めると、私が貴方達の為に戦力になる仲間を募ってやれば、この場は見逃してくれるって事で合ってる?」
「あぁ、勿論見逃してやるよ?」
そのジンラの返答を聞いたヘレマネラは、ホッと胸を撫で下ろすと、ジンラに向かって協力をする事を誓った……。
「分かったわ。 確か此処の近くに『ゲーゴス』と『ロマス』も居る筈だから、彼等に私の方から協力を促す事にするわね」
「……なるほど、団員No.4の『放火魔ゲーゴス』と、団員No.8の『降霊術師ロマス』か……。 これまた中々に大物が近くに居たもんだなぁ……」
「じゃ、案内するから私の後を付いて来て。 えーと、名前は……」
「ジンラだ。 探偵ジンラと世間では呼ばれている」
「貴方の事は知ってるわよ。 私が聞いてるのは、さっきから無口な彼の名前の事よ……?」
怪盗ヘレマネラは、先程から無言を貫いている『ロマン』に向かって目を配る……。
「……あぁ、僕の事ですか? 僕は、英傑旅団員のロマン・エル・ラインと申します……。 今は少しだけ傷心中なので、そっとして置いて下さると嬉しいです……はい」
ロマンは、先程の惨劇の光景が脳裏に焼き付いて離れなかった……。
長らく、一緒に依頼をこなしていた仲間達の死に様を目撃して仕舞ったロマンのメンタルは、もはや崩壊寸前に近かった……。
「チベッタ……パプリー……」
ロマンは、戦死した仲間達の名前を、ボソッと呟く事しか出来無くなって仕舞っていた……。
「ロマンの事は、立ち直る頃まで触れてやるな……。 むむっ? おい、ヘレマネラ? お前の後ろに誰か居るぞ……?」
そのジンラの問い掛けにより、ヘレマネラは咄嗟に自身の後方を振り返ると、そこには『放火魔ゲーゴス』の巨体な姿が有った……。
「あ、ゲーゴス! 丁度良かった……!」
「なんだぁ、ヘレマネラ? もし、ピンチみてぇなら、この俺が協力してやんぜぇ?」
「あぁ、それなら本当に協力して欲しいのだけれどもっ!」
何時もとは違う様子のヘレマネラに対して、思わずゲーゴスは聞き返した……。
「あぁ? おいおい、一体どう言う風の吹き回しだぁ〜? 何時もは、俺の事を煙たがってたじゃねぇかよぉ〜ッ!?」
するとヘレマネラは、今迄の事の経緯を、ゲーゴスに向かって大雑把に説明し始める……。
「要するに、この探偵ジンラとロマンと共に、セイラ王国の奴等をブッ殺せば良いのよ? 後、ついでにギョンとエザックも殺って良いみたいよ?」
「ほぅ……? 良く分かんねぇけど、取り敢えずセイラ王国の奴等をぶっ殺せばOKって事で良いんだな? で、ついでにギョンとエザックも殺すと……」
「そう言う事。 だから私達に協力してくれる?」
「まぁ、別に良いけどよ? 兎に角、そこの探偵ジンラとロマンの事は信用しても大丈夫なんだよな? ま、例え裏切られたとしても、直ぐに殺せば良いだけだもんなっ! なら、そこまで深く考えねぇでもいっか!」
「相変わらず能天気な奴ねぇ……。 さぁ、後はロマスねっ!」
ヘレマネラが意気揚々と、ロマスが居たと思う方向へと進もうとしていると、探偵ジンラがゲーゴスの下へとゆっくりと近付いたかと思うと、そのまま友好の証の握手を求め始めた。
「これから、宜しく頼むよゲーゴス。 頼りにしてるぜ?」
「おぉ。 よろしくなジンラ。 で、そっちのロマンって奴は放っといても良いんだな?」
「あぁ。 彼の事はそっとして置いてくれ……。 無言で俺等の後を付いて来てくれる筈だから大丈夫だと思うぜ……」
「心遣い感謝致しますジンラさん……」
「ほら、ロマン本人も、こう言ってる事だしな……。 さてと、おーい! 待ってくれよヘレマネラ〜っ!」
お互いの友好の証の握手を済ませたジンラとゲーゴスは、先に進んでいるヘレマネラの後を足早で追い掛けた。
「おいおい、俺達が握手をしてる内に、先に進むなって!」
「なによ? 別に平気でしょ? ほら、ロマンもしっかりと付いて来てるじゃない?」
「……まぁ、そうだな。 んじゃ、行こうぜ……」
「やれやれね……。 この先、忙しくなりそうだわ……」
かくして、探偵ジンラはセイラ王国に対して復讐する為にも、強力な助っ人になり得る『降霊術師のロマス』を仲間にする為に、行動を開始したのであった……!
【現在位置】
【古の大地ドンセカ】
【現在の日時】
【4月8日 10時6分 春】
【探偵ジンラ】
【状態】:健康
【装備】:サングラス 茶色のコート 黒の帽子 鞄
【道具】:様々な資料
【スキル】:悪意感知推理
【思考】
1:ふぅ……。
2:何とか気力を取り戻したぜ……。
3:待ってろよ……ミツヒ!
【基本方針】:セイラ王国を滅ぼす。自分達を裏切った策士ミツヒを許さない。仲間を失ったロマンの事が心配。
【ロマン・エル・ライン】
【状態】:呆然自失
【装備】:英傑旅団の団員服 英傑の剣と盾 袋
【道具】:毒消し薬 火消し薬 痺れ消し薬 各3個
【スキル】:一日限定緊急脱出
【思考】
1:パプリー……。
2:チベッタ……。
3:ナサイズさん……。
【基本方針】:虚無
【怪盗ヘレマネラ】
【状態】:安堵
【装備】:街娘の服 袋
【道具】:金貨50枚 銀貨100枚 銅貨200枚
【スキル】:可憐な盗み
【思考】
1:ホッ、なんか助かったわ……。
2:こんな所で、捕まる訳には行かなかったから良かったわ……。
3:取り敢えず、彼等の機嫌を損ねない様にしないとね……。
【基本方針】:探偵ジンラ達に協力する。絶対に捕まりたくない。ついでにセイラ王国を滅ぼす。
【放火魔ゲーゴス】
【状態】:陽気
【装備】:ガスマスク 緑色の鎧 火炎放射器
【道具】:ガスバーナー7個 火炎放射器燃料5個
【スキル】燃える世界【効果】:火元も何も無い空間でさえも、突発的に火災を巻き起こす事が出来る。その上このスキルを所持しているだけでも、『火炎無効』の特性が自身に付与される。
【思考】
1:セイラ王国の奴等を殺す事の許可が降りたぞ〜っ!
2:イエーイっ!
3:燃やして殺し尽くすぞ〜っ!
【基本方針】:セイラ王国を燃やす。ついでにギョンとエザックを殺す。




