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思いの外上手くいかない理想の異世界生活!  作者: ミカル快斗
第二章 各々の方針が固まる二日目
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第五十一話 アモンの悲痛な叫び 〜脱獄犯ドルネイン編〜


〜脱獄犯ドルネインの視点〜


――――街ルタイア――――【現在時刻、9時50分】



 ロスルは、少しだけアモンから目を離している隙に、アモンの姿を見失っていた。


 「あれ、ドルネインさん? 先程からアモン君の姿が見えない様子ですが、彼は何処に……?」


 キョロキョロと辺りを見回しながら、ロスルはドルネインに問い掛けると、ドルネインは地面の上で両膝を抱えながら蹲っているアモンに向かって指を差した。


 「おぉ、アモンか? アモンの奴なら、何があったか知らねぇが塞ぎ込んでるみたいだぜぇ……? 俺も理由は分からねぇがなぁ……」


 「あっ、アモン君……!? い、一体、どうしたのでしょうか……? 先程迄は、あんなにも元気一杯に張り切っていた様子だったと言うのに……?」


 すると、ドルネインは顎に手を当てながら考え得る可能性を模索した。


 「一応、考えられる事と言ったら……。 もしかしたら、『魔王ベルファス』の身に何かあったんじゃねぇのかぁ……? まぁ、アイツが塞ぎ込む理由なんざ、それぐらいしか思い付かねぇしな……」


 「魔王ベルファスの身に何かですか……? 確かに、魔王の従者であるアモン君が突然塞ぎ込んで仕舞った理由を考えるならば、それしか思い浮かびませんしねぇ……」


 「まっ、俺達がウダウダ言ってても何も分からねぇままだ。 仕方ねぇ、元気になるまで放っといてやりてぇ所だが、俺も理由が気になるんでな……」


 「そう……ですね。 一応、アモン君に塞ぎ込んで仕舞った理由を御聞きする事に致しましょう……」


 そして、ロスルとドルネインは、アモンの下にそっと近付くと、何故塞ぎ込んでいるのかを詳しく尋ねてみる事にした……。


 「一体どうしたのですかアモン君? ……もしかして、『魔王様』の身に何かが起こったのですか……?」


 「魔王様……? うっ、うぁぁああッッッ!!??」


 すると、その魔王様と言う言葉を聞いた途端にアモンは身体をビクッと痙攣させたかと思うと、次の瞬間には涙目になりながら発狂し出すと、次第に顔を青褪め始める……。


 〈おいおい、こりゃ尋常な反応じゃねぇぞッ!? マジで魔王の身に何かが有ったってんかよッ!?〉


 「だ、大丈夫ですかアモン君……ッ!?」


 「おいおい、本当に大丈夫かアモン……!? やっぱり魔王ベルファスの身に何かあったんだな!? オイ! 教えてくれよ! 一体魔王に何が起きたんだ!?」


 「う、ぅうウゥゥウゥゥッッッ!!??」


 然し、そのドルネインの問い掛けに対してアモンは両耳を塞ぎながら首を縦横無尽に振り回してばかりで、まるで聞く耳を持つ様子は無かった――――。


 「なぁッ!? 頼むから答えてくれよッ! 魔王の身に何か起こったと言う事は、その近くに居る琴子っつー嬢ちゃんとバルルーナ族の奴等にも何かが起こったんかッ!? ……んだが、魔王の側には『アドムンハ』と言う手練も居た筈だが……?」


 すると、歯をガタガタと鳴らしながらアモンは震える口調で声を発した――――。


 「……あぁああ。 こ、琴子さんや、他の人達は多分大丈夫だとは、思い……ますけど。 うぁうぁうぅぁあッッッ」


 「しっかりして下さいアモン君っ! 大丈夫ですよっ! 君には僕達が付いていますからねっ!」


 すると、そのロスルの問い掛けにより、アモンは次第に正気を取り戻し始めると、やがて魔王の身に何が起こったのかを二人に説明する……。


 「聴こえたんです……。 魔王様が……僕に、これからの事を託すって、『声』が……ッ!」


 「あぁッ!? んだそりゃッ!? まさか、あの魔王ベルファスが誰かに殺られたってのかよッ!? んな馬鹿なッ!」


 「うぅ……っ! 魔王……様ッ」


 アモンは身体をガクガクと震わせながら、過呼吸気味にドルネイン達に向かって事の詳細を話し出す……。


 「恐らく魔王様は……もう、『この世界に存在していません』……。 だって、テレパシーが……僕のテレパシーが……ッ! さっき迄は、魔王様にちゃんと……。 ちゃんと届いていたのに……ッ! 届いていたのに……。 今はもう……何故か、魔王様に……届かなくてッ」


 「アモン君っ! 大丈夫ッ! 大丈夫ですよっ! だから、一旦深呼吸をするのですっ! ほら、息を吸ってぇ〜っ! 吐いてぇ〜っ!」


 ロスルは、過呼吸気味のアモンを落ち着かせる為に、大きく両手を広げながら深呼吸を促した。


 すると、続け様にドルネインもアモンの事を精一杯励ました。


 「で、でもよ……ッ! 別に連絡が途絶えただけだろ……!? だったら、別に魔王が死んだと決め付けるのは早計じゃねぇか……ッ!? もしかしたら、まだ生きてるかも知んねぇじゃねぇかッ! なっ! だから、希望を捨てるんじゃねぇぞッ!」


 ドルネインは、自分なりに言葉を見繕いながら精一杯アモンの事を励ましたが、それは寧ろアモンにとっては”逆効果”だった……。


 「気休めは、よして下さいよ……ッ! ロスルさんに、ドルネインさん……ッ! その魔王様に通じる連絡が途絶えた時点で魔王様は……ッ! 魔王様の存在が、この世から消え去ったって言う事を”証明”しているんですよ……ッ!?」


 「マジか……ッ!? んじゃあ、本当にあの魔王ベルファスが”死んだ”って事なんかよ……!? オイオイ、ちょっと待てよッ!? あの魔王ベルファスだぜぇ!? あんなにも、とてつもねぇ程の強さを誇るアイツが、こんなにも呆気なく何者かに殺されちまったって事かよぉッ!?」


 「うぅ、つい数時間前迄の間、話したばっかだったのに……。 悲しいよぉ……。 寂しいよぉ……。 魔王様ぁ……。 うぁぁああんんッッッ!!!」


 〈アモン……〉


 その泣き崩れながら悲痛な叫びを上げ続けるアモンの姿を、間近で何もしてやる事も出来ずに静かに傍観しているだけのドルネインとロスルは、とてもいたたまれない気持ちになりながら、強く歯軋りをした……。


 「これは僕達には、どうする事も出来ませんね……。 下手な気休めは逆効果でしょうし……」


 「んじゃあ、放っとくって言うのか? バカ言え、こんな所に放って置ける訳がねぇだろうがよ……」


 「それじゃあ、どうするんです……? アモン君は実質的に家族と呼べる人物を、今この瞬間に亡くしたばかりなのですよ……? この問題は、時間をじっくりと掛ける事によって、やっと解決する事が出来る程に難しい事態なのですよ……?」


 「んなこたぁ知った事かよ……。 おい、アモン……」


 「あ、ちょっとドルネインさんっ!」


 すると、ドルネインはロスルの静止を無視すると、そのままアモンの前にしゃがみ込んだかと思うと、ゆっくりとアモンに背を向けながら手を後ろに回した……。


 すると、そのドルネインの後ろ姿を見たアモンは、思わず困惑の声を上げる。


 「……えっ? ドルネイン……さん? もしかして、”俺の背中に乗れ”って言うんですか……?」


 「そうだ。 ほら、俺の背中に乗れよアモン……。 お前がやるべき事は、魔王の死を嘆く為に泣きじゃくる事じゃなくて、死んだ魔王の為に”頑張り続ける”事だろうがよ……。 なぁ、お前もそう思うだろ?」


 「僕が、やるべき事は泣きじゃくる事じゃなくて……。 魔王様の為に頑張り続ける事……ですか?」


 「あぁ、そうだ。 後の事を託されたんだろ? 魔王からよぉ……。 だったら、こんな所で立ち止まっている場合じゃねぇだろうが……。 行くぞアモン……”次の街”へとなぁ」


 「うぅ……ヒック……ッ。 ドルネイン……さぁ〜ん……っ! うわぁぁああんんッッッ」


 すると、アモンはドルネインの背中に向かって勢い良く身を寄せると、そのままドルネインの背中に顔をウズめながら、再び泣き出す……。


 「うぅっ、御免なさいドルネインさん……。 今の僕は……まだ泣き止む事が出来ません……っ。 ヒクッ、でも御陰で元気が戻って来ましたよ……っ」


 「そうか、それなら良かったぜ。 うしっ、んじゃ今度は俺がゆっくり歩いて、お前を次の街に運んでやっから、しっかりと俺の肩に掴まっとけよッ! どうだ、掴んだか!? んじゃあ行くぞッ!」


 「わわっ、ちょっと! 急に立ち上がらないで下さいよッ!」


 「おっと! すまん、すまんっ! へへっ、んじゃ気を取り直して今度こそ、しっかりと掴まったかッ!?」


 「えぇ、しっかりとドルネインさんの両肩を掴んでいますよっ!」


 アモンに確認を取ったドルネインは、勢い良く立ち上がると、そのままゆったりとした足取りで街の外に向かって歩みを進めた……。

 そして、アモンはドルネインの耳元で静かな声で語り掛ける……。


 「……で、これから一体『何処の街』に行くつもりなんですか……? ドルネインさん……?」


 「あ? んーと、そ~だな……。 おい、ロスルっ! お前が決めてくれ!」


 「ノープランだったんですね……。 まぁ、ドルネインさんの事だからそうだと思いましたよ……。 それでは、ロスルさんっ! 僕からも御願いします。 次の街の行き先を貴方が決めて下さいっ!」


 「ふふっ、うん。 分かったよ。 それじゃあ『トルラ』と言う街に向かおうか。 この街も比較的に安全な街だから、きっとアモン君が行っても大丈夫だと思うよ」


 「うっし、聞いたかアモン? トルラって言う名の街だとよ〜っ!」


 「えぇ。 勿論、聞きましたよドルネインさんっ! さぁ、それでは参りましょうか街トルラへと……!」


 「おいおい、急に仕切りやがってよぉ〜? まっ、別に良いけどよ……!」


 かくして、魔王ベルファスから全ての権限を託された悪魔アモンは、『魔王アモン』と襲名し、ドルネインとロスルと共に、街トルラへと向かってゆくのであった……。



【現在位置】

【街ルタイア周辺】


【現在の日時】

【4月8日 10時3分 春】



【脱獄犯ドルネイン】

【状態】:安堵

【装備】:黒と黄色のシマシマ模様の囚人服

【道具】:無し

【スキル】:渾身の鉄拳

【思考】

1:うっし。

2:もう大丈夫そうだな。

3:お前が、ベルファスに変わって、この世界を変えるんだぜ……アモン!

【基本方針】:ゆっくりな歩幅でアモンを背負いながら街トルラへと向かう。



【魔王アモン】

【状態】:決意

【装備】:人間の変装服

【道具】:拘束縄

【スキル】:願いの犠牲 『魔王ベルファスから引き継がれました』

【思考】

1:ありがとう……。

2:ドルネインさん……。

3:ロスルさん……。

【基本方針】:魔王ベルファスの意思を継ぐ。



【ロスル・ル・ナータ】

【状態】:心配

【装備】:英傑旅団の団員服 英傑の剣と盾 大きな袋

【道具】:金貨50枚 銀貨50枚 銅貨50枚 ハンカチ

【スキル】:晴れ渡る天空

【思考】

1:それにしても、魔王が亡くなった理由とは一体何なのでしょうか……?

2:ベルファス……。 昔に森の中で出会った、あの心優しい悪魔の子が死んでしまうとは……。

3:結局、彼とムニルの再会は果たせず仕舞い……か。

【基本方針】:周囲に警戒しながら街トルラに向かう。アモンを守る。


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