第五十四話 加藤陽太と黒魔女シーニ 〜女神セウン編〜
〜女神セウンの視点〜
――――天界――――【現在時刻、不明】
現世で亡くなった人の中から、異世界送りにする人物の”厳選”を行っている最中のセウンとタクヤは、手にしている《死亡者リスト》のページを捲ると、ふと”一枚の写真”を見ながら思案する……。
「へぇ、『加藤陽太』か……。 えっと、コイツの死因は、下校中に突然雷に打たれて死亡か……。 どうやら、生前に余り良い事も無かったっぽいし、転生させるのは不憫なこの子にすっかな〜?」
「あら、確かにその子の様に不幸な人生を送って来ちゃった残念な子は異世界に送って上げても良いかもねぇ? よしっ、そうと決まったら、早速その不幸な陽太君を天界に呼び出しましょう!」
セウンはそう言うや否や、大きく天を仰ぎながら、加藤陽太を天界へ呼び寄せる為の”召喚の儀式”を始めた。
「セ、セウン……? 急にどうした?」
「あら、これは召喚の儀式よ?」
「へぇ、なるほどな。 それをしたら陽太をこの場に喚べるって事だな?」
「そーゆー事よ。 はい、儀式終わりっ! そろそろ陽太君が来る筈よっ!」
「おっ、なんだよ! 結構、簡単に呼べるんモンなんだな?」
「まぁね。 ほら、早速”お出まし”みたいよ?」
セウンがそう告げると、次の瞬間には周囲が”蒼白く光る眩い光り”に包まれた―――。
「う、眩しい……っ!」
〈ふふっ、来たわね……っ♪〉
この蒼白い光は、セウンが今まさに天界に呼び出した少年が、うつ伏せに倒れ込んだ状態で天界へと召喚させられて来られた事を知らせる為のものだった。
こうして、セウンとタクヤは、ゆっくりとした足取りで少年の下へと駆け寄って行く……。
「お、大丈夫か少年! いやぁ〜、災難だったな〜? 突然、雷に打たれるなんてようっ!」
すると、そんなタクヤの陽気な口調の問い掛けにより、やがて少年は目を開くと、そのまま顔を上げて動揺した様子で辺りをキョロキョロと見回し始めた……。
「え……っ? い、一体何が起こったの……? え? 此処は”天国”? 僕は死んだの?」
事態が上手く飲み込めない様子の陽太は、とても混乱している様子だ。
すると、その混乱した様子の陽太を落ち着かせる為に、セウンが優しい口調で現状を説明をした。
「お目覚めの様ね、陽太君。 どうやら貴方は、下校中に突然雷に打たれて悲しい事に亡くなってしまったみたいなの……。 でも安心してね? 私達が、そんな可哀想な君の事を想って、”特別”に異世界に転生させて上げるからね?」
セウンから”異世界転生”と言う単語を聞いた陽太は、更に脳内が混乱し始める。
「え? ……異世界? 転生?? いやいやいやッ! そんな、”ゲーム”や”マンガ”みたいな事が起こり得るのですか……っ!?」
「そんな事言われてもなぁー? どうするよセウン?」
「まぁ、一々説明をしなくても、彼を異世界に送って上げれば嫌でも理解してくれるでしょ?」
「だな。 おっし、んじゃ良いか陽太?」
「な、何がですか―――」
すると、タクヤが面倒臭そうな態度で陽太の言葉を遮りながら、続け様に陽太に向かってどんな"スキル"が欲しいのかを問い掛けた。
「まぁまぁ、もうこの手のやり取りはいいや。 んじゃあ陽太? 早速だが、異世界転生をするにあたって、何か希望の欲しい”チートスキル”は有るか?」
「チ、チート……スキル? なんですか、それって?」
「んあ? もしかして、この手の”異世界転生物”を見た事がねぇのか?」
「うぅ、ごめんなさい……。 ”にわか”なもんで……」
「仕方ねぇなぁ……。 例えばさ? ”最弱職からの下剋上”とか、”追放された者が結局最強でモテモテになったり”とか、何なら”悪役令嬢に性転換転生して破滅フラグをブチ折ったり”とかでも良いしさぁ? だから、何か自分なりにやりてぇ事とか好きな事を言ってみろよ? なっ?」
タクヤは、ニコニコと悪い顔を浮かべながら、陽太にそう詰め寄ると、暫しの沈黙の後に陽太は自分の顎に人差し指を当てながら返答する……。
「自分がやりたい様な好きな事……ですか? え〜と、んーと……? じゃあ、僕は『魔法』を使ってみたいんで、最初から色んな魔法が『最大値位まで強化された状態で転生したい』とかですかね……」
すると、その陽太の言葉を聞いたタクヤは、鼻息を荒くしながら陽太の両肩を掴むと、そのまま意気揚々と喋りだした。
「そうだよな、そうだよなぁ〜っ!? やっぱ男ならよ、一度位は圧倒的な力で世界を蹂躙してみてぇよなぁッ!? よし分かった! セウン、っつー事で最初から最大限の魔法が使えるチートスキルの名は何だッ!?」
そのタクヤの問い掛けに、セウンは瞬時に答えた―――。
「んーとね……。 確か【大魔道士】と言うスキルが有った筈よ? だから、彼に授与するスキルは、それで良いんじゃな〜い?」
「オーケー! 【大魔道士】だな! んじゃあ、陽太ッ! これから、お前にそのスキルを授与させてやっからな〜? そ〜らよぉっ!」
「えッ、えぇッ!?」
そう言い放ったタクヤの掌から、僅かな光を放ち続けている”小さな球体”が現れると、そのまま混乱している陽太の胸の中へとポウッ……と入って行った。
「わわっ! なんですか……これぇ〜っ!?」
「ヘヘっ! お前に【大魔道士】のスキルを授与したんだよ。 じゃあ、このままノータイムで異世界に送るから達者でな〜っ!」
「ちょ、ちょっと待って下さい! そんな唐突に言われてもっ!? それに、まだ詳しく話しを……って、どわ〜〜っ!!??」
シュン―――………ッッッ!!!
こうして陽太は、若干手抜きになり始めたタクヤとセウンの手によって、否応無く異世界へと送られて行った……。
「頑張れよ……陽太!」
「グッドラックよ……陽太君!」
【現在位置】
【天界】
【現在の日時】
【日時不明】
【慈悲の男神タクヤ】
【状態】:健康
【装備】:純白の羽衣 純白の指輪と腕輪 男神の袋
【道具】:男神の袋の中に色 沢山の死亡者リスト
【スキル】:上級スキル能力授与
【思考】
1:ふぅー、良い仕事したぜ〜っ!
2:きっと、陽太も感謝している事だろう!
3:じゃあ、次の転生させる奴を決めるかぁ〜。
【基本方針】:異世界転生をする人を厳選する。今度は女性を転生させて上げたい。仕事が一息ついたらセウンとイチャコラしたい。
【旋風の女神セウン】
【状態】:健康
【装備】:翠の羽衣 翠の指輪と腕輪 女神の袋
【道具】:女神の袋の中に色々 沢山の死亡者リスト
【スキル】:旋風の危機察知
【思考】
1:さぁ、次ね!
2:そろそろ、女性の方を転生させないと、転生者のバランスが悪いわね……。
3:よし! 次は女性の方を要点的にチェックよっ!
【基本方針】:天界を護る。次は女性を異世界転生させる。天界の仕事をサクサク進める。
◇■◇■◇■◇■◇■◇■
〜加藤陽太の視点〜
――――始まりの大地ストファー、ポラ平原――――【現在時刻、8時55分】
「うわ〜……ヘぶっ!」
陽太は顔面を打ち付けながら、なんやかんや無事に始まりの大地ストファーの”ポラ平原”へと転生された。
「う〜。 滅茶苦茶だぁ〜。 何もかもが滅茶苦茶だぁ〜ッ!」
意味不明な状態で、無理矢理タクヤ達に異世界転生された事によって、未だに陽太の脳内では”大混乱”を巻き起こしていた……。
〈くそ~っ! なんて雑な仕事をする神様だっ! 場合によっては”誘拐罪”で訴えてやるっ!〉
そして、陽太は冷静さを取り戻す為にも、深呼吸をしながら一旦ふと先程のタクヤが言い放った言葉を思い返してみる……。
「……あっ、そう言えば! その神様から”謎のスキル”を貰ったんだっけか……! 確か、僕が渡されたのは【大魔道士】と言う名前のスキルだった筈……。 と言う事は、今の僕は”途轍もない力”を持っているって事なのかなぁ……?」
陽太は、そう思い立つと早速、試しに近くの”一本の木”に向かって火っぽい物を掌から出そうとする。
〈おっ! な、何だか段々と手の中が”熱く”なって来たぞ……!〉
そして、陽太が思いっ切り掌に力を込めた次の瞬間……!
「行っけー! なんか火っぽいの出ろ〜っ!」
ボォォオオッッッ!!!
「ふぇっ!!??」
なんと、陽太が想定していたよりも”数10倍”もの威力を誇る《火炎球》が、陽太の掌から勢い良く放たれた―――。
そして、その火炎球が木に衝突すると同時に、辺りに爆音が轟いた―――。
ドッゴーーーンッッッ!!!
呆然とした様子の陽太の前方には、メラメラと火柱を上げている雑草と燃え木が徐々に周辺に燃え広がっていた―――。
「やばいやばい! すみません! ほんの”出来心”だったんですッ! うわぁ~ッ!? こ、このままじゃ辺り一面が”大火事”になっちゃうよぉ〜っ! ハッ、そうだ! 僕の手から何か水っぽいの出ろーーーッッッ!!!」
焦った陽太は、慌てて掌から大量の水を出して消火活動を試みようとすると、これまた陽太の想定していた”数10倍”もの威力の水が、陽太の掌から放出され始めてゆく……。
ジョババババッッッ!!!
〈うわわっ!? こりゃまた、凄い勢いだ……っ! だけど、これなら消火出来る……ッ!〉
陽太の掌から放たれる大量の水を浴びた燃え木と雑草は、やがて徐々に炎の勢いが弱まってゆくと、そのままゆっくりと、枯れ木と枯れ草になっていった……。
こうして、何とか消火活動を終えた陽太は、自身の両手を見詰めると、喜ぶどころか寧ろ”萎縮”してしまった―――。
「え、えらい事だ……。 僕は、とんでもない『スキル』を手に入れて仕舞ったのかも知れない……」
この、天界の神達から授けて貰った【大魔導士】と言う名のスキルは、使いどころを間違えると簡単に人を殺めて仕舞う恐れが有る能力だと言う事を、瞬時に陽太は悟った……。
「お、恐ろしい……ッ! 僕は、自分自身の能力が恐ろしいよ……っ!」
青褪めながら頭を抱えた陽太が、震えた口調で悲鳴を上げると、ふと後ろから”謎の女性”の声が聴こえ始める……。
「えぇ。 貴方は、とても”恐ろしい能力”を持っているわね?」
「えっ!? 突然、誰なのっ!?」
突然の声にびっくりした陽太が慌てて振り返ると、其処には黒いトンガリ帽子を被りながら、黒いローブを身に羽織っている一人の”白髪の女性”が立って居た……。
「あ、貴女は……?」
「私は『黒魔女シーニ』。 貴方の力を求めに来たのよ」
女性は薄ら笑いを浮かべながら陽太の掌をジッと眺めていた……。
【現在位置】
【始まりの大地ストファー、ポラ平原】
【現在の日時】
【4月8日 9時2分 春】
【加藤陽太】
【状態】:困惑
【装備】:スクールブレザー
【道具】:無し
【スキル】大魔道士【効果】:最初から最大レベルの威力を誇っている最強魔法が使える様になる。その上、他の者達が発動する魔法系のダメージを完全に無効化する為、防御面でも優秀だ。だが、物理攻撃は普通に喰らう。
【思考】
1:く、黒魔女……!?
2:可愛いけど、誰なのッ!?
3:僕に、一体何の用なの……っ!?
【基本方針】:取り敢えず異世界で生き残る。
【黒魔女シーニ】
【状態】:喜び
【装備】:黒色のトンガリ帽子 黒のローブ 蒼の魔法杖
【道具】:深紅の魔石 至極色の魔石 漆黒の魔石
【スキル】魔石生成【効果】:魔法杖に嵌める為の様々な効果を持つ魔石を自分自身の手で生成する事が出来る。これでもう魔石を買う費用は必要無くなるのだ。
【思考】
1:ふふっ。
2:遂に見付けた……。
3:とてつもない魔力を持っている、私の”追い求めていた人物”が……。
【基本方針】:陽太を上手く唆し利用する。




