第四十六話 異世界転生者厳選 〜女神セウン編〜
〜旋風の女神セウンの視点〜
――――天界――――【現在時刻、不明】
「こ、この画面に映っている人物は……っ!?」
”異世界転生者監視装置”の画面内に映し出された見覚えのある人物の顔を凝視しているセウンとタクヤは、お互いの顔を見合わせながら思わず驚きの声を上げる。
「おいおい、なんで”親父”が映し出されてるって言うんだよッ! セウンは、この事について何か知ってたのかッ!?」
すると、そのタクヤの問い掛けに対して、セウンはブンブンと首を振りながら慌てて否定する。
「いやいや、私も今この瞬間に初めて知ったわよっ! まさか、数十年前に交通事故で亡くなった『鯛造』さんが、ソアボの手によって異世界に転生されてたなんて……っ!」
タクヤとセウンは、『転生者監視装置』の画面内に表示され続けている鯛造の姿を見ながら彼の現状を考察する。
「見たところ、どうやら鯛造さんは、この『アビウス』と言う子と仲良くやってるみたいね。 まるで、自分の本当の娘の様に可愛がっているわねぇ!」
「ははっ、そうだな! んだが、まさか画面越しとは言え、十年振りに親父の顔を拝める事になるとはな!」
「えぇ、そうね……」
セウンは、嘗ての旦那である鯛造との幸せな日々を思い浮かべながら、目元に涙を滲ませる……。
〈鯛造さん……〉
〈貴方と私の息子であるタクヤも、立派に成長して、天界の男神になってくれたのよ……〉
〈ふふっ、貴方の勇姿を天界からタクヤとずっと見守っているからね……〉
セウンは、両手を合わせながら画面内の鯛造に向けて、静かに祈りを捧げた……。
すると、そのセウンの横でタクヤが画面内に表示されている様々な人物の姿と風景を見ながら浮かれた様子で声を上げた。
「おぉッ! ちょっと見てみろよセウンッ! この映像には、異世界転生した人がランダムで切り替わりながら表示されてるんだが、その中に何やら美味しそうな料理を作っている人が居るぜぇッ!!」
タクヤが指差す画面内には、美味しそうな”ピザ”を焼いている一人の職人の姿が映し出されていた。
それを見ていたタクヤは腹を摩りながら舌なめずりをする。
〈全く、タクヤってば何時まで経っても子供ね……〉
セウンは微笑ましげに画面を覗き込みながら、映し出されているピザ職人に目線を落とす。
「どれどれ……。 ちょっと待ってね、一応この人について調べてみるから……」
セウンが手元の装置を器用に動かしながら異世界に居るピザ職人の事について調べてみると、やがて詳細な情報が手に入った。
「へぇ〜、どうやら今から3年程前に、ソアボがピザ職人こと『鈴木昌』と言う人物を異世界に転生させて上げていたみたいね〜」
「ヒュー! それにしても美味そうなピザだな〜! この人が居る御蔭で、異世界でもピザが食えんだなぁ〜っ! ったく、羨ましいぜッ!」
みっともなくダラダラと涎を垂らしているタクヤに対して、セウンが呆れた様子で頭を悩ます。
「はぁ〜……。 ほらほら、涎なんか垂らしてなんかいないで、それよりも先に”やるべき事”があるでしょ? 例えば、この現世での『死者リスト』を見比べながら、現世で亡くなった人の中で誰が異世界転生するのに相応しいのかを決める事とか!」
「え? そんなん俺達が決めなくても勝手に決まるもんなんじゃないのかぁ? ほら、現に『歩夢』と『雅隆』の二人は、現世で死んだら勝手に此処の天界に連れて来られたじゃないか?」
と、タクヤが首を傾げながらセウンに向かって疑問を投げ掛けると、セウンは直ぐに返答した。
「あら、そう言えば伝えてなかったけど、ついさっき私が勝手に死人が天界に運ばれて来る設定を『オフ』にしたから、これからは私達が天界に運ばれてくる人を決めなくちゃいけないのよ?」
すると、そのセウンの話を聞いたタクヤは仰天した様子で慌ててセウンに言い寄った。
「はぁッ!? なんで、そんな便利な設定をオフにしちまったんだよ……ッ!? 折角、俺達が死人を天界に運ぶ手間が省けてたってのにさぁ?」
すると、そのタクヤの言葉に対して、セウンは素早く反論した。
「いえ、この設定をオフにする事によって寧ろ私達の作業が”減る”事になるのよ?」
「ほぇ? へ、減る事になるんかぁ……?」
「良いかしら? 考えてみたら”簡単な話”よ? だって誰でも現世で死んだ瞬間に勝手に天界に運ばれて来ちゃう設定のままだと、どんどんと天界に無数もの人間の遺体が運び込まれて来る事になって、その結果私達の作業量が半端なく増えちゃって面倒になるでしょっ!」
「あぁ、確かに言われてみればそうだな……。 だ、だけど天界の設定を勝手に変えても良いもんなのかぁ……?」
と、タクヤが不安そうな顔を浮かべていると、セウンが明るい口調でタクヤに向かって説明をする。
「それなら大丈夫よ? だってそもそも、元々の管理者のソアボも私と同じ発想に至ってたみたいで、何やらソアボも天界の設定をオフにしてたみたいだからね?」
「んんっ!? ちょっと待てよっ! そのソアボって奴が、元々この現世での死人が自動的に天界に運ばれる設定の装置を切ってたってんなら、なんで歩夢と雅隆が勝手に天界に現れたんだよっ!? おいおい、今迄の話と辻褄が合わねぇぞッ!?」
腑に落ちない様子のタクヤが、セウンに向かって詰め寄ると、セウンは冷静に返答する。
「はぁ、いちいち説明をするけど、要するにソアボが天界の全ての仕事を放棄した瞬間に、この天界を管理する神様が私が来る迄の間に居なくなったって事なのよ? ……えっと、一応ここまでは、理解出来てる?」
「おぉ、一応理解出来てるが、それが何だってんだよ……?」
「……詰まり、ソアボが居なくなった事によって天界の全ての装置が”リセット状態”に切り替わったのよ? だから、私がこの天界に来た時には、もう既に再び現世の死人が天界に運ばれる設定に戻ってたって訳よ?」
「んん……? なるほどなぁ……? んで、ついさっき俺とセウンが歩夢と雅隆を異世界に見送ってから、セウンがもう一度、改めてその装置をオフにして今に至るって事かっ! うしっ、漸く理解出来たぜッ!」
「ふふっそう言う事よ。 詰まり、これからは私達自身の手で、異世界に転生するべき人達を決めるって事なのよッ!」
セウンは人差し指を突き立てながら高らかに声を上げた。
「まぁ確かにな……。 さっきの歩夢と雅隆みたいに勝手に自動的に天界にポンポンと亡くなった人が運ばれて来られたら、俺達の作業が追い付かないもんな……」
「そーゆー事よ。 さてと、どれどれ〜? この死亡者リストに新たに更新されてゆく現世での死人の個人情報を見比べながら、早く”断捨離”しないとねっ!」
「おいおい断捨離って、何だか言い方が悪いなぁ〜……」
「さぁ、つべこべ言ってないで早く誰を天界に呼ぶか、そして誰を”廃棄”するのかを決めるわよっ!」
すると、その廃棄と言う言葉が引っ掛かった様子のタクヤは、冷や汗を流しながら恐る恐るセウンに向かって確認を取った。
「廃棄だって……? えっと所で、一応聞いておくが……。 その廃棄された人の魂は一体どうなるんだ……?」
〈仕方ないわね……。 タクヤを安心させる為にも、しっかりとした説明をしておくべきね……〉
質問を投げ掛けて来たタクヤを納得させる為に、セウンは”天界の仕組み”について鮮明に説明した。
「その事に関しては安心してっ! 私達の判断で廃棄された人達は、これから異世界転生する事は無くなるけど、それでも記憶を消去した状態でまた現世に”輪廻転生”するだけよっ!」
「え、輪廻転生……?」
「えぇ、そうよ! だから、廃棄と言う選択肢は、そこまでタクヤが思ってる程に残酷な選択では無いのよ! だから、100人中1人だけを異世界に転生させる位のスパンで決めちゃっても大丈夫だからっ! ねっ、だから早く死亡者リストに載ってる人達の処遇を決めるわよっ!」
「わ、分かったよセウン! じゃあ、言われた通りに今直ぐにでも仕事に取り掛かるか!」
セウンからの説明を聞いたタクヤは、覚悟を決めて”異世界転生者の厳選作業”に取り掛かる事にした!
「えぇ! なんやかんや大変な作業だとは思うけど、一緒に精一杯頑張りましょうね!」
「おぉーーしっ! やってやんぜぇぇえぇーーーッッッ!!!」
と言う訳で、気合を入れたセウンとタクヤは異世界転生者の厳選を行う為にも、どんどんとリスト内に追加されていく"死亡者リスト"を見比べながら異世界転生するのに相応しい人材と、それ以外の廃棄して輪廻転生させる人達を選別するのだった……。
【現在位置】
【天界】
【現在の日時】
【日時不明】
【旋風の女神セウン】
【状態】:焦り
【装備】:翠の羽衣 翠の指輪と腕輪 女神の袋
【道具】:袋の中に色々 沢山の死亡者リスト
【スキル】:旋風の危機察知
【思考】
1:現世で幸せそうに過ごしていた人達は廃棄で宜しくねっ!
2:自業自得で亡くなった人も無しでっ!
3:やっぱり、不幸な出来事で亡くなって仕舞った悲劇的な人を異世界に転生させて上げたいわねっ!
【基本方針】:天界を護る。必死に厳選する。不幸な死に方をしているのなら例え悪人だったとしても異世界に転生させる。
※異世界転生者の選別を開始しました。
【慈悲の男神タクヤ】
【状態】:焦り
【装備】:純白の羽衣 純白の指輪と腕輪 男神の袋
【道具】:袋の中に色々 沢山の死亡者リスト
【スキル】:上級スキル能力授与
【思考】
1:ああもうっ! 人数が多過ぎて頭がこんがらがるッ!
2:お、この女性は良さそうだな……。
3:でも、情報を見た所この人は今迄に幸せそうな人生を送ってるな……。 それじゃあ、却下だ却下ッ!
【基本方針】:天界の仕事を必死に熟す。なるべく女性優先で異世界に転生させる人を決めたい。
※異世界転生者の選別を開始しました。




