第四十四話 久しぶりの再会と異世界コンビニ 〜竜胆園鯛造編〜
〜竜胆園鯛造の視点〜
――――街デイルンの宿屋――――【現在時刻、22時30分】
宿屋にて、パトロール中のサヨコとジルバーの帰りを待ち続けている鯛造とアビウスは、中々帰って来ない二人に対してやがて痺れを切らし出す。
「……むむむ。 中々、パトロールから帰って来ぬな、二人共……」
「まぁまぁ、アビウスさん。 そう焦る事は無いでしょう。 私達はゆっくりと彼等の帰りを待つ事にしようじゃないか……」
「そう……だな。 すまぬ、つい気持ちが逸ってしまった……」
と、アビウスと鯛造が話していると、何やら廊下の方からガヤガヤと騒がしいながらも何処か懐かしさを覚える様な”男女の声”が聴こえ始めた。
〈おや? この廊下から聴こえてくる懐かしき声は……?〉
――――廊下――――
《さぁ、早く来てジルバー! どうやら、この部屋の中にアビウスと鯛造さんが待って居る筈だから、部屋なんか間違えてないで早く! ジルバー!》
《す、すまない……! 僕とした事が入る部屋を間違えてしまうだなんて……!》
《もう〜! おっちょこちょい何だからぁ〜っ! じゃあ先に部屋に入っちゃうからねぇ〜っ!》
サヨコはジルバーにそう言い放つと、アビウス達が居る部屋のドアを力強く開ける……。
ガチャ……ッ!
すると其処には、今にも泣き出しそうになりながら目を潤ませているアビウスと、その彼女の姿を見てニッコリと微笑んでいる鯛造の姿があった……。
「……あっ! 鯛造さんに、アビウス……っ! 本当に、居たんだね……っ!」
アビウスと鯛造の顔を見たサヨコは、思わずアビウスに向かって抱きつきながら感涙した。
「うぅ……っ。 グスッ……。 アビウス、鯛造さんっ! 再び会えて……嬉しいよぉ……っ。 うわぁ〜ん……っ!」
「おぉ……っ! サヨコさんにジルバーさん……! 御久し振りですぞ……!」
「サヨコ……っ! 我も、再び貴女と会えて嬉しいぞ……っ!」
アビウスとサヨコは、久し振りの再会の喜びを分かち合いながら互いの身体を抱き寄せた。
「ハッハッハ、所でサヨコさん。 英傑旅団の仕事の方はどうだ? 楽しくやっているか?」
「鯛造さんっ! えぇ、そりゃあもう上手くやってますよ……っ! ジルバーと一緒に楽しく世界中をパトロールしていますし、この前なんか”3人の賞金首”をジルバーと協力して引っ捕らえる事に成功しましたしね〜っ!」
「ハッハッハ! 中々に、大活躍しているじゃあないかっ! 偉いぞ〜、サヨコさん! これからも、この世界の平和を護るんだぞ〜っ!」
「えぇ……! 勿論ですとも……っ!」
と、サヨコと鯛造が話していると、ジルバーが気不味そうに頬を掻きながら会話に加わって来た。
「お久し振りです鯛造さん……」
「おぉ、ジルバーさん。 おやおや、何やら浮かない顔を浮かべていますが、どうなされましたかな?」
「いえいえ、すみません……。 ”初対面の時”を思い出してまして……。 あの頃の僕は、どうしても英傑旅団に入団したいが為に、血眼で"獣人族の生き残り"を探していたもので……。 その時に、たまたま貴方方を見付けて慌てて押し掛けに行ったので、鯛造さん達から見てあの時の僕は”かなり不審な人物”に見えていたんでしょうね……」
すると、その話を聞いたアビウスがジルバーの顔を眺めながら、あの頃のジルバーに対する印象を語った……。
「ジルバー……。 確かにあの頃の御主は、見た目からして”悪人”の雰囲気しかしていなかったぞ……。 だから、我はジルバーに付いて行こうとするサヨコの事を必死に止めたのだからな……」
すると、サヨコも同調する様にコクコクと頷く。
「うんうん、確かに当時のジルバーって何か不審者感が半端無かったよねぇ〜。 今は”清潔感”が有るんだけど、昔は何だか”チャラそうな雰囲気”を醸し出してたもんねぇ〜……」
「まぁまぁ、アビウスさんもサヨコさんもそんな事を言わずに……。 ほら、ジルバーさんも気にしてる様子ですよ?」
鯛造が苦笑いを浮かべながらジルバーの事を庇うと、ジルバーは頭を下げながら鯛造に話し掛ける。
「……鯛造さん、色々すみませんでした。 もっと早い時期に、サヨコと貴方達の事を再会させて上げたかったのですが、英傑旅団の仕事の関係上、中々に纏まった時間が出来なかったもので……」
「ホッホッホ! いや〜、そんなに気にしなくとも良いんですよジルバーさんっ! 現に、こうやって再び相見えたのですから良しと致しましょうともっ!」
「有り難い御言葉、感謝致します……。 矢張り、鯛造さんは良い人なのですね。 サヨコが何時も様に鯛造さんが”人格者”との話をしていたものでね……」
「はっはっはっ! そうなのですかサヨコさんっ!」
鯛造が笑みを浮かべながらサヨコに問い掛けると、サヨコは頬を赤らめながらジルバーの脇腹を小突いた。
「もう〜っ! ジルバーってば、バラさないでよ! そう言う事はさぁ〜っ!?」
「す、すみませんっ! サヨコっ!」
と、サヨコが恥ずかしさを隠すためにジルバーを問い詰めていると、そのタイミングで晩ご飯の買い出しに出掛けていた『ギルム』が帰って来た。
ガチャ……。
〈おや、どうやら買い出しに出掛けていたギルムさんが帰って来たみたいですな……!〉
「……おっ! 何やら、部屋の中が騒がしいと思ったら、サヨコ先輩とジルバー先輩が帰って来てたんですね〜っ! おっと、何やら私はお邪魔ですかね……?」
「あっ、ギルムだっ! ふふっ、そんな気にせず入って来て良いよギルム!」
「本当ですかサヨコ先輩! では、お言葉に甘えて……」
サヨコからの許可を得たギルムは、片手に”買い物袋”をぶら下げながら、笑顔で部屋の中に入った。
すると、そのギルムが手に持っている買い物袋に目線を移しているアビウスが、お腹を擦りながら問い掛けた……。
「……所で、御主は一体何を買って来たのだ? 我はもう……お腹が空きに空いててな……?」
ぐぅ〜……。
「ホッホッホ。 アビウスさんは食いしん坊ですからな!」
「あははっ! 相変わらずだねアビウス!」
アビウスは、トロン……っと物欲しそうな表情を浮かべながらダラダラと、涎を垂らす……。
すると、ギルムは慌てて買い物袋から食べ物を取り出した。
「あ、すみませんっ! 今直ぐ、お渡し致しますねっ! えっと、これは其処の《フェアリーマート》で買って来た『フェアチキ』と『ピザまん』ですよーっ! それぞれ2個ずつ買って来たので、先輩達も、お1つどーぞ!」
「おっ! ありがとね〜♪ じゃあ私はピザまん貰っちゃお〜!」
「それじゃあ、僕はフェアチキを1個貰おうかな?」
ギルムは、言われた通りにサヨコにはピザまんを、ジルバーにはフェアチキを手渡す。
「はい、どーぞ! えっと、それではアビウスさんはどっちが良いですかー?」
「むむむ、迷いに迷うが……。 我は……フェアチキの方を頂こう……っ!」
アビウス、まるで滝の様に涎をダバーーっと垂れ流しながら、ジュルリと舌舐めずりをする……。
「ホッホッホ。 ではでは、私は残りのピザまんを頂きますぞ……。 なるほど……。 だが然し、まさかこの世界にも”コンビニ”と言った物が存在するとはなぁ……。 まぁ、流石に余り普及していない様子ですが……」
すると、その鯛造の言葉を聞いたサヨコが、嬉々としながら鯛造に話し掛ける。
「そう言えば、確か鯛造さんって、『ニホン』って言う”別世界”から来た人なのでしたよねっ!? 詰まり、この世界に在るコンビニって、鯛造さん達の世界から”逆輸入”された物なんですよねぇ〜っ!」
「ふむふむ。 確かに言われてみれば、この世界に有る様々な『食べ物』や『娯楽施設』に『玩具』等が、日本から転生転移して来た者達が長い歳月を掛けて、徐々にこの世界に定着させた物でしたなぁ……」
と、鯛造がピザまんを手にしながら、しみじみと考え込んでいると、アビウスが目を光らせながら鯛造にお願いをする。
「それで、鯛造さんっ! もし宜しければ我に、そのピザまんの”半分”を御恵みして頂けると嬉しいのだがッ!?」
一瞬の内にフェアチキを食べ終えた様子のアビウスが、鯛造の手に握られているピザまんを羨ましく眺めながらドバドバと涎を垂れ流している……。
「おや、アビウス? このピザまんを分けて欲しいのですか?」
鯛造は、とぼけた様にアビウスに問い掛ける。
「は、はいッ! 是非とも欲しいのだ……ッ! だから、くれ……ッ!」
獣人族であるアビウスは、自身に眠っている”獣の本能”に逆らえずに、まるで久し振りの餌に有り付けた仔犬の様に獣耳をピクピクさせながら、尻尾をブンブンと振り回している……。
すると、そのアビウスの物欲しそうな姿を見た鯛造は、ニコッと笑みを浮かべながら、返答する。
「ふふっ、駄目ですよ? あげませんよ?」
「……………は?」
鯛造の一言を聞いて唖然とした様子のアビウスを横目に、鯛造は手に持っているピザまんを口いっぱいに頬張った!
「あむ、はぐ……。 ん〜む! 矢張り、ピザまんは美味しいですなぁ〜!」
「あ、あぁ〜……っ。 我の、ピザまんが鯛造さんの腹の中に……」
鯛造からピザまんを分けて貰えなかったアビウスは、シュンと獣耳と尻尾を垂れ下げた……。
「いや、そりゃそうでしょアビウス……。 どんだけ食い意地はってんのよ貴女……」
サヨコは、やれやれと肩を竦めながら、溜め息を吐いた……。
「うむうむ、本当に美味ですなッ! 確か、この世界に売っているピザまんは、転生者の”ピザ職人”の方とのタイアップをして開発した物らしいですからなぁっ! いやぁ~、素晴らしき味わいですなぁ〜」
鯛造は、恍惚とした表情を浮かべながら、もぐもぐとピザまんを食べ続ける……。
「あぁ〜……っ。 我も、フェアチキの方ではなく、ピザまんの方を貰うべきだった……っ」
アビウスは、悔し涙を流しながら、床に何度も手を打ち付けた……。
すると、そんなアビウスの事を見兼ねた様子のギルムが、アビウスの肩にポンッと手を置きながら話し掛けた。
「大丈夫ですよアビウスさん。 まだ足りない様なら、また私が、其処の《フェアリーマート》でもう一度ピザまんを買ってきますから……っ!」
と、そのギルムの言葉を聞いたアビウスは、途端にピクッと獣耳と尻尾を小刻みに震わせた……。
「なんだとッ!? うわぁッ!? そ、その神々しい姿、もしや貴方が”神”なのか……ッ!?」
「いや、流石に大袈裟過ぎでしょアビウス……。 ただ単に、ギルムがコンビニにピザまんを買いに行ってくれるだけでしょ……? んじゃ、ついでに私の分のピザまんも買って来てね〜ギルムっ!」
サヨコは、アビウスに向かって静かにツッコミを入れながら、ついでにギルムにパシりを頼んだ。
「はい、サヨコ先輩ッ! 了解でーすっ! それでは、全速力で買ってきますねーっ!」
ギルムは、そう告げるとダッシュで近くの《フェアリーマート》内にて限定で売っている”タイアップ商品”の絶品ピザまんを買いに行った。
バタン……ッ!
ギルムが買い物に出掛けると、残された鯛造達は再び雑談を始める。
「さて、それではギルムさんを待っている間に、私達で雑談でもしていましょうか……!」
「おっ、良いですね鯛造さんっ! 色々と積もる話も有りますしねっ!」
と言う訳で、ギルムの帰りを待っている間、鯛造達は御互いの思い出話に花を咲かせながら雑談をするのだった。
【現在位置】
【宿屋】
【現在の日時】
【4月7日 23時25分 春】
【アビウス】
【状態】:空腹
【装備】:紫色の和服 破滅の剣
【道具】:無し
【スキル】:閃光斬り
【思考】
1:ピザまん……。
2:早く、我も食べたいぞ……っ!
3:ジュルリ……っ。
【基本方針】:サヨコ達と会話する。何処かで座衛門達と再び出会いたい。アケミに会いたい。ギルムの帰りを待つ。ピザまんを食べたい。
※4月7日を生き残りました。
【竜胆園鯛造】
【状態】:健康
【装備】:黒色の和服 スーツケース 信念の剣
【道具】:様々な和服 財布
【スキル】:指導効果最大
【思考】
1:おやおや、つい話し過ぎちゃいましたね……。
2:でも、まだギルムは帰って来ない様子ですなぁ……。
3:では、もう少しだけ夜更かしする事に致しましょうか……。
【基本方針】:もう少しだけサヨコ達と会話する。アビウスが気に入った座衛門達に会いたい。アケミに会いたい。ギルムの帰りを待つ。
※4月7日を生き残りました。
【サヨコ】
【状態】:興奮
【装備】:蒼色の和服 英傑の剣と盾 自動翻訳装置
【道具】:自動翻訳装置数個 財布
【スキル】:渦巻き斬り
【思考】
1:それでねそれでね!
2:これがこうでね!
3:それがこうであれがそれでね!
【基本方針】:滅茶苦茶会話をする。アケミに会いたい。ギルムの帰りを待つ。
※4月7日を生き残りました。
【ジルバー】
【状態】:健康
【装備】:英傑旅団の服 英傑の剣と盾 自動翻訳装置
【道具】:自動翻訳装置数個 財布
【スキル】:目覚める正義の心
【思考】
1:相変わらず、サヨコのマシンガントークは凄いなぁ……。
2:眠くなって来たけど、まだまだ眠れそうに無いな……。
3:まぁ、久しぶりの再会ですしね。 存分に会話を楽しむべきですね。
【基本方針】:もう少しだけ会話を楽しむ。ギルムの帰りを待つ。
※4月7日を生き残りました。
【現在位置】
【フェアリーマート、街デイルン店舗】
【ギルム】
【状態】:健康
【装備】:英傑旅団の服 英傑の剣 双翼の腕章 買い物袋
【道具】:メモ帳 ペン 金貨3枚
【スキル】:犯罪取締連盟瞬間報告
【思考】
1:まさか、これ程までにピザまんが求められるとは……。
2:アビウスさんの為にも、沢山買っておきましょうねっ!
3:店員さ〜んっ! 何度も、すみませ〜んっ!
【基本方針】:ピザまんを買う。
【コンビニ店員、山田】
【状態】:疲労感
【装備】:丸眼鏡 コンビニの店員服
【道具】:無し
【スキル】笑顔の接客【効果】:どんなにガラの悪い客相手でも、一切のクレームを入れなくさせる事が出来る。
【思考】
1:はぁ〜……。
2:なんで俺は、異世界に転生してもコンビニ店員をしなくちゃならないんだよ……。
3:これじゃ、今迄の人生と変わらねぇよ……。
【基本方針】折角異世界に転生したのだから、こんなコンビニ店員と言った職業から一刻も早く脱却したい。




