第五十五話 黄金騎士ラシア 〜五十嵐隼人編〜
〜五十嵐隼人の視点〜
――――始まりの大地ストファー、ポラ平原――――【現在時刻、8時23分】
《冒険者ギルド》を目指して、街チーマから”街ゴルヒー”へと向かっている最中の隼人達一行は、その道中で”とある一人の騎士”の姿を遠目で捉えた。
〈んん? 遠くに見えるあの人って、もしかして……?〉
と、隼人が額に手を当てながら目を細めて考えていると、隣りに居るソアボも次第に声を上げた。
「おーっ? ねぇ、見てみてぇ〜っ! 彼処に、”黄金の鎧”を纏った格好良い感じの騎士の人が居るよ〜っ!」
ソアボは、遠くに居るその黄金騎士の事を見付けるや否や、興奮した様子で隼人達に振り向きながら語り掛けた。
〈うわッ! 相変わらずテンション高いなぁ〜ソアボ様……。 まぁ、確かにあの遠くに見える騎士の人は格好良いけどさぁ……〉
すると、ソアボに語り掛けられたムニルも、驚いた様子で声を上げた。
「あ、本当ですねソアボ様っ! それにもしかしたら、あの方って《犯罪取締連盟》の御方ではありませんか?」
すると、そのムニルが発した《犯罪取締連盟》と言う言葉が気になった様子の権兵衛が、腕組みをして首を捻りながら質問した。
「んあ? おい、ムニル〜? 何だ、その犯罪取締連盟ってよぉ?」
「あ、そっか! えっと、ゴンベエさん達にも分かる様に説明致しますと、その犯罪取締連盟と言うのはですねぇ〜? 所謂、皆さんの世界で言う所の『警察官』みたいなものなのですっ!」
すると、そのムニルの返答に対して、座衛門がコクコクと納得したかの様に頷きながら声を発した。
「むむっ、警察官ですと? 成程、要するにその犯罪取締連盟とやらが、この異世界の治安を守っていると言う訳ですなぁ〜っ!」
「ふふっ♪ 理解して頂けたみたいで嬉しいです、ザエモンさんっ!」
こうしてムニルから、犯罪取締連盟の話を聞いた隼人は次第に感銘を受け始めた。
「へぇー! この世界にも、警察官みたいな組織が存在するんですねぇー。 それで、他には何か無いんですか? 例えば、この世界に存在する”特別な組織”みたいなのは?」
「うーん、特別な組織……ですか? そうですねぇ? 一応説明しておきますと、この世界には《三大旅団》と《三大連盟》なる物が存在していましてね?」
「三大旅団と、三大連盟……ですか? な、何だか凄そうな響きですね……」
「えぇ、実際凄いんです。 実は、この世界には、犯罪取締連盟の他にも《平和維持連盟》と、《魔族抹殺連盟》が存在していましてね? 平和維持連盟とは、主にこの世界に置ける”重鎮”等が集結して結成された連盟でして、もう一つの魔族抹殺連盟とは『魔族』に対して強い恨みを持っている人達を集めて結成された連盟でしてね……」
すると、ふと魔族抹殺連盟の話をしている最中のムニルの表情が、どことなく”苦しそうな表情”に変わって来ている様子に隼人は気付いた―――。
〈……あれ、何故だろう? ”魔族の話”をしている時だけ、何処かムニルさんが息苦しそうに見えた……?〉
ムニルが過去に、魔族との間に”何か”が起きたと言う事を瞬時に察した隼人は、フォローを入れる様に話を続ける。
「なるほど……。 ムニルさんの話を聞く限り、何やらその魔族と言う種族は、俺達にとっても”厄介”な存在になるかも知れないって事ですか……?」
すると、隼人がボソッと呟いた”厄介”と言う言葉を聞いた途端に、ムニルが微かに寂しげな顔を浮かべると、そのまま隼人達に向かって静かに語り出した……。
「……魔族に対して誤解させる様な言い方をしてしまい申し訳有りません……。 世間一般的には、魔族は”悪の種族”だとか言われて居りますが、私はそうは思いません……」
キッパリと魔族は悪くないと断言したムニルに対して、権兵衛が不思議そうに聞き返した。
「え、ムニルは何で魔族が悪い種族じゃないと思ったんだぁ?」
「……その理由とは、その昔まだ私が幼かった頃に、危険な森の中に入って行った私の事を必死に護ってくれた”悪魔の子”が居たのです……」
「悪魔の子……ですか? えっと、その話を俺達にも詳しく教えてくれませんか……?」
隼人から問われたムニルは、しみじみと過去の出来事を思い浮かべながら、そっと口を開く……。
「えぇ、分かりましたハヤトさん。 その悪魔の子の名は、《ベルファス》。 恐らく、その悪魔の子が現在の魔族の王に君臨している『魔王ベルファス様』御本人だと思うのです。 ですから、いつか私は直接その魔王ベルファス様と相対した暁には、あの日の御礼を心の底から申し上げたいのです……」
〈なるほど! 確かに現在の魔族の王が過去に”善行”を働いていたのなら、少なくとも今の魔族には危険性が無いかも知れないって訳か……!〉
ムニルから重要な情報を聞いた隼人は、簡単に納得したものの、その隼人とは対照的に権兵衛は酷く困惑した様子で冷や汗を掻いていた……。
「お、おい! ちょっと待てよッ!? じゃあ、詰まりこの世界の魔王って奴は、そんなに悪い奴じゃねぇと言いてぇのかよ……ッ!?」
「……はい。 勝手ながら、私はその様に思っていますよ……? その事が何か”問題”でも……?」
すると、咄嗟に権兵衛はソアボの方に向き直ると、そのままソアボの首根っこを掴みながら、怒鳴り始めた!
「おいソアボ! 天界で聞いていた”話と違う”じゃねぇかよッ! この世界の魔王は悪い奴じゃねぇのかよッッッ!!!」
すると権兵衛に首根っこを掴まれたソアボは、ほっぺたに人差し指を当てながら困り眉で首を横に傾げた……。
「うーん? 別に私は、”魔王が悪い奴”だって言った記憶は無いんだけどなぁ〜? そもそも、勝手な”先入観”に囚われていたのは権兵衛君の方でしょ〜? だから、別に私は何も悪く無いでしょ〜っ?」
そんなソアボの開き直った態度に対して、権兵衛は呆れた様子でソアボを地面に投げ飛ばすと、そのままムニルに向けて”宣戦布告”した―――。
ドサッ!
「へぶっ!?」
〈うわぁ〜、ソアボ様痛そ〜……。 モロに顔面を地面に打ち付けたな……〉
「ヘッ、そうかい! まぁ良いさ。 おい、ムニル! オメェには悪いが、俺は元に居た世界に戻る為にも魔王を殺して願いを叶えねぇといけねぇと言う”使命”があんだよッ! 詰まり、残念だが魔王ベルファスの事は諦めてくれッ!!」
〈権兵衛さん……。 魔族に対して”情が移る前に”、魔王を殺すつもりなんだな……〉
覚悟を決めた表情を浮かべている権兵衛から、その事を聞いたムニルは俯きながら心苦しそうに口を開く……。
「そう……ですよね。 ゴンベエさんが元の世界に戻る為には、”魔王様の殺害”以外に方法は無いのですよね……? それに、ゴンベエさんにとっては、魔族が悪いとか良いとか最早”関係無い事”ですものね……」
「あぁ、そうさ……。 ムニルには悪いが、俺には魔族よりも、現世に居る血の繋がった”家族”との再会の方が大事だからな……。 すまないが、魔王の事は最終的に俺の手で殺させて貰うぜ……」
〈これは不味い事になったな……。 と言うか、異世界なら魔王は悪い奴で居てくれよ……。 頼むからさ!〉
と、隼人が脳内で頭を悩ませていると……。
「あーーーっ!」
突如として、ソアボが慌てた様子で遠くに居る”黄金騎士”の方を指差しながら、大きな声で隼人達を呼び掛けた。
「え、突然どうしたんですかソアボ様……?」
「どうしたじゃないよッ! ねぇねぇっ! もーーっ! 魔王の善悪の事とか、私には”どうでも良い事”だからさ〜? 早くあの格好良い騎士の人の下へと行こうよ〜っ! このままじゃ、彼の事を見失っちゃうよ〜っ!」
ソアボと同様に、この場の空気の流れを変えたい座衛門も、ソアボの意見に賛同しながら騎士の下へと歩き出す。
「某も、こんな魔王を殺すとか殺さないとかの”暗い話題”は嫌で御座いまするよ……。 なので、気分転換も兼ねて、あの黄金の騎士の下へと急ぎましょうぞ〜っ!」
「おっ! 座衛門君、分かってるぅ〜! ね、だから早く行こうよ〜っ!」
こうして、権兵衛とムニルは御互いの顔を見合わせながら、ここは一先ず”閑話休題”と言う事でソアボと座衛門の意見に賛同する事となった……。
「まっ、確かにな……。 そもそも、俺が魔王と戦うのは、まだまだこれからの話だしなぁ……。 すまねぇ、ムニルッ! 少々、気が早かったみてぇだぜ……」
「別に謝らなくとも大丈夫ですよゴンベエさんっ♪ ふふっ、それじゃあソアボ様の後を追い掛けましょうねっ♪」
こうして話が纏まった隼人達は、一斉に黄金の鎧の騎士の男の下へと駆け寄ると、そのまま騎士の男に対して会話を試みようとする。
「お初に御目に掛かります、其処の格好良い騎士の御方……! 少しばかり、御時間を頂戴致しても宜しいですかなぁ……?」
不意に背後から座衛門に話し掛けられた黄金の騎士の男は、ビクッと驚いた顔を浮かべると慌てて後ろを振り返りながら返答する―――。
「え? えぇ。 別に大丈夫ですけど……。 どうかなさいましたか?」
「いえいえ、某達は単に貴方のその”荘厳なる御姿”に惹かれて、ついつい話し掛けて仕舞っただけで御座いまするよぉ〜っ!」
すると、その手を擦り合わせている座衛門から発せられた言葉を聞いた途端に黄金の騎士の男は、安堵したかの表情でホッと胸を撫で下ろす。
「なんだ。 良かったですよ……。 また何か”事件”が起きたのかとばかり……」
「むむっ、事件ですと? この辺りで、何か起きたのですかな?」
眉を顰めた座衛門が黄金の騎士の男に向かって、すかさず問い掛けてみると、黄金の騎士の男は昨日此処の近くで一体何が起こったのかを説明した―――。
「実はですね、つい昨日……。 此処から近くに在る『教会ノイリ』と言う名の場所にて『聖職者殺人事件』なる惨劇な事件が巻き起こったのです……。 おまけに《デイルン》と言う名の街にも、何やら”強盗事件”が起きたらしく……。 ふぅ、なので昨日から今日に掛けるまで大変でしたよ……」
「そうだったんですね……。 あ、”大変”だったと言う事は、もしや貴方は先程ムニルさんが言った通り《犯罪取締連盟》の方なのですね?」
「えぇ、そうですね。 正真正銘、私は犯罪取締連盟の一員ですよ。 はっ、すみません申し遅れましたが、私の名は『黄金騎士ラシア』と申します! 以後、御見知り置きをッ!」
敬礼をしているラシアから自己紹介をされた隼人達は、すかさず自分達もラシアに向かって敬礼しながら自己紹介を始めた。
「黄金騎士ラシアさん……ですね? あ、俺の名前は『五十嵐隼人』と申しますっ!」
「コホンッ。 某は『大宮座衛門』と申すッ! 此方こそ、以後御見知り置きを……」
続け様に、ソアボ達も簡潔に自己紹介を始める。
「私は『ソアボ』だよ〜っ! ラシアさん、よろしくね〜っ!」
「俺ぁ、『仁科権兵衛』だ。 気軽に権兵衛って呼んでくれや」
「『ムニル・ル・ナータ』と申します。 宜しく御願い致しますねっ♪」
こうして、ひと通りの自己紹介を終えた隼人達は、ラシアから”とある質問”をされる。
「これはこれは、御丁寧にどうも。 おっと所で、貴方方はこれから何方まで行かれるのですか?」
と、ラシアから問われたので、ソアボが意気揚々と質問に答えた。
「”ゴルヒー”って名の街だよーっ! 私達は、冒険者ギルドが在る街を目指してるんだよね〜っ!」
すると、ソアボからその話を聞いたラシアが、陽気な口調で声を発した。
「ほうっ! これはこれは、”奇遇”ですね……っ! 丁度、私も街ゴルヒーに居る”友人”と会う予定だったのですよ〜っ! はっはっはっ! それならば折角の御縁ですし、その街ゴルヒーに辿り着く迄の間、私が貴方方を”護衛”して差し上げましょう!」
「え!? 俺達を護衛してくれるって、本当に良いんですかッ!?」
「えぇ、勿論ですとも! あ、それと”謝礼”も要りませんよ〜? 私は、犯罪取締連盟の一員としての”善意”により、貴方方を勝手に護衛するだけですから、特に御気になさらずっ!」
「あ、ありがとうございます……っ!」
隼人は、何度もペコペコと平謝りしながら、心優しい黄金騎士ラシアに向かって、感謝の言葉を述べる。
「はっはっはっ! ですから、そんなに畏まらなくとも良いですからねぇ〜っ!」
〈うわぁ〜っ! めっちゃ良い人じゃんラシアさんって……!〉
かくして隼人達一行は、気前の良い《黄金騎士ラシア》と言う名の男に護衛されながら、街ゴルヒーへと向かうのであった……。
【現在位置】
【始まりの大地ストファー、ポラ平原】
【現在の日時】
【4月8日 8時36分 春】
【五十嵐隼人】
【状態】:健康
【装備】:紺色のコート クリーム色のズボン 深紅のベルト 耐久の弓 旅人の袋
【道具】:毒の矢10本 炎の矢10本 痺れの矢10本 普通の矢30本 服屋ドア・ゼルのポイントカード
【スキル】:刹那の狙い撃ち
【思考】
1:とても良い人だなぁ〜……。
2:にしても、先程から権兵衛さんとムニルさんの表情は晴れていないですけども……。
3:やっぱり、さっきの話を引きずってるんじゃ……?
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。権兵衛とムニルの事を気に掛ける。ソアボが気になる。
【仁科権兵衛】
【状態】:悩み
【装備】:騎士の鎧 斬撃の剣 鉄壁の小盾 旅人の袋
【道具】:銀貨5枚
【スキル】:最強の意志
【思考】
1:………………。
2:悪いなムニル……。
3:俺の、魔王の事を殺すと言う決意は、今後も何が有ろうと一切揺るがねぇからよぉ……。
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。隼人と親友になる。仲間を護る。誰になんと言われても元の世界に帰る為に魔王を殺す。
【大宮座衛門】
【状態】:うっとり
【装備】:眼鏡 侍のコスプレ服 美乳剣舞の痛剣 旅人の袋
【道具】:美乳剣舞のシール50枚
【スキル】:熟練の百戦錬磨
【思考】
1:黄金の騎士……!
2:なんと格好良い響きで御座いまするぅ〜!
3:惚れ惚れ致しまするなぁ〜……っ!
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。ハーレムを創る。美乳剣舞をこの世界で流行らす。自身を轢き殺したトラックの運転手を成敗する。
【娯楽の女神ソアボ】
【状態】:元気
【装備】:金色の羽衣 金色の指輪と腕輪 女神の袋
【道具】:女神の袋の中に色々
【スキル】:能力授与
【思考】
1:やったー!
2:ラシアさん男前で格好良い〜っ!
3:さぁ、行くぞ〜っ! 街ゴルヒーへとッ!
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。仲間達と冒険を楽しむ。天界の神々に復讐する。邪魔する者は殺す。死神クリスの動向を探る。
【ムニル・ル・ナータ】
【状態】:迷い
【装備】:街娘の服 巨大な風呂敷
【道具】:組み立て式のテント 調理器具 小型冷蔵庫 様々な食料品 ナイフ、フォーク、スプーン各10本
【スキル】:極限の癒やし
【思考】
1:ベルファス様……。
2:私は、一体どうすれば……?
3:ゴンベエさんの事を止めるべきか、止めないべきか……。
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。この世界の全生物を癒やす。権兵衛を止めるか迷っている。隼人と付き合いたい。
【黄金騎士ラシア】
【状態】:健康
【装備】:黄金の兜 黄金の鎧 黄金の剣と盾
【道具】:捜査資料
【スキル】:黄金の剣撃
【思考】
1:先程、古くからの友人である『精霊戦士ゲンサ』から直ぐに街ゴルヒーへ来いとの連絡があったが……。
2:ともかく、迅速に行動しなければ……。
3:この者達の事も、私がしっかりと護衛せねば……。
【基本方針】:街ゴルヒーへと向かう。隼人達を護衛する。ゲンサから詳しく話しを聞く。




