第六十五話 黄金の剣撃 〜五十嵐隼人編〜
〜五十嵐隼人の視点〜
――――始まりの大地ストファー、ポラ平原――――【現在時刻、8時46分】
街ゴルヒーに向かう迄の道中で、《犯罪取締連盟》の一人である『黄金騎士ラシア』と出会ってすっかり”意気投合”した様子の隼人達は、長閑に談笑しながら横並びで街ゴルヒーへと向かっていた―――。
「ふふっ、皆様の護衛は私に任せて下さいね……っ!」
「いやはや、それは助かりますなぁ〜! 頼みましたぞラシア殿っ!」
「あ、そう言えばラシアさんって、どんな”スキル”を持ってるの〜? なんだか私、気になるなぁ〜っ!」
上目遣いでソアボは”友好の証”の為にも『スキル』を見せて欲しいとラシアに御願いをすると、ラシアはポリポリと頬を掻きながら仕方無くそのソアボの頼みを聞き入れる事にした―――。
「えっ? そんなに、私のスキルの事が気になるのですかソアボさん? まぁ、別に良いですけどね? それでは、其処にいる”モンスター”に向かって実践してみますね?」
〈おっ! どうやらラシアさんのスキルの効果を拝めるみたいだなっ! 一体、どう言ったスキルなんだろう……!〉
隼人はワクワクした様子でラシアの動向を見守っていると、ラシアは大きく目を見開きながら、近くに居る”スライム”に向かって、剣の切っ先を突き立てながら自身のスキル【黄金の剣撃】を発動する―――!
「一度しか使わないので良く見てて下さいね? これが、私のスキル【黄金の剣撃】の効果ですよ………ッッッ!!!」
ビカビカッ!
ズガガガーーーンッッッ!!!
〈うぅ……ッ!? ま、眩しい……ッ!〉
「ピギュ? ピギューーーーーッッッッ!!!???」
黄金騎士ラシアが、その【黄金の剣撃】を繰り出した瞬間に、剣の切っ先の辺りからビカビカッ……と激しい光がギラギラと点滅しながら輝き始めると、そのままラシアは剣をスライムに向かって勢い良く振り下ろした―――。
―――シュンッ! ―――ズシュッッ!!
〈うわッ!? ス、スライムの身体が一瞬にして飛び散った……! マジかよ……!?〉
ラシアが振り下ろした剣撃が完璧に直撃したスライムは、跡形も無く消滅して仕舞った……。
そして、そのスライムが消滅した後になっても、ギラギラと目を開けられない程の光が、周囲に立ち込めていた……!
「う……っ! ま、まだ眩しいっ……!? これが、スキル【黄金の剣撃】の効果なのか……ッ!? お、俺は何とかスライムが弾け飛ぶ瞬間は見れたけど、皆は……!?」
「くっ……! 俺は目が開かねぇから見逃しちまったぜ……ッ! ったく、どんだけ眩しいんだよ……!」
「どわぁぁああッッッ!!?? 目がぁあッ! 目が痛いで御座いまするよーーッッ!!」
余りもの眩しさに、座衛門は慌てて眼鏡を外すと、そのまま目を押さえながら地面を高速で転げ回った―――。
〈うっわ……。 きったな……〉
すると、隼人達が冷ややかな視線を座衛門に向けている中で、一人だけ冷静な様子のムニルが、もの悲しげにボソッと呟いた―――。
「そんな、無闇にモンスターを殺さなくても……。 スライムだって、必死に"生きている"と言うのに……っ」
「す、すみません……。 私も無駄な殺生はしたく無かったのですが……」
「おいおい、ムニル! そんな事を言ってる場合じゃねぇって! 幾ら何でも眩し過ぎるってんだよッ!」
〈権兵衛さんは未だに目を開けられないのか……。 案外、明るい物に弱いのかな? ……にしても、相変わらずムニルさんは心優しい人だなぁ……〉
と、隼人がしみじみとムニルの優しさに対して感心していると、徐々に周囲から明るさが弱まり始めてゆく―――。
「さてと、そろそろ光の輝きが治まりましたね……。 ほら、彼処に飛び散ったスライムの残骸が御座いますよ? えっと、ムニルさんは気分を害させるかも知れませんので、なるべく見ない方が宜しいかと……」
「えぇ、お気遣い感謝致します……ラシアさん」
ムニルはペコリと一礼すると、くるりと背を向ける―――。
「……コホンッ。 では改めて、耐性が有る他の方々はどうぞ御覧下さい……!」
ラシアは人差し指を突き立てながら、ソアボ達に向かってスライムの”成れの果て”を見せ付けた―――。
〈うおっ!? 思ったよりも中々に"エグい"なぁ〜……。 死んだのはスライムだからって舐めてたなぁ……〉
そのスライムの姿は、まるで炎に直接焼かれたのかと錯覚してしまう程に、酷く焼け爛れていると言った様な、見るも無惨な状態になっていた……。
「如何でしょうか? これが私のスキル【黄金の剣撃】の効果です。 攻撃を喰らった対象は、この様に焼け爛れて死んで仕舞うのですよ」
すると、その素晴らしい威力を誇るスキルを見せて貰ったソアボが、御礼の気持ちを込めながら、ラシアに対して隼人達のスキルも見せて上げようと言う事を提案し始める―――。
「わぁ〜っ! こりゃあ、凄いスキルだねぇラシアさ〜んっ! あ、そうだっ! 折角だから、『皆のスキル』もラシアさんに見せて上げようよ〜っ!」
「おやおや? 皆様方のスキルも私に見せて頂けるのですか? へぇ、それは楽しみですね! 是非とも、拝見させて頂きましょうか!」
「あ〜……。 ちょ、ちょっとだけ良いかぁ?」
すると、何やらバツの悪そうな権兵衛が、頭を掻きながら説明をする。
「う~んと、すまねぇが俺のスキル【最強の意志】って奴は、この場面じゃ上手く使えねぇと思うからよぉ? だから、効果が目に見えて分かるスキルを持っている、座衛門と隼人が見せてやってくれねぇか?」
すると、その権兵衛の言葉を聞いたソアボも、うんうんと頷きながら同意する。
「あぁ~、確かに権兵衛君のスキルって、発動したタイミングが他の人から見ても良く分かんない奴だからねぇ〜……。 んじゃ、権兵衛君は”パス”って事で!」
「いやぁ、わりぃな。 って事で、宜しく頼むぜ! 隼人に座衛門ッ!」
「仕方無いですね。 それじゃ、先にスキルを御披露目しても良いですよ座衛門さん?」
「おぉっ、隼人殿っ! うむ、承知致しましたぞっ! そう言う事ならば、先ず某が【熟練の百戦錬磨】を発動して、目の前に生えている一本の木の、『枝と葉っぱのみ』を的確にバラバラに切り刻んで御覧に入れましょうぞ……ッ! そぉおりゃぁぁああッッッ!!!」
〈おっ! 何時になく”やる気満々”だなぁ座衛門さん!〉
鼻息を荒くしながら座衛門は、意気揚々と目の前に在る一本の木に向かって”剣先の照準”を合わせると、そのままの勢いでスキル【熟練の百戦錬磨】を発動する―――!
「でりゃでりゃ、でりゃぁぁああッッッ!!!」
その直後、奇声を発しながら座衛門は、一心不乱に対象の木に向かって無我夢中に剣を振り回すと、先程の宣言通りに枝と葉っぱだけを的確に切り刻んでゆく―――!
〈いや、本当に凄いな座衛門さん……!? さっき迄、ゴロゴロと地面を転げ回っていた人とは到底思えないよッ!〉
ザシュッ……! バサバサバサッ……!
「お、御見事です……! 不規則に揺れる葉っぱの1枚1枚を、的確に丁寧に切り刻んでいる……ッ! しかも、剣先の範囲が届かない位置に在る葉っぱすらも剣先から放たれている”風圧”だけで斬っている……ッ!? な、成程……! これが、スキル【熟練の百戦錬磨】の効果なのですね……ッ! いやぁ〜、素晴らしいです!」
その座衛門の可憐な剣捌きを、間近で目撃した黄金騎士ラシアは、思わず戦慄すると、尊敬の意を込めて拍手を贈った―――!
パチパチパチパチ……!
「おぉっ、中々やるじゃねぇかよ座衛門ッ!」
すると、ゼェハァと”息切れ”を起こしている様子の座衛門は、苦悶の表情でラシアに向かって親指を突き立てる。
「ゼェ……ゼェ……。 ど、どうで御座いますか……ッ!? す、凄いでしょうッ!? 某の力は……ッ! ゼェ……ハァ……」
「えぇっ! 確かに、とても眼を見張るものがありましたよっ!」
〈いや、それよりもマジで体力が無いな座衛門さんって……〉
息を切らした座衛門の様子を見た隼人は、やれやれと肩を竦める―――。
「まぁ、確かに凄ぇがよぉ? 致命的に体力が無ぇってのは明確な座衛門の”弱点”だな。 うしっ、じゃあ次は隼人の出番だなッ! 頑張れよ隼人ッ!」
権兵衛は、力強く隼人の背中をパンっと叩く。
―――パシンッ!
〈うわッ!? び、びっくりした……! だ、だけど御蔭で気が引き締まったぞ……!〉
隼人は、その権兵衛からの後押しを貰った御陰で、ラシアに向かって自信を持ってスキルを発動する事が出来る様になった。
「は、はいっ! 精一杯頑張ります……っ! それでは、俺のスキル【刹那の狙い撃ち】を使って、素早く空を飛び回っている、あのモンスターの事を見事に撃ち抜いて見せましょう……!」
隼人が指差した先には、一匹の小さな”飛龍”がフラフラと空を飛んでいる姿が在った。
「なるほど、隼人さんは”弓使い”なのですね……! それでは、御手前の程、拝見させて頂きます……!」
「はいっ。 スゥー……。 ……よしっ」
隼人は大きく息を吸い込みながら”一本の矢”を弓に装着して、空を飛んでいる獲物に向かって照準を定めると、落ち着き払った状態で、弓を静かにグッと引き寄せてから、完璧なタイミングで手を離した―――。
―――ビュンッ! ザシュッッ!!
『グギャォォオオッッッ!!!』
隼人が持つ弓から勢い良く放たれた矢は、綺麗な一直線を描きながら、軽快に動き回っている小さな飛龍の"腹部"を鮮やかに貫いた―――!
〈ふぅ……。 初めてスキルを使ってみたけど、案外"緊張"するもん何だなぁ……〉
「……見事です隼人さん……ッ!」
「わぁ〜っ! 隼人君ってば、早速スキルを使いこなしてるね〜っ! 練習も、まだ殆どしていないと言うのに、こうも簡単に【刹那の狙い撃ち】を”マスター”しちゃうなんてね〜……っ!」
「えっ? その口振りだと、このスキルって”練習が必須”な奴だったんですか……!?」
すると、ソアボは申し訳無さそうに苦笑いを浮かべながら、隼人に与えた【刹那の狙い撃ち】の言い忘れていた詳細な効果を説明した―――。
「えっへへ〜。 今まで黙ってたけど、その【刹那の狙い撃ち】ってスキルは、本来なら使う度に精度が上がっていくと言った仕組みだから、”最初は失敗”するのがセオリーだったんだよね〜っ!」
「えっ? そ、それじゃあ危うく俺は失敗する所をラシアさんに見せ付ける所だったって事……ですか?」
「ゴメンゴメンっ! でも、どうやら隼人君はセンスが良いみたいだから、練習なんて不要だったみたいだねっ! いやぁ〜、説明不足でゴメンネ!」
ソアボは、両手を擦り合わせながら、隼人に向かって何度も平謝りをする。
「いや、そんなに何度も謝らなくても良いですよソアボ様っ! 寧ろ、俺に”狙撃の才能”が有ったと言う事が分かって、内心凄く嬉しいって思い始めていますよ……っ!」
隼人は、ソアボの事を宥めながら、心の中で軽くガッツポーズを決めていた。
〈おいおい、と言う事はアレか? 俺は途轍もない”ポテンシャル”を秘めてたって話かぁ〜っ!?〉
「えへへっ! 喜んでいる様なら良かったよ隼人君っ!」
こうして、無事に座衛門と隼人のスキルの効果を見終えたラシアは、目を爛々と輝かせながら、自分自身に改めて”気合い”を入れ始めた。
「感服致しましたっ! 皆様方は、とても”優秀なスキル”を御持ちだったのですね……っ! いやはや、これは私も負けてはいられませんね……っ! もっと気合いを入れていかないと……!」
「そんな! 俺なんかよりも、ラシアさんの方がずっと優秀ですって!」
「ふふっ、そんなに御謙遜なさらずに! さぁ、それでは街ゴルヒーへと向いましょうか! お互いの結束力も深まった事ですしねっ!」
「うんっ! そうだねっ☆ それじゃあ、出発進行だね〜っ!」
かくして、お互いのスキルの効果を見せ合った事によって、黄金騎士ラシアと隼人達との間に、”確かな絆”が芽生え始めたのだった―――。
【現在位置】
【始まりの大地ストファー、ポラ平原】
【現在の日時】
【4月8日 9時6分 春】
【五十嵐隼人】
【状態】:ワクワク
【装備】:紺色のコート クリーム色のズボン 深紅のベルト 耐久の弓 旅人の袋
【道具】:毒の矢10本 炎の矢10本 痺れの矢10本 普通の矢29本 服屋ドア・ゼルのポイントカード
【スキル】:刹那の狙い撃ち
【思考】
1:どうやら、俺は弓矢を扱うセンスが有るみたいだなっ!
2:もっと、このスキルを極めないとな……!
3:そうすれば、もっと皆から頼られるかも……っ!
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。異世界生活を楽しむ。仲間を護る。ソアボの事が気になる。仲間から頼られたい。
※普通の矢を一本消費しました。
【仁科権兵衛】
【状態】:健康
【装備】:騎士の鎧 斬撃の剣 鉄壁の小盾 旅人の袋
【道具】:銀貨5枚
【スキル】:最強の意志
【思考】
1:皆、良い感じにスキルを使いこなしてんなぁ〜っ!
2:こりゃあ、頼りになるぜぇッ!
3:俺も、どんどん身体を鍛えねぇとだなッ!
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。隼人と親友になる。仲間を護る。魔王を倒して現世に帰る。
【大宮座衛門】
【状態】:疲労 吐き気
【装備】:眼鏡 侍のコスプレ服 美乳剣舞の痛剣 旅人の袋
【道具】:美乳剣舞のシール50枚
【スキル】:熟練の百戦錬磨
【思考】
1:ゼェッ……ゼェ……。
2:調子に乗るもんじゃ無いですなぁ……。
3:オエェ……ッ。
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。ハーレムを創る。美乳剣舞を世界中に広める。自身を轢き殺したトラックの運転手を成敗する。
【娯楽の女神ソアボ】
【状態】:健康
【装備】:金色の羽衣 金色の指輪と腕輪 女神の袋
【道具】:女神の袋の中に色々な物が入っている
【スキル】:能力授与
【思考】
1:なんだか、良い感じだねっ?
2:でも、座衛門君ってば、調子に乗って疲れまくってるなぁ〜……。
3:ムニルちゃんと権兵衛君は大丈夫そうだけどね……。
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。隼人達の事を気に掛ける。
【ムニル・ル・ナータ】
【状態】:悩み
【装備】:街娘の服 巨大な風呂敷
【道具】:組み立て式のテント 調理器具 小型の冷蔵庫 様々な食料品 ナイフ、フォーク、スプーン各10本
【スキル】:極限の癒やし
【思考】
1:見せしめにされたモンスター達の事も癒やして差し上げたいのですが……。
2:このまま淘汰されて仕舞うのは余りにも可哀想です……。
3︰私に何か出来る事は……?
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。世界中の全生物を癒やしたい。隼人と付き合いたい。
【黄金騎士ラシア】
【状態】:興奮
【装備】:黄金の兜 黄金の鎧 黄金の剣と盾
【道具】:捜査資料
【スキル】:黄金の剣撃
【思考】
1:凄いですよ皆さんっ!
2:何れは、皆様も我等が犯罪取締連盟にへと加入して頂きたいものですね……っ!
3:隼人さん達なら”即戦力”ですよ……!
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。隼人達を護衛する。精霊戦士ゲンサから話しを聞く。
◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇
〜とある謎の男達の視点〜
とある謎の二人組が”望遠鏡”を手にしながら、ソアボ達の動向をジッと見張っていた……。
「……ほぉ。 どうやら、あれが『女神様』か。 遠目では分かり難かったが、どうやら本当に女神様とやらも、この世界にやって来た様だな……? なぁ、お前にも見えてるだろ? 『ヒートン』?」
「あぁ、勿論だとも『インボル』。 これからも、奴等の動向を監視するぞ」
「そうだな、ヒートン。 これから、あの女神様がこの世界で、一体どんな"波乱"を巻き起こすのかを、我等がしっかりとこの目で見届けないとな……」
「だな、インボル。 だが、なるべく奴等に干渉しない様に気を付けないとな。 俺達は、”空気”を徹するんだ……」
「分かってるさ。 ふふふ、ふふふははは!」
謎の二人組は、不気味に含み笑いをしながら、ソアボの顔を、まじまじと望遠鏡の中から眺め続けるのであった―――。
【現在位置】
【ポラ平原】
【特殊機密偵察部隊隊員No.01ヒートン《炎人族》】
【状態】:冷静
【装備】:サングラス グレーの偵察服 サイレンサー銃 袋
【道具】:弾薬50発 金貨20枚 望遠鏡
【スキル】忍び寄る影【効果】:相手に一切気付かれる事無く、接近し続ける事が出来る。
【思考】
1:ふふっ、気付かれていないな。
2:慎重に監視を続けるぞ。
3:はぁ……麗しき女神様……。
【基本方針】:娯楽の女神ソアボを監視する。
【特殊機密偵察部隊隊員No.09インボル《機械族》】
【状態】:冷静
【装備】:サングラス 黒の偵察服 スナイパー銃 袋
【道具】:弾薬50発 金貨20枚 望遠鏡
【スキル】身代わりの加護【効果】:自身が受けたダメージを他人に肩代わりさせる事が出来る。
【思考】
1:あぁ……女神様……。
2:凄まじき威光……!
3:ずっと、我等が密かに見守り続けて居りますよ……。
【基本方針】:娯楽の女神ソアボを監視する。




