第六十八話 魔法使いハルキュオネ 〜星知恵実編〜
〜星知恵実の視点〜
――――始まりの大地ストファー、トスレの森――――【現在時刻、10時20分】
《愛戦旅団》と言う名の”新たな旅団”を結成した、『ゲノン』と『エスペランサ』と『星知恵実』の3名は、一先ず愛戦旅団に入団してくれる人を捜索する事にした―――。
「さてと、チエミも仲間に加わった事だし、この辺りにもまだ俺達の旅団に入ってくれそうな奴等が居るかも知んねぇから、一緒に探そうぜぇ?」
ゲノンは腕を組みながらキョロキョロと辺りを見回してエスペランサと知恵実に話を振った―――。
「確かに、地道に勧誘していくしかないですね……。 ゆくゆくは、僕等の”本拠地”となる建物も設立しないといけませんし……」
エスペランサの口から発せられた”本拠地”と言う単語を聞いた知恵実は、目を爛々と輝かせながら相槌を打つ。
「うわぁ〜本拠地ですかぁ〜っ! えへへっ、なんだか良い響きですねっ!」
知恵実は、可愛らしく笑みを浮かべながら、自分達のこれからの"未来像"に思いを馳せる―――。
「ヘヘ、中々にノリが良いじゃねぇかよチエミ! おしっ、そんじゃエスペランサッ! ちょっくら、お前の”能力”を使って、上空から地上を見下ろして、この場の近くに誰かが居ねぇか確かめて来てくんねぇか?」
「あ、確かにその方法が手っ取り早いですねっ! それでは、僕が空に飛んで、周囲に何方か居るかどうかを見て来ますね〜っ! よしっ【天空疾風移動】発動……ッ!」
―――ビュンッッッ!!
「わぁッ!? は、速い……っ! これが、エスペランサの所持スキルですか……っ!」
スキル【天空疾風移動】を発動したエスペランサは、一瞬の内に遥か上空まで舞い上がると、その場からジ〜ッと地上を見晴らした―――。
「さてと、木々が生い茂っていない場所を重点的に見ていきましょうか……。 って、んん〜?」
「おっ、どしたーエスペランサー? 早速、誰かを見付けたのかーー?」
すると何やら、"多数の人物"の姿を遠目から捉えた様子のエスペランサが、声を張り上げながらゲノンと知恵実にその事を報告する―――。
「あ、早速見付けましたよーッ! それも、合わせて”3人程”ですー! 一人は”湖のほとり”に居て、他の二人は一緒に”大きな岩”の近くに居ますー! さぁ、それでは今直ぐにでも、彼等の下へと赴いて僕等の旅団に入ってくれる様に交渉を行いに参りましょうーッ!」
「お〜っ! 仕事が早いな〜ッ! そんじゃあ、俺とチエミの事を、そいつ等が居る所にまで案内してくれ〜っ!」
「はい! それでは、僕に付いて来て下さいね、ゲノンさんと、知恵実さんっ!」
するとエスペランサは、木々の隙間を通り抜ける形で、ゲノンと知恵実からでも目測出来る様に”低空飛行”を続けながら、先ずはこの場所から一番近くに居た『魔法使いの女性』の所にまでゲノンと知恵実を案内した――。
「お~、凄い軽やかな動きですねエスペランサ〜! キャ~格好良い〜!」
「えっ!? か、格好良いですかっ―――ギャブッッッ!!??」
―――ドガッ!
「あ、私が褒めた瞬間に前方不注意で”樹木”にブチ当たっちゃってる……。 だ、大丈夫エスペランサ〜?」
「痛っつ〜……。 す、すみません調子に乗りました……」
エスペランサは鼻を押さえながら気を取り直して低空飛行で道案内を続ける―――。
「ヘヘ、チエミの”黄色い声援”に気を取られるなんて間抜けだなぁエスペランサ! はっはっはっ!」
かくして、エスペランサの案内の下にゲノンと知恵実は和やかな雰囲気で森の中を進んで行くと、やがてその”魔法使いの女性”らしき人物の下へと辿り着いた―――。
――――トスレの森、湖のほとり―――【現在時刻、10時35分】
「あっ! まさに”あの人”ですよ! 僕が上空で見た魔法使いの服装をした女性……!」
〈わぁ〜っ! 何だか妖艶な雰囲気を身に纏ってる綺麗な人だなぁ〜……!〉
「おいおい、何を見惚れてんだよチエミ? んじゃ、さっさと話し掛けに行くぞ!」
魔法使いの女性を見付けるや否や、直ぐ様その女性に対してゲノンとエスペランサは接触を試みる―――。
「あの、こんにちは~! えっと、少しだけ僕達の御話しを聞いて頂きたいのですが……。 どうでしょうか……?」
「あら? 突然、何用かしら貴方達?」
突然の事に首を傾げている魔法使いの女性に対して、知恵実が意気揚々と説明をする。
「あ、実はですねっ! 私達は、つい先程”新たな旅団”を設立しましてね……っ! えっと、因みに名前は《愛戦旅団》と言って、私達はその愛戦旅団に入団してくれる人を探している最中なんですよ……!」
「……へぇ~? 詰まり、この”私の力”を借りたいって訳?」
「へへっ、平たく言えばそう言う事だ。 まっ、もし嫌と言うのなら、勿論断ってくれても全然良いけどよ?」
すると、その女性は訝しげにゲノン達の顔を見詰めながら、顎に手を当てながら思考する―――。
「愛戦旅団ねぇ……? えっと所で、一応聞きたいんだけど貴方達の中に”魔法を使える人”は居るのかしら?」
すると、その女性の質問に対して、知恵実とゲノンとエスペランサは御互いの顔を見合わせながら首を横に振った―――。
「いや、俺達は”特殊なスキル”を使えるだけで、一般的な魔法使いや魔女と言った様な奴は、この中には居ねぇぜ?」
「へぇ、なるほどねぇ……。 じゃ、もし私が貴方達の旅団に入ったら、私が”唯一の魔法使い”になるのね? なら、一つだけ私からの条件を呑んでくれるのなら、特別に愛戦旅団に入って上げてもいいわよ?」
何やら好意的な反応を示している魔法使いの女性から、その様に言われた知恵実は、嬉しそうな口調で慌てて聞き返した―――。
「え……っ!? 本当に入ってくれるんですかっ!? わぁ〜いっ! 新たな仲間が増えたね〜っ!」
「まぁ待てチエミ。 まだ、彼女が仲間になると決まった訳じゃねぇぞ? 先ずは、その”一つの条件”とやらの詳細を聞いてからだぜ?」
「あ、それもそうですね……っ! ごめんなさい私ってば、ついつい逸る気持ちが抑えられなくて……」
少しだけ顔を赤らめてポリポリと頬を掻いた知恵実がそう言うと、改めて魔法使いの女性が説明を話し始めた―――。
「それじゃあ、良いかしら? 実は、明日《アメリア魔法国》で魔法使い達の祭典である『ウィザードフェスティバル』が開催されるんだけどね? それで、此処からが”本題”なんだけどさ? これから貴方達には私の放つ魔法の『練習台』になって貰って明日に備えたいのよ。 ほら、折角なら万全の状態で当日を迎えたいじゃない?」
と、魔法使いの女性からの条件を聞いたゲノン達は、思わずブルルッと身体を震わせながら顔を青褪める―――。
「れ、練習台だとぉ〜ッ!? い、痛えのは俺は嫌だぜッ!?」
「ふふっ、大丈夫よ? 安心して。 ほら、この私が持っている”魔石の色”を見て?」
魔法使いの女性が、ゴソゴソと懐から”3つの魔石”を取り出して、それを知恵実達に見せびらかした―――。
「え、魔石の色ですか?」
エスペランサ達は、言われた通りに魔石の色を眺めると、ふとゲノンが、"とある事"に気が付いた。
「おぉ、こりゃあ……。 『翠の魔石』と『蜜柑色の魔石』に『漆黒の魔石』じゃねぇかよ。 んで、特にこの蜜柑色の魔石から放たれる魔法ならば、俺達はその魔法の練習台とやらになっても大丈夫かもな……」
すると、魔石やら魔法とやらの言語を聞いた知恵実は、頭に疑問符を浮かべながら聞き返した。
「えっ? どう言う事なのゲノン? その魔石って概念は何なの……? んん〜、えっと私は、ついさっきこの世界に来たばかりだから、魔法とか魔石の事とか良く分かんないんだけど……?」
「あぁ、そっか。 すまねぇ、チエミは”異世界人”だから、この世界の『魔法石』の効果を知らねぇのか。 まぁ、簡潔に説明するとだな……? 例えば、この翠の魔石から放たれる効果ってのは、周囲に”突風を生み出す”と言う奴でな?」
「突風を生み出す……ですか? こんな、なんの変哲も無い石がですか……? まぁ、異世界だから、いちいち気にしなくても良いのかな……?」
「そうそう。 チエミが元々居た世界での常識は、多分この世界では通用しねぇ筈だからな?」
〈まぁ、エスペランサが空を飛べるぐらいだし、風が石から出て来るのは、寧ろこの世界では”普通の事”……なのかな?〉
自身が今迄過ごして来た『現実の世界』と『異世界』との価値観のギャップに悩まされながらも、何とか知恵実は、この異世界の仕組みを理解していった―――。
すると魔法使いの女が、異世界の価値観を知らない様子の知恵実の為に、特別に蜜柑色の魔石の効果を教えてくれた。
「ふふっ、良く聞いててね? それで、私が手に持っているこの『蜜柑色の魔石』は、数有る魔石の中でも”一番安全”だと言われているのよ? だって、効果は身体中がポカポカしてくるってだけだもの♡」
「へーっ! 確かに、それぐらいだったら、私達もその魔法の練習台になっても平気かもねっ!」
「ヘヘ、って事で蜜柑色の魔石から放たれる魔法限定で、俺達は練習台になるって事で決まりだな?」
「うんうんっ! あ、そうだっ! 今の内に御互いの自己紹介をしよっか! 私の名は『星知恵実』だよっ! 気軽に知恵実って呼んでねっ!」
元気ハツラツに、知恵実は魔法使いの女性に向かって、大声で自己紹介を行うと、続け様にエスペランサとゲノンも自己紹介を始める―――。
「俺はゲノンだ。 宜しくな」
「僕の名は、エスペランサと申しますっ! 以後お見知り置きをっ!」
すると、一通りの自己紹介を聞き終えた魔法使いの女性も、知恵実達に向かって丁寧な口調で自己紹介を行った。
「うふふっ、私の名は『ハルキュオネ』よ。 日々、この湖のほとりで魔法の鍛錬に励んでいるの。 それじゃあ、そろそろ準備の程は宜しいかしら?」
ハルキュオネがワクワクした様子で蜜柑色の魔法石を魔法杖の先端に嵌め込んでいると、エスペランサが申し訳無さそうにしながら、ハルキュオネに断りを入れた。
「あ、すみませんっ! 僕は、先程見掛けた残りの御二人方が岩場から移動する前に勧誘に向かいたいので、この場から一旦離れたいのですが……大丈夫ですか?」
「おぉ、そうか。 なら、魔法の練習台の役割は、俺とチエミが担当しとくから、お前は一人で交渉しに向かっていってくれ。 ハルキュオネも、それで良いよな?」
「えぇ、それなら私は大丈夫よ。 練習台になる人は、チエミちゃんとゲノンさんの二人が居れば充分ですしっ♡」
「良かった……! よしっ、それでは行って来ますね〜っ!」
「おぉ〜! 気を付けろよ〜っ!」
「もし、何か危ない事が起きたら、直ぐに戻って来て、私達の事を頼って下さいね〜っ!」
「はい、分かりました! 無事に、残りの御二人方の勧誘も無事に成功して見せますともっ!」
―――ビュンッ!
かくして、意気揚々と上空に飛び立ってゆく疾風のエスペランサの事を見送った知恵実とゲノンは、ハルキュオネを《愛戦旅団》に引き入れる為に、彼女の要望通りに魔法の練習台になる事を聞き入れるのだった―――!
【現在位置】
【始まりの大地ストファー、トスレの森、湖のほとり】
【現在の日時】
【4月8日 10時43分 春】
【星知恵実】
【状態】:ワクワク
【装備】:水色のカーディガン ピンクのスカート 白のバッグ
【道具】:トランプのジョーカー1枚
【スキル】:希望の集い
【思考】
1:一体、どんな感じにポカポカするんだろう!
2:癒やし系の魔法なのかな?
3:そして、どうやらこの世界って、魔法が重要みたいだね!
【基本方針】:魔法の練習台になってハルキュオネを仲間に引き入れる。愛戦旅団の仲間を増やす。世界を愛の力で平和にする。
【卑怯なるゲノン】
【状態】:健康
【装備】:黒の服
【道具】:無し
【スキル】:認識されない存在
【思考】
1:うしっ、何時でも良いぞ〜。
2:準備は万端だぜ。
3:あ、間違っても他の魔石は使うなよ?
【基本方針】:魔法の練習台になってハルキュオネを仲間に引き入れる。愛戦旅団の仲間を増やす。死神クリスの野望を食い止める。
【疾風のエスペランサ】
【状態】:焦り
【装備】:翠の鎧 白の外套 翠の剣 袋
【道具】:金貨30枚 煙玉5個 回復瓶5個 回復薬DX10個
【スキル】:天空疾風移動
【思考】
1:彼等を見失う前に早く辿り着かないと……ッ!
2:さっき、上空から見掛けた時から、少しだけ時間は経ってしまいましたが……!
3:どうか、間に合ってくれよ……ッ!
【基本方針】:先程見掛けた二人の人物を愛戦旅団に勧誘する。
【魔法使いハルキュオネ】
【状態】:ドキドキ
【装備】:赤と黒のウィッチローブ 黒の魔法杖 深紅の魔女帽子
【道具】:翠の魔石 蜜柑色の魔石 漆黒の魔石
【スキル】尽きない魔力【効果】:どんなに体力を消費する魔法を使ったとしても一切疲れない様になる。
【思考】
1:ふふっ、生身の人間に向かって魔法を使うのは初めてよ……!
2:この蜜柑色の魔石なら、彼等に支障をきたさない筈……!
3:それじゃあ、行っくわよ〜ッ!
【基本方針】:ゲノンと知恵実の身体を使って、魔法の熟練度を上げる。ウィザードフェスティバルで優勝する。




